慟哭
「何か身分を証明するための物はお持ちですか?」
「はい、これ」
例の改造した紙を見せる。
内容は紹介状で、この前訪れた町できいた有名な市長の名前を書いてある・
おそらく、筆跡鑑定なんてされることはないだろう。
「パトリック様の紹介・・・?そんな話聞いて・・・」
「あのさ、それはそっちの職務怠慢でしょ?それを私のせいにする気?」
ただの言いがかりもいいところなんですが。
「し、失礼しました!」
「ありがと、お仕事頑張ってね」
「ハッ!!」
「相変わらず騒々しいとこだな」
この町はデカイ。
そして、主にこの町は物の売買の拠点として使われる。
つまり人も物も情報も・・・すべてが集まりやすい。
「さて・・・まずは情報収集か」
いわゆる裏町に魔法使いの集まる地域がある。
そこに行けば何かわかるだろう。
「さーて、どうしようかなー」
ぶっちゃけ、紹介状さえあれば市長に会うこともできる気がする。
しかし、いきなり会うのもなー。
ただほかの手もあることはあるけどすっごい面倒くさい。
情報収集とか面倒くさすぎる。
だいたいこういうのは市長とかが魔法使いたちを迫害しているパターンだと思う。
たぶんそうだと思う。
ってわけで、面倒くさいからやっぱり市長に会いに行くとしよう。
「すいませーん、市長に会いたいんですけども」
「アポイントメントは?」
「それよりコレ」
例の紹介状を提示する。
これなんか気持ちいいな。
クセになりそう。
「パトリック様の・・・?
「何か問題でも?」
「・・・失礼しました、どうぞお通りください」
さすがにそれだけ有名人だったのだろうか。
さっきから疑問形でこたえられる。
まあ、ごり押しすれば問題ないか。
「パトリック様、お客様です」
『・・・何?名前は?』
「聞く前に通られました。何か怪しい雰囲気でした」
『そうか、よくやった。仕事を続けてくれ』
ひときわデカイ扉の前についた。
おそらくこの先が市長の部屋だろう。
まあ、悪いことしてると決まったわけではないし気楽にいくか。
「|Andiamo(さあ、いこう)・・・!」
部屋の中に入ると、目の前には典型的なオフィスがあった。
例の基地の中で見たものより幾分かは立派だ。
街を一望できる窓に右には本棚、左には簡素だが宿泊するための施設が備わっているようだ。
そして、部屋の中央には作業のためのデスクがありそこには市長と思わしき人物が座っている。
年齢は20代後半、かなり若いと見た。
端には秘書っぽい人がいる。
「君か。客というのは」
「ええ、ほらこれ」
紹介状を見せつける。
ほら、どーよこれ。
いいだろこれ。
「なるほど・・・。で、随分と急いでいるみたいだけどどのような用なんだ」
って言われてもねー。
なんか怪しそうだから来ましただなんて言えないし。
あ、そうだ。
「ここはずいぶんと栄えているようね」
「そうだ。この街は貿易によって栄えている。今や強大な都市として・・・」
「しかし、それは貿易によってもたらせれた利益。単純に立地が良かったとかそういった理由によって避けたに過ぎない」
「・・・何が言いたい」
「いや何。ここ以上に立地がいいところが現れたら貿易の拠点はそちらに移る可能性が高い。そうなるとこの街には何一つ残りはしない」
「・・・確かにそうだ。だから今我々は貿易によって得たさまざまな品々から知識を」
「甘い」
「何?」
「そこの秘書、紙」
秘書に命令して紙を用意させる。
え?なんで私が命令するのかって?
いや、きにしたらダメでしょ。
「ま、軽く書いてみたんだけどこういうのなんてどう?」
「・・・」
紙に書いたのは簡易的な設計図だ。
自分でいうのもなんだが、なかなかにこういうのは得意だ。
なんというか・・・意識の奥底から急にひらめくような感じで次々と便利アイテムの設計図が頭に思い浮かんでいく。
もしかすると記憶を取り戻し始めている前兆なのかもしれない。
「どう?全く新しい道具、パルスコントローラーは」
「素晴らしいな。しかし、この程度のもの所詮は夢物語に過ぎない。実用段階とは程遠い」
「そう。ちなみに今のは思いつきのままに書いたもの。だから本格的に作ろうと思えば実用段階まで昇華させるのは実にたやすいこと。違うかしら?」
まずは取り入る。
そのあとは潜入捜査だ。
噂などによる情報収集はおそらくケリーのほうがやってくれているだろう。
そちらの情報を基に今後の潜入捜査をどのように進めていくかを考えていきたいと思っている。
「面白い・・・。では、後日また伺うとしよう。この時間にまた来るといい」
そういってメモ用紙を渡してくる。
時間が書かれてた。
この時間にこいと。
・・・パチスロしたかったのに。
「よおよお・・・こんなさびれた酒場に大魔導士様がどんな用で?」
チッ・・・。
相変わらず耳が早いなこいつ。
情報屋のコリンズ。
こいつの耳の速さは尋常ではない。
そのおひざ元とあるこの街であれば、知らないことはないに等しいだろう。
「聞きたいことがある。金は・・・わけあってない」
「ハッ!大魔導士様ともあろうかたが豪遊か?」
・・・俺じゃなくてもう一人の大魔導士が、な。
ちなみにこいつの情報は確かなだけあって値段も法外なものだ。
今後の支出と今の手持ちを考えるとこいつに正規の値段で支払うわけにはいかない。
「まあ、な。そういうわけなんで今回は特別にまけてくれないか?」
「おっと!?そいつはタダってことかい?」
「・・・そうなるな」
「ハッ!笑わせてくれんなよ」
だろうと思った。
が、こいつはかなりの酒豪だ。
うまく持ち込めればまけてくれるはず。
そんなことはなかった。
結局たかられて終わっただけだった。
「ハッ!甘いんだよ。その程度でまけろってのはないんじゃねえか?」
「クソッ・・・」
「・・・ま、仕方ねえからお前のツレについて少し教えてやるよ」
「何・・・?悪いがそれに関しては」
「何も知らねえよ、だから教えてやる。『彼の者は空をかける。彼の者は第4の時を迎えようとしている。決して見失うな、決して背くな。彼の者こそが真の支配者なり』」
・・・なんだそれ。
あいつが真の支配者?
そこまで重要な存在とは思えない。
俺はただの鍵としか伝えられていない。
唯一絶対にして最強の兵器の守護者、そしてその鍵の担い手。
「知ってのとおりお前のツレは鍵だ。だが、開けるべき箱がまだ見つかっていないし、肝心の鍵は記憶喪失でどうにも手詰まりってのがお前らの見解なんだろう」
その通りだ。
だから、旅をして何か記憶を取り戻すきっかけを少しでも多く与えてやろうというのが真の狙いだ。
鍵の役目を果たしてもらいさえすれば、革命なんてたやすい。
元からクーデターなんかに興味はないんだ。
「けど、それすら大きな間違いだ。さっきも言ったがあいつこそがその兵器、あいつこそが真の支配者だ。お前のツレは至高の存在の最後の生き残りなんだよ」
「よっすーケリー。なんか情報入った?」
「何も・・・ていうか、情報を買うための資金がなかったんだが」
「増やせばいいじゃない」
何をバカなことを言っているんだか。
うまくいけば10倍になるというのに。
「・・・お前その考え方かなり終わってるぞ」
そうかな。
そうでもない気がするんだけど。
割と普通なんじゃないかな?




