天使の祝福
かるーく解析をすませ、天使の思念リンクの構造を完璧に把握した。
どうやら、館で出会った天使が最上位の天使、つまり司令塔に当たるものだと分かった。全ての情報は一度あの天使に集約された後、それぞれの天使へと発信されているようだ。
そうなると、あの館にいた天使がどれだけ高性能かわかる。おそらくあれが、黒幕の作り出した最高傑作の天使なのだろう。
「・・・つけてきた?」
誰かが背後からうかがっている気配がする。
というか、ドライバーで常に全体をスキャンしているためどの方向にだれがいるというのがよくわかる。で、背後にいるそいつはさっきからずっと同じ位置にとどまり続けているわけだ。
「誰?そこにいるのはわかってんのよ」
とりあえず、生体電磁パルスをいつでも放射できるようにドライバーを構える。
・・・天使でなければいいんだけど。
「あ、あの・・・」
天使・・・ではないみたいね。
うまいこと逃げてきた招待客・・・ってとこかしら。
「あなたも逃げてきたんですか?」
「ま、そんなところね。あなたは?」
「散歩中だったんです・・・少し気分が悪くて。それより、あれは一体何なんですか?」
「さあ?外見は天使に似ているけどもとはただの人間だったみたい。頭につけた機械が天使化を促してるみたい」
「て・・・天使・・・」
「とりあえず一体を除いてほかの天使を無力化する方法を思いついたの。手伝ってくれる?」
一人だとあの天使の包囲網を突破するのは難しそうだ。
魔法使いの一人でもいれば多少は楽になるでしょう。・・・それにここにいたらいずれ見つかって殺されちゃうだろうし。
「ここにいるってことはあなたも魔法使いでしょ?何が使えるの?」
「結界術です。東洋につたわる魔法との融合で・・・」
結界術っていうと・・・外敵の侵入を阻む魔法だっけ。
これは使える。
「今から屋上に上って、天使たちの思念リンクの要となっている送信機を破壊する。たぶん途中で天使たちの猛攻に合うでしょうね、だから結界術で守ってほしいの」
「・・・わかりました。やれるだけやってみます」
|さて、逆襲開始だ(Andiamo)。
とりあえず、何とか館の中に入ることに成功した。
ただ、軽くスキャンしてみると結構な数の天使がいるようだ。
「ところで名前は?」
「ミゼルです。ミゼル・コンパレント」
「私はクラリス・ジュリエット、よろしくね」
そうこうしているうちに早速天使が来たようだ。
数は・・・2体ね。あたりを巡回していただけで、気付いていないようだ。
「すぐそこに天使が二体いる。場所的にどうしても鉢合わせすることになるわ、結界を頼める?」
「はい、『護封結界展開』」
ドライバーでスキャンしてみても、ちゃんと力場が発生している。
思念波で構成された力場ね・・・ていうか、フィードバックは大丈夫なのかしら?
「要人警護用の結界です。術者であるわたしを起点として常に結界が展開され続けます」
「便利ねそれ。じゃあ、効果のほどを実験してみましょうか」
廊下を曲がり、天使と対面する。
やはり二体か。
「「対象を確認。これより粛清を開始します」」
天使が突撃してくる。
天使の武器は斧と剣か。
「へえ・・・見事に受け止めたわね」
「私には守ることしかできませんから」
さて、磔にしてくれたおかげで天使の処理が簡単になった。
ドライバーと天使の生命維持装置を同期させて・・・と。
「さあ、これでもくらいなさい!」
「!?・・・システムシャットだ・・ウ・・・」
天使の生命維持装置に干渉して破壊する。もっとも、今みたいに磔にしてくれないと時間がかかりすぎてきかないんだけど。なにしろ、あいつら素早いし。
「す、すごい・・・」
「天使の頭についてる装置を破壊したの。さっきも言った通りあれが天使化を促してるから破壊すれば、天使は死ぬ。今のところ唯一の対抗策ね」
もっとも、それも近いうちにアップグレードで効かなくなるでしょうけど。
・・・一刻も早く送信機のもとにたどり着かないと。
「でも、天使たちは対抗策をすぐに用意してくる。それを阻止するために一刻も早く送信機を破壊しないと」
「えーと階段は・・・」
「階段?何言ってんの?」
「え、でも屋上に行くって・・・」
「階段なんて天使たちの格好の狩場よ。それより、壁を上りましょう」
「壁を上る!?ど、どうやって?」
「手で」
「こっちのほうが危険だったんじゃないですか!?」
「中には別格の天使がいるの。なぜか走らないけど、そいつは外だと襲ってこないから」
「む・・・私の結界がそんなに信用できませんか?」
「いったでしょ、あの天使は別格。さっき言った倒せない一体ってのはその天使なのよ」
「た・・・倒す方法とかないんですか?」
倒す方法・・・ねえ・・・。
「ないわね。とりあえず黒幕にでもはかせるしかないんじゃない?」
その黒幕もだれかわからない状況なんだけどね。
もっとも、ほぼ確定したようなものなんだけど。
「いっ・・・右足が逝ったか」
だが、このぐらいなら回復魔法で治すことができる。
さすがに即時回復のものは使うことができないが、回復促進の類ならそこそこ使える。
「天使は・・・この辺にはいないか」
幸いあたりに天使の気配はない。
天使を倒すことができるが、その対抗策は一度しか使うことができない。
バラレーは死体さえも天使になるといっていた。・・・いや、まだそれは研究段階だったか?
いずれにしろ、そのうち死人さえも天使になる。
そうなると完全に手が付けられなくなってしまう。
「まずはクラリスとの合流から・・・か」
とりあえず、屋上に到達した。
あのバカみたいに強い天使と鉢合わせることもなく、特にこれといった怪我もない。
しかし、天使の攻撃も激化してきた。
対抗策である生命維持装置と肉体の分離もより一層難しくなってきている。周波数を変え続けて試しているがそれももう効かないだろう。
「アップグレードを開始します」
「「「アップグレードを開始します」」」
天使の生命維持装置から天使の頭に向かって針が突き刺さる。
・・・直接脳とつながろうってわけ?
「あ・・・頭に・・・針が!」
「私がさっきからやってるのは生命維持装置と脳の同期を解除すること。だけど、物理的に・・・導線で脳と装置を直接つないでおけば妨害される心配もない。・・・ここまでやるなんてね」
まるで悪魔のような人間・・・。悪魔が天使を操るなんてずいぶん冗談のセンスがあるのね。
『アップグレ・・・アップ・・・・・・・・アッ・・・私ハナニヲ』
「・・・そうか。装置は送信機から絶えず情報を受信している、そしてその情報を脳に送っている!」
だから、送信機から送られてくる情報を遮断してしまえば情報が脳に送られることはない。
天使化は収まる・・・!
「ミゼル、そいつを結界で囲ってみて。早く!」
「は、はい。『護封結界展開』」
天使の生えていた羽が抜けおちる。
今まで濁っていた目に光が戻る。
いける・・・。
『信号の喪失を確認。プロトコルBを送信後、自爆します』
「じ、自爆!?」
クソッ!
防御機能付きとはね・・・やるじゃないの。
「ミゼル、結界を解除して!」
「で・・・でも、自爆するって」
「そんなのすぐに解除してやるっての!もうこれ以上殺させるものですか」
なんで自爆プロトコルだけこんな厳重なのよ!
40種類の16桁パスコードに間違ったら全生体情報を消去するおまけ付き。すべてシャットダウンする必要もあるし、なによりいちいちセキュリティの方式が変わっていく。
「残り20秒・・・」
このままじゃ間に合わない。進行率は40%・・・まだ半分もいってないのに。
「あきらめるかっての・・・。大勢の人間が死んだんだからせめて・・・せめて目の前で死ぬ人ぐらいなくしたいじゃない!」
「クラリスさん・・・」
残り30&、しかし残り時間はあと10秒もない。
だけど、いける・・・!
「自爆5秒前になりました。全システムをロックします」
え・・・?
言葉通りシステムがロックされている。
だからこれ以上の干渉はできない。
「クソ・・・クソックソックソッ!!」
「爆発まで2・・・1・・・」
「・・・『星護結界展開』」
ミゼルの結界により爆発が防がれる。
天使は・・・木っ端みじんに吹き飛んだ。
何もできなかった。
「・・・」
しかし、今は悔やんでいる場合じゃない。
送信機を破壊しないと、最終プロトコルとやらに移行する。
でも救えなかった。
・・・そんな私にあれを破壊することはできるの?
『最終プロトコルを受信しました。これより最終プロトコルに移行します』
もしあの送信機にも似たような機能が搭載されていたら?
もしあの送信機がロックされていたら?
『最終プロトコルを受信。天使に祝福を』
『『『天使に祝福を』』』




