天使の成長
「やったか・・・!」
さすがにこれで倒せないとなるとかなりきついが・・・どうだ?
「さすがは大魔導士・・・といったところか。劣化天使ならば倒せるようだな」
「魔王に褒めてもらうとは光栄だな」
「ほめるも何も・・・これくらいできてもらわなくては困る。天使よ、アップグレードを実行しろ!」
アップグレード・・・?
まだ強くなるっていうのかよ・・・!
「天使たちは全員リンクしている。天使たちのアップグレードによって今の君の魔法は今後天使たちに通用しなくなった。天使たちは戦えば戦うほど学習し成長し、そして強くなる!まさに完璧な存在だ!」
「・・・」
魔王バラレー、俺はあなたから招待が来たとき心底嬉しかった。
だが、今のあなた・・・いや、真のお前は科学者と同じ自分本位でしか物事を考えられないクズだった。
・・・俺は、いや俺たちは科学者と同じ道を歩んだお前を決して許さない。
「どうした?天使は優に十数体はいる。そして、私は先ほど死体さえも天使化させることに成功した!・・・まあ、性能は落ちてしまうがそれでも今後改良を加えることを考えれば十分すぎる成果だ!どうだ?素晴らしいとは思わないか!?」
「・・・くだらねえ」
「何?」
お前に俺の心の底からの怒りは伝わらないだろうな。
だから今からお前に教えてやる。
「お前の遊びに付き合わされてる俺らの怒りをお前に教えてやるって言ってんだよ!」
「・・・ほう、面白い。だが、まずは天使たちに教えてやってくれ!」
天使が再び現れる。その数三体。
二体が銃、一体が盾で武装していてなかなかにバランスが取れている。
「天使たちの武器は伝説上の武器を概念魔法によって具現化させたものだ。オリジナルとは程遠い性能だが、天使たち数十体分の思念が集まれば並みの概念魔法とは比べ物にならないほどの効果を発揮する。・・・たかが、大魔導士一人には過剰戦力すぎたか」
暗黒魔法パレードトゥパーガトリはもう効かないといっていた。
おそらくそれは本当だろう。
「天使よ、アップグレードだ」
「何!?まだ強化する気か!?」
・・・なんだ?天使の様子が・・・。
「ふん・・・ここらが限界か。所詮劣化・・・まあ、よく持ったほうよ」
突然天使が耳や目などから血を噴き出して倒れる。
限界・・・だと・・・?
「度重なるアップグレードに肉体が耐えきれなくなったのだよ。むしろ、天使化するのでやっとのこいつら劣化品がよくアップグレードに耐えれたとほめてやってもいいぐらいだ」
そういって、下品に笑うバラレー。
しかし笑いながらも頭についたパーツを回収するのは忘れない。
「いいデータが取れた。これから新たに天使を作るとしよう・・・その間、君が生き残れていることを祈りながらな」
再び下品に笑いながら元いた地下に戻ろうとする。
逃がすかよ・・・!
「なっ・・・チィッ、結界か・・・!」
「天使の力は肉体よりもその集合意識自体に宿っている。そして、その集合意識はこのコアに集約されているといっても過言ではない。それを媒介として最上位魔法を発動させたのだよ」
最上位魔法だと?
最上位魔法なんて暗黒魔法パレードトゥパーガトリとほぼ同じぐらいのものじゃないか・・・。
そんなものを詠唱なしでやるなんて・・・。
「最も魔力も足りない劣化天使にはまねできない芸当だが・・・魔王たる私にしかできない芸当だ・・・ヒヒヒヒ・・・」
「クソッ!こうなれば・・・『わが手に抱くは・・・」
「そうそう・・・この結界には天使の情報もインストールされていてな。君のご自慢の暗黒魔法は通用しない。せいぜいそのマジッククリスタルを無駄にしないことだな・・・ヒヒヒヒヒ・・・」
こんなところでみすみすと逃がすっていうのかよ!
クソッ!
「「「粛清対象を確認しました」」」
「おっと、そうこうしているうちに天使たちが来たようだ・・・それもアップグレード済みのさらに強力になった天使たちがな」
こんなときに・・・!
ここは一本道の廊下、扉は前後に二つあるだけ。
一つは結界によって封じられていて、もう一つは天使たちが入ってきたものだから使えない。
となると、逃げ道は窓を突き破って外に逃げるしかない。
「魔王バラレー、必ず・・・必ずお前を殺してやる!」
「ヒヒヒヒ・・・天使になすすべなく逃げるような君に言われてもねえ・・・ヒヒヒヒ・・・」
クソッ・・・クソクソクソッ!!
解析した生命維持装置のデータをもとにして、簡易的だがドライバーに天使たちと同じような思念システムを作ってみた。
出来上がったとほぼ同時に天使たちが一斉に異様なエネルギーを放ち始めた。
・・・どうやら、例の受信機が天使たちになんらかの情報を送信しているようだ。
あれって送信機にもなるんだっけか。
「アップグレード情報・・・暗黒魔法耐性ねえ・・・」
なんだかゲームの画面を見ているみたいだ。
魔法耐性のアップグレードということは、魔法使いの攻撃によって天使のうちの一体がかなりの負傷を負ったということだろうか。それの対策でこんなものが天使全体に送信されたとか?
・・・こうやって弱点をどんどんつぶしていく気か。
「だけど、こんなことしていて肉体が持つわけがない」
現に、ドライバーという端末だからいいもののこれが脳というものに置き換わった場合、かなりの負担が強いられることになる。
たとえ天使全体が思念リンクで結ばれて一つの情報処理機関となっていたとしても弱い部分からほころびが出ていく。それでも情報は無慈悲にも共有され続け最後にはその部分は破壊される。
すべての天使が全く同じ個体というわけではなさそうだ。
現に包囲している天使たちから感じられる力もばらつきがあって、統一性がない。
「・・・!?」
そう考えているうちに包囲している天使の一体が墜落する。
・・・やはりショートしたか。
人々を天使にした黒幕がショートすることへの危険性を知らないはずがない。
わかっていて、無理やり強行したのか・・・。
「なんてやつよ・・・人間じゃないわ」
天使という呼び名で呼び、その天使にあるまじき行為・・・すなわち虐殺をさせる。そして、死の危険性さえある強引なアップグレードを行っていく。
確かにそれならいずれ無敵の軍隊ができるでしょうよ・・・でもそれだとそれまで払った犠牲とあまりにも釣り合わない。いや、釣り合う釣り合わない以前に人間のすることじゃない。
「許せない。・・・やることができたわね」
まずはあの送信機を破壊するとしよう。
だが、先ほどは騒ぎが起こる直前だったから忍び込めた。しかし、今は天使によって厳重警備中だ。
全員が全員館の中にいた天使と同じぐらいの強さかはわからないが、少なくとも包囲している天使よりは強いはずだ。なにしろ重要拠点だし。
一応ドライバーに天使と同じ思念パターンを構成できたことによって、対抗策はできた。
最も、一度使ったら思念パターンを変更されてまた振出しに戻ってしまうだろうが。ゆえに失敗は許されない。
あの送信機さえ破壊できれば、天使たちの思念リンクを破壊することができてこれ以上のアップグレードも行うことはできない。
幸いにも月明かりも仄明るい程度といった感じで、うまく木に紛れていけば館の相当近くまでなら侵入できそうだ。
足元に注意しなくてはならないものの、思ったよりも暗くなくしっかりと注意していればつまずくこともない。最高の条件だ。
「・・・!?」
誰かいる・・・?
・・・いや、誰か倒れている。
となると、死んでいる可能性が高い。
「・・・」
動く気配もない。
・・・やはり、確認すべきだろう。
「こいつ・・・さっき墜落した天使ね」
アップグレードに耐え切れずにショートした天使だろう。
・・・やはり死んでいる。
「やっぱり脳が焼き切れている・・・かわいそうに」
だけど、これで天使が手に入った。
生きてはいないけれどほしかったのはこの生命維持装置のほうだ。
生命維持装置を外した状態で解析してみたら普通の人間に戻っていた。やはりこれがすべての原因らしい。
「・・・今はこんなことぐらいしかできないけれど許して」
ドライバーで分子間を振動させて発火させる。
・・・疑似的な火葬だ。不本意ではあるが魔法によって簡易的な結界を張っている。だから、周りに気付かれることはない。
気を取り直して、生命維持装置の本格的な解析にかかろう。
しかし、何かしらのプロテクトやら解析したら爆発したり全情報が消去されたりとかそういうのがあったりしたら厄介だ。ま、片っ端から破壊してけばいいか。
「は?反転式?古いのよバーカ。時代は織り込み式だっての」
なーんか拍子抜けだわ。




