正体
「俺は反対だね」
「でも、私の記憶に関することかもしれないのよ。この旅の目的に私の記憶に関することもあるんでしょう?それにこの街で行われている悪事に関連しているかもしれないし・・・」
「・・・わかった。ただし使い魔をつける」
使い魔?
「まあ、監視カメラのようなものだ。外見はこんな感じの虫だ」
虫連れてくの・・・。
なんかやだなー・・・。
「さて・・・来たようね」
『使い魔は俺とお前以外には見えない。触れることさえできない』
「ええ、それで今日はどうするの?」
「あれから脳波をこの街の全員と照合してみたら脳波は市長のものと一致したわ」
やっぱりこういうのって市長が黒幕なのか。
もうお決まりすぎて何も言えない。
「なんか虫がいるみたいね」
は?
・・・私とあいつ以外見えないんじゃなかったんじゃないのかよ。
ドライバーによって虫が殺される。
もともとハエみたいなやつだったし・・・。
ちなみに殺し方は例のごとく神経を流れる電流をロックして、脳を殺すというなかなかにえぐい殺し方だ。
「・・・よく見えたわね」
「まあ、それよりもあんたは市長とつながりがあるんでしょ?」
ほんとどうやって調べたのやら。
一晩で街中全員の脳波を調べる?
どうやったのよ。
「まあね・・・。3日後に会う予定があるわ」
「今日に繰り上げて。あいつの化けの皮をはがしましょう」
「まず、あいつの種族はやっぱりホルダーだったわ。ただ、それの突然変異体というか亜種というか・・・何かが違うのよね」
「・・・それって人間じゃないってことでしょ?だったら順応したんでしょ」
「そんな単純なものじゃないわ。これは一種の進化なのよ。たとえばもし人間の腕が四本になったら?足が頭から生えていたら?それでその反応?」
・・・それはなんというか・・・すさまじい進化ね。
「ホルダーはただ、記憶を注入するだけ。影が発生する確率は絶望的に低い。それこそとんでもない重要な情報が抜け出たりしない限り・・・」
「重要な情報?」
「自分の名前や出生など・・・自我を保つための様々な要素のことよ。それを抽出することは本来ホルダーには不可能なはず。だから多分別の変化を遂げている、それに・・・以前あったホルダーに干渉された人間にあった形跡とはちょっと違うのよ」
「つまり、記憶を奪うことに特化したってこと?」
「・・・ただの生存するための手段が武器になっている。それも超強力な・・・」
「えーと・・・何言ってるかよくわからないんだけど」
色々説明されたけどよくわからなかった。
翌日。
ケリーの使い魔に関しては、途中でハエと間違って殺してしまったといっておいた。
一応納得していたが・・・。
それとなく聞いてみたが、魔法による隠蔽はほぼ完璧だったらしい。
バレることはまずないらしい。
で、あのあと市長に会うことはできたもののその日に聞き出すことはできなかった。
しかし今日にすることはできた。
「・・・まあ、上出来よ」
「一応あなたは私の研究仲間ってことにしてある。それじゃ|行きましょうか(Andiamo)」
相変わらず重厚な雰囲気がする扉を開く。
さて、ここからが本番・・・。
「よく来た。・・・それが君の友人か」
「そうよ。えーと」
「ロズミア・フォンブレイン。こういうものよ」
・・・ただの白紙見せてどうすんのよ。
『念動用紙よ』
!?
これってテレパシーってやつかしら・・・。
『正解。どんな通信魔法よりも安全なホットラインよ』
へー。
てか、まず通信魔法なんて使えないし。
『この紙には私が望んだとおりのものが映る。一応近くの研究所で働いていることにしたわ。ここからは私が話すからあなたは口をあわせて』
「それで・・・この子が作ったものだけど、あのあと私たち二人で改良を重ねたわ。プロジェクターか何かはある?」
「・・・ここだ」
・・・わざわざ作ってきたんだ。
随分とマメなやつ。
「えーと・・・よし、映った。これを見ればわかるとおり従来のものはただの信号を解析する程度のことしかできなかった。けど、これは違う。特定の信号を増幅及び遮断することができるのよ」
そういって、画面に映ったのとまったく同じポータブルプレイヤーのようなものを取り出す。
思ったより作りこんであるのね。
しかも、私のパルスコントローラーのことどこで知ったのやら。
「なるほど。続けろ」
「んじゃ、使用例をご紹介しましょう。たとえば、特定の物体を流れているある信号を遮断したいときなんかはこうする」
そういって市長に向かって例の機械を向ける。
「何・・・?・・・!おい、やめ」
「もう遅いわ」
「こ、こいつ・・・人間に化けてたの・・・?」
「記憶操作による思念波を絶えず放出、体にまとうようにすることにより自分を見ている対象に対して無差別に記憶操作を行うことが可能になる。要は、擬態してたってこと」
「・・・成程、最初カラ感付イテイタトイウコトカ・・・」
「ちなみに、こいつの擬態は視覚聴覚嗅覚に有効よ。ただ、大きさは変わらないのが難点ね。実際に触ってみたら微妙な違いに間違いなく気付くでしょうし」
確かにあれだけごつごつしてたら気付くだろう。
大きさは大して変わらないものの、筋肉質な点はスーツを着こなした少し細身の男とは雲泥の差がある。
というか、筋肉まみれでちょっと気持ち悪い。
「さっきも言った通りこいつの種族はホルダー。まあ、元ホルダーなんだけども」
「私ハ進化シタ、ソシテ力ヲ得た。貴様ラ二人トモ喰ラッテヤル・・・」
「おっと、そうはいかないわよ。第42時空間管理局及び裁縫教室管理局長のルーカス・ブレイブの署名付きの警告書よ。これ以上ここに滞在する場合は今すぐの滞在許可の申請をしなさい。もししなかった場合は侵略行為とみなして直ちに処刑されるわ」
「処刑?面白イコトヲ言ウ。殺サレルノハ貴様ラノホウダ!」
「刺激してどうすんのよ!逃げないと・・・!」
「あら、言わなかった?こいつは特定の信号を遮断できるの。こういう風にね」
そんなこと言ってないで早く逃げないと・・・。
・・・そういえばこいつも生物だからもしかすると例の方法で動きを止めることができるのではないだろうか?
「何・・・?ドウシテ記憶ガ奪エナイ!」
「そんなのもわからないの!私の説明を何一つ聞いてないのねあんたは。これであんたの発した思念波を遮断したの。あんたの思念波はすでに解析済み、どんなに頑張って記憶を奪おうとしても導線となっている思念波を飛ばすことができなければまるで意味がないわね。ってわけでいい加減降参したら?」
得意げに語っているけどもさ。
んじゃ、今度はお前のそのほそっこい首を引きちぎってやるみたいな顔してるんだけども。
いや、エイリアンの表情とか安増見分けれるわけじゃないから正直自信がないけどもさ。
でも、いまにもとびかかろうとしているんだよねあいつ。
「ナラバ・・・貴様ヲ八ツ裂キニスルマデダ!!」
「あー・・・それは予想外だわ」
あーもう!
「バカやってないで早く逃げんのよ!何が予想外よ!」
部屋から出て、とりあえずドライバーで鍵をかける。
その直後に、ドアが激しく揺れる。
たぶん体当たりしたのだろう。
「見かけより頑丈ね。さらに頑丈にしましょ」
「何してんのよ、早く逃げなきゃ!」
「ちょっと待ちなさい。今扉の分子間の密度を上げて強度を・・・よし、できた!これで並みの衝撃では」
言い終わらないうちにすぐさま扉が破壊される。
強度がどうしたって?
並みの衝撃では破壊されないとかそんなこと言おうとしたんじゃない?
『すいません』
テレパシーで謝ってくるなよ。
普通に言おうよ。
「えーと、原理を説明する?」
「それより逃げんのよ!伏せて!」
すぐ上空を化け物と化した市長が飛び越えていく。
というか、そのままでいたら確実に殺されていた。
「あっぶな・・・」
「ほら、早く逃げんのよ!」
「あ、ラストチャンス」
「いいから!」
「ふう。何とか落ち着けるとこについたんじゃない?」
「んー・・・ここって・・・。あ、そっか」
何か一人で納得し始めてるし。
しかも、なんか怪しげな装置を取り付け始めてるし。
「これねー爆弾」
「爆弾!?なにつけてんのよ!」
「あ、爆弾っていってもただマルチパルスをあたりに散布するだけ。ちなみにマルチパルスを浴びた生物は例外なく死ぬわ」
・・・は?
普通の爆弾よりやばいもの設置してるんですけどこの人。
「でも、この装置だとせいぜいこの部屋いっぱいでしょうね」
「いやいや、私たちはここで籠城するんでしょ?」
「んじゃ、私たちの城に罠を仕掛けましょう。そして、怪物をやっつけましょう!」




