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29 対西条和樹

 私はギルドから出ると、街で色々と買い物をすることにした。

 先ずは食糧からだ。どこまで行くかは決めてないのでちょっと多めに、1ヶ月はもつくらい買っておこうかな?


 私がいつも行くお店で買い物していると、どこからか視線を感じた。

 まあ珍しいことじゃないけどね。大方、ナンパ目的の視線だと思うし、よくあることだ。

 普段の私なら声かけられないように早歩きで行動して逃げたりするんだけど、今日はそこまでしてまで動くのはめんどくさい気分だったので、普段通りに歩いていた。


 もし声かけられても無視するなり、はっきり文句言ってやればいいんだしね。

 それにしても……なんで私がナンパ野郎のことなんか、こんなに考えなきゃいけないんだ。

 急にムカついてきたけど、我慢我慢。


 武器は新調しようかなー? でも、どうせ攻撃力が高いからどんな武器でも結局は一緒になるのかな。

 まあまたの機会に買おうか。今のナイフに不満ができるまでは買わなくてもいいでしょ。


 後は……なんだろ? HP回復薬はいらないだろう。スキルのおかげで自動回復するし、たぶん大丈夫。

 MP回復薬はちょっと欲しいけど高いんだよなー。

 それなりの量を買うことはできるけど、私貧乏性だしいざって時にしか使えなそうで最終的には無駄になりそうな予感がする。


 これも必要になり始めたら買うことにしよう。とりあえず今は必要とは思えない。

 無駄に魔法を使わなければMPだって結構あるんだしね。




 いくら経っても私への視線が消えることはない。声をかけてくるようでもないみたいだし、何なのだろう? 

 ストーカーかな? 私の思い過ごしならいいんだけど。


 ……ちょっと試してみようか。


 私は買い物を終えたので街を出て、近くの森の方へと歩き出す。

 別に森の方に用事があるわけじゃないけど、人気のない場所に移動すればこの視線の正体もわかるかもしれない。

 ずっと見られるのは気持ち悪いしね。


 私が1人になればきっと現れるはず。出てきたらちょっと痛めつけるなりしてやれば、問題解決だろう。

 まあそんな視線は最初から私の勘違いだった、ってのが1番なんだけど。




 私が森の中に入ってから5分くらい経っただろうか。特に何も起こらない。一応ナイフを手に持っているんだけどまだ使っていない。

 魔物は私が怖いのか全然襲ってもこないし、視線も感じなくなっていた。

 勘違いだったのかな? 結構自信あったつもりなんだけどな……


 私は街に帰ろうと思い、後ろを振り返る。そうすると、木の陰からこちらを見ている人影が目に入った。

 ていうかその人物と目が合った。


 布を顔に巻いており目から下は隠れているため、どんな顔つきかはわからないけど男だ。

 私と目が合った瞬間、あきらかに動揺した目をしていたのでまさか見つかるとは思わなかったのだろうか?


 気配を消すようなスキルがあるのかもしれないね。それにしたってあの男は不用心だと思うけど。

 男はあきらめたように私の前へと出てきた。その手には長い剣を持っている。


「持っている武器を捨てて、大人しくお前が持っている有り金全部を出してもらおうか」

 私の方へ剣を向けながら男がそう言ってくる。

 ストーカーじゃなくて盗賊だったか。ちょっと予想とは違ったけど視線の正体はコイツだったんだね。


 もしかしたら私がギルドで大金を受け取るところを見ていたのかもしれない。

 私はすぐにしまったつもりだったんだけど、あれだけ人もいたし不思議じゃないか。


「おい、聞いてるのか? さっさと武器を捨てて言うことを聞け。俺の言うことを聞けば、まあ命だけは助けてやってもいいぜ」

 布で隠れていてもわかるくらい、悪そうな笑みを浮かべているのがわかった。


 どうしようかな。言葉で言っても仕方なさそうだし、ちょこっと痛めつけようか。

 私が1歩、男へと近づくと男は剣を両手で構えて迎え撃つ準備を始めた。

 ん? それにしては男の視線が私ではなく、私の後ろの方に向いている気がする?


 私がそれに気づくとすぐに後ろを振り向く。その時丁度もう1人の男が私に向かって剣を振り下ろしている瞬間だった。

 私はすんでの所でそれを躱し、男の2撃目はナイフで受け止める。その後私は素早く後退し、距離を取った。


「おい、お前のせいで気づかれたじゃねえか」

 その男は舌打ちをしながらもう一人の男へと近づく。よく見ると切り付けてきた方の男が持っている武器は刀のようだった。


「わ、わるい。まさか避けられるなんてよ」

 どうやら刀男の方が上の関係らしい。別の盗賊団のリーダーだろうか?

 あの馬鹿男の視線に気づかなければ避けられずに攻撃を受けていたかもしれない。音もなく忍び寄ってきたので間一髪だった。


「まあかすり傷は与えたみたいだし、このままさっさと殺すぞ」

 刀男の方はなかなか物騒な人物みたいだ。でもかすり傷? 手足には特に傷は見当たらない。

 顔に手を当ててみると少し血が出ていることがわかった。なるほどね。


 でもこれくらいの傷はどうってことはない。気付いたら少し痛くなってきたけどすぐに治る傷だ。


 男たちの方を見るとこちらに向かって走ってくるところだった。

 2人の攻撃を難なく避ける。連続で攻撃を仕掛けてくるけど、まるで息が合っていないしスピードだって全然遅い。


 刀男の方はまだましだけど、馬鹿男は話にならない弱さだ。なかなか立派そうな剣を持っているのに見合っていなかった。

 私がナイフで斬撃を受け止めたり、避けるたびに男たちが焦り、イラついてきているのが伝わってきた。


 少し男たちの攻撃に付き合ってあげたけどそろそろ飽きてきたな。前の盗賊団と同じように魔法でちゃちゃっと倒しちゃいますかね。


 私は隙を見て男たちから距離を取り、ストーンショットとファイアボールを発動させる。

 しかし魔法は何も発動しなかった。


 あれ? 確かに魔法使ったよね? 

 私はもう1度魔力を込めて……さっきよりも強く込めて魔法の発動を試みた。

 しかし何度試しても一切発動する気配がなかった。


 私が焦っている隙を男たちが見逃すわけもなく攻撃はさっきよりも激しくなる。

 おかしい。今までこんなことはなかったのに。

 一応ステータスを確認する。



 名前:アンナ・キドウ

 職業:高校生

 レベル:21→28

 能力:HP 2531/2531→7815/7903

    MP 1060/1060→1819/1819

    攻撃 1545→5503

    防御 1265→3245

    魔力 1153→2036

    俊敏 1574→5483

    運  663→979

 スキル:魔物博士5,ナイフ技術3,魔法の心得2,擬態,迷彩,魔法反射,再生,突進,粘液,嗅覚強化,統率,土魔法3,夜目,呪いの目,火魔法2,俊敏強化,風魔法3




 うーん、特に問題はないね。スキルを間違って消しちゃってたかなんて思ったけどそんなこと起こるわけないよね。


 意識がステータスに向いていたのが悪いのか、刀男のスピードが上がったことに気付かずまたしても攻撃を受ける。

 こんどは左腕を少し切ったみたいだ。ちょっと痛いくらいで大したことはない。

 今日の私は少し油断しすぎてるみたいだ。


 傷を見て思い出したのか、顔の傷の痛みを一瞬感じた。

 いつもならこの程度の傷は、すぐに治るはずなのになぜだろう?


 刀男の相手をしていると、馬鹿男の方は魔法を放ってきた。ただのファイアボールだ。

 私はいつものように魔法には目もくれず、刀男の相手に集中する。私の攻撃力が高いばかりに無茶な攻撃をすると殺しかねない。



 流石に人は殺したくなかった。勇者なら人は殺さないよね。いや、悪人あいてなら殺す勇者も結構いたかもしれないけど。



 ついにファイアボールが私に近づいてきた。

 ファイアボールが当たるといつものように弾かれると思っていたのだが、反射することなく私の左手の皮膚を焦がした。


 あっつ! なにこれ? 反射されてない? もしかしてスキル自体発動していない!?

 私は困惑して、再度男たちから距離を取った。


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