望郷の意
「ベースは・・・は?2000年代?」
5000年代のものとか2000年代のものとか・・・いろいろごちゃ混ぜになってんのね。
ま、次元超えてきたって考えたら時間越えぐらいどうとでもないのか。
「5000年代の技術なら時間越えも可能だけど・・・次元越えともなるともっともっと先のはずだけど?」
「・・・・・・」
すかさずこちらにサーベルを向けてくる。
「おっとー・・・そういうのはいけないと思うのよ、そんなわけで私と話でもしない?」
「・・・・・・」
とりあえずサーベルはむけたままだが、こちらを殺そうとはしてこない。
まあ一安心といったところか。
「オーケーオーケー。それじゃまず質問。どうやって次元を超えてきたの?」
なんか後ろから足音がすると思ったらまーたこいつか。
人の皮をかぶっているところを見るとさっきのやつとは別のようだ。
それに注意深く聞くとやつの中で機械の作動音がしている。
『逃ゲテキタ』
「あー・・・質問と答えが一致してないようだからもう一度聞くけどどうやって次元を超えてきたの」
『大キナ・・・トテモ大キナ争イガアッタ』
いや、だから質問に答えてよ。
あー、もう埒あかないし・・・。
『我々ハソレヲ恐レタ。ダカラ逃ゲテキタ』
「わざわざ別の次元まで?」
『・・・・・・ソウダ』
ご苦労なことね。
『次元ヲ超エル知識ハ我々ノ長カラ授カッタ』
ようやく質問に答えたようで何より。
てか、長って誰よ長って。
「長とは誰の事」
『・・・・・・』
「なるほど・・・随分と分かりやすいようで」
つまりついて来いってことね。
案内された場所は巨大な地下空間だった。
おそらくこの町全体と同じぐらいの広さかそれより少し小さいか・・・。
いずれにしろものすごく巨大な空間だった。
そしてその中央にあるもの、それがおそらくこいつの長なのだろう。
『アレガ我々ノ長ダ』
というか、なんでこいつらやけに従順なのよ。
さっきまで殺されかけてたのに途端に従順になるとか不気味なんですが。
「ちょっ・・・どこ行く・・・ちょっ・・・あーあ・・・どうすんのよこれ」
中央にあるのはなんか丸いのとか四角いのとか・・・いろいろくっついてるけど要はあれね。
探査機ね。
「こんなのが長?」
『よく来てくれましたね。私たちはあなたを歓迎します。』
パネルに文字が表示される。・・・いや、さっきまで殺されかけてましたが。
随分と都合のいい奴ら。
『まずは私はあなたに無礼をお詫びしなくてはなりません。』
「随分とご勝手なものじゃない?さっきまでその辺走り回って汗だくなんだけど?」
『あなたの今の状態を不快と判断しました。何か要求はありますか?』
よくわかってるじゃないの。機械のくせに。
・・・ん?
「・・・じゃあ、まずはあなたの名前と製造年月日を教えなさい」
『はい。私は太陽系外探査機オービット。製造年月日は西暦2100年8月26日です」
2100年のおんぼろ探査機が私をスキャンした?
しかも確かその時期って経済摩擦による各国間の戦争によって文明が一時的に後退していたはずだけど。
「悪いけどなんか勘違いしてない?2100年に私をスキャンできる高等技術は存在しない。なにかしらのセンサーか何かにしても『私』はその時データに存在しない」
『あなたのデータは存在しません。しかし、私には既存のデータによってあなたを解析することが可能です』
「・・・」
既存のデータ。
そうなると私と同じでなくてはならない。次元越えによる若干の遺伝子変異さえもそのデータに組み込まれていることになる。
そうなると可能性は一つしかない。
「正直これはルール違反なんだけど・・・未来で私に会ってる?」
『いいえ』
あー、そっか。
「聞き方を間違えたわ。そのとき私はなんと名乗っていた?ロズミア、クラリス、ジェンキンス、バロッカ。この4つの名前のどれか?」
『いいえ。私とあなたとは初めて会いました。今ここで初めて会いました』
この状況でうそをついているとは考えにくい。
2100年ごろの探査機はデータを取り出すときの作業を簡略化するために口頭での質問も正確に答えるように設計されている。
だからこいつが過去、現在、未来すべての時間における私のデータを持っていないといえば持っていない。なら、私に近しいもののデータから推測したのだろう。
だけど、そんなことはありえない。
私以外はみんな死んだ。完全に死んだ。
だから決してあり得ない。
「ありえない・・・。ありえない!そんなの絶対にありえない!あなたの今持っているすべてのデータを私に見せなさい!今すぐに!」
『拒否します』
「・・・何?」
『あなたに対するお詫びは済みました。私はあなたによって救われます』
「・・・悪いけどあなたの持っているデータ全部見せてもらうまで協力する気はないから」
場合によっては物凄く重要なことだ。
それを無視することはできない。
『あなたにできることは私たちを救うことのみです』
「ハッ!22世紀のポンコツ骨董品が舐めた口きいてくれるじゃないの」
今まで無視していたが、22世紀の探査機が50世紀近くの宇宙船にいるとなるとそれは3000年分のデータを記録していることになる。
そうなるとオービットに記録されているデータ量は膨大なものだ。実際それほどのデータを保管できるデータベースなんてオービットにはないはずだ。当然機会が自分でデータベースを増設することなんてないから誰かが手を加えている。
・・・まずはそれからだ。
ガシャン
不意に扉が閉まる音がした。
まさか閉じ込める気?
「閉じ込めたつもりなんでしょうけど私にはこれがある」
そういって愛用のドライバーを見せびらかす。・・・てか、これデザインだっさ。思えば例のおんぼろ物置の名前もダサかったし・・・。前と前の前の私のネーミングセンスは0ね。
『あなたにできることはただ私を救うことのみです』
「悪いけれども、こいつは豆電球から人間の脳まで幅広く干渉することができる大変便利なドライバーだったりしてね。あんな扉一枚開けるのぐらいねじを回すのより楽勝よ」
『・・・』
「無駄だとわかったらあなたについていろいろと教えてもらおうかしら」
『・・・あなたにできることはただ私を救うことのみです』
しっつこいやつ。
「救うって言ったって何をすればいいのかもわからないじゃない。それを聞かせてもらわないとねえ・・・」
『では、その場で動かないでください』
「あ?なんでそうなるのよ」
やっぱこれ壊れてるんじゃないの?
救ってほしいのに動くなとか。殺そうとしたのに歓迎するとか。
お詫びするとか言って結局適当な質問に少し答えただけだし。
「・・・あー、なるほど」
そういえばこいつは機械だった。
そして、太陽系外の調査データなんて極秘も極秘。
誰でも聞き出せないようにセキュリティがかけられているんだっけ。
「オービット。悪いけどあなたの知ってること見たことすべて私に見せてもらう。セキュリティコード!」
『・・・』
あれ?
「無人探査機オービット、セキュリティコード!」
『・・・私は無人探査機オービットではありません』
「自分から名乗ったでしょ?探査機オービットって」
やっぱ壊れてるわ。
『はい。私は探査機オービットと答えました』
「なら何も・・・」
いや、私は今確か『無人探査機』といった。
そしてオービットはそれに対して『いいえ』といった。
次に私は『探査機』といった。するとオービットは『はい』と答えた。
つまり・・・。
「人が乗っていたというの?」
『いいえ』
「・・・ふざけないで!ならなんだというの!?」
『今も乗っています』
・・・今も?
「悪いけど死体はカウントしていないの」
『はい。生存者のみをカウントしています』
・・・。
「生存者の名前を言いなさい」
『既に名乗りました』
「ふざけないで!あなたはただ探査機の名前を・・・」
『はい、私はオービットと名乗りました』
・・・オービットですって?
「・・・まさか」
確かにそんな名前の科学者はいた。
だけど・・・だけどなんでその科学者の名前がここで出てくる。
もしかすると・・・。
「・・・わかったわ。なら、その生存者を見せて」
『既に見せています』
違う。
「そんなはずがない・・・そんなはずない!絶対に!!」
『私がオービット。マッド・オービットです』




