表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

2 魔物博士って?

 

 どうやら私だけが暗い表情のままだったみたいで、魔木が話しかけてきた。

「どうしたの木藤さん? 顔色が悪いけど体調でも悪い?」

「う、うん。少し調子がね……」

 本当に魔木は周りのことをよく観察しているなー。私そんな変な顔していたのかな?


 私だけ勇者じゃないなんてばれたら、ちょっと面倒なことになりそうなだな。

 ただでさえクラスには仲いい子いないし……どちらかといえばクラスの女子からは少し嫌われているくらいだ。

 原因はたぶん魔木が、私に対して特に優しいせいだと思う。たぶんだけど。

 私のことを好きなのかわからないけど、そのせいで少し迷惑はしていた。


 私のことを嫌っている代表格の西井加奈が私の方に近づいてくる。

 いや、私じゃなくて魔木に近づきに来たのかな?


「もしかして木藤さん……ステータスを確認して暗い表情してたんじゃないのー? 何か変なことが表示されていたとか?」

 そんなことを言ってきた。もしかして気づかれた?


「ちなみに私たちも勇者とか表示されてたんだけど、やっぱり木藤さんも勇者だったの?」

 西井加奈は微笑みながら私にそう言ってくる。やっぱりこの女気づいているみたい。

 私が何も答えられないでいると、西井加奈は口角を少し上げた。


「えー! もしかして木藤さんだけ勇者じゃなかったの!? みんなが勇者なのにあなた1人だけー?」


 やっぱりばれていたみたいだ。わざとらしく西井加奈は声を大きくして言う。


 周りからの視線が痛い。男子からは心配そうな視線だが、女子からの視線が鋭い。

 何人かの女子はニヤニヤと笑っているのが見える。


「え? そうなの、木藤さん?」

 魔木が心配そうに私に聞いてくる。

「うん。実はそうなの。勇者なんてどこにも表示されていなかったんだ……」

 私はしおらしく落ち込んだ声で答えた。


「だから少し不安になっちゃってね」

 魔木に対して上目使いで言った。可愛く見えるようなちょっとした工夫だ。

 こういう仕草に男の子は弱いはずだ。魔木も照れて微笑んでいるように見える。


 まあこういうことをしているから、ますます女子から嫌われるんだろうけどね。


「大丈夫だよ、安心して! 木藤さんは僕たちが守るからさ! 何も心配する必要はないよ」

「えー、蒼一君! 私のことも守ってよー」

 西井加奈が横からそんなことを言って、魔木の腕にしがみついた。

 この女も十分あざとい行動していると思うんだけどな……




 そんなやり取りはどうでもいい。

 もしかしたら魔物博士なんて変な名前だけど、もしかしたら特別で強いのかもしれない。

 勇者とは違った意味でレアかもしれないし。魔物を簡単に倒す方法がわかったりしてね。

 とりあえずスキルの効果を知りたい、と念じてみる。ステータスを見たときと同じ要領だ。



 魔物博士1:見た魔物のステータスがわかる



 念じた瞬間にそんなことが表示された。思った通りだね。

 でもまさか表示された効果はそれだけ。確かに役には立つのだろうけど、戦う手段を持ってないので意味ないじゃない。

 魔法を使えたら話は変わったのかもしれないけど。


 今の私には完全にハズレスキルだよ……

 私も魔法使ったり、剣とかかっこよく振って戦ってみたかったな……





「さて、一通り能力の確認も終わっただろう。君たちには魔王を倒してもらわなければならない。まずは魔物に慣れるためにも、これから少し弱い魔物と戦ってもらおうと思う。」

 王様がそう言って、兵士たちを呼ぶ。すぐに兵士たちが部屋までやってきた。


 私たちは兵士たちに付いていき、城を出て草原に出た。外は青空が広がっていてとても気持ちがいい。

 草原にはピンク色のボールが何個もコロコロと転がっていた。あれが魔物?


「あれはピンクスライムと言って、魔物のなかでも最弱の魔物だ。怪我の心配もないから、まずはコイツを倒して戦いに慣れていこうか」

 兵士がピンク色のボールを指差して言った。

 兵士の一人が1体のピンクスライムに近づいて、持っていた剣で真っ二つに切った。


 その1撃でピンクスライムは倒れたようだった。

 おお、すごいね。私もあんなことができるようになるのかな? それとも勇者じゃないから無理かな?




 それから数人ずつ兵士に教わりながら剣や、ナイフを振るってピンクスライムと戦い始めた。

 みんな何回か切りつけることで倒しているようだったが、魔木だけは違った。

 最初に兵士が見せてくれたようにピンクスライムを一撃で真っ二つに切って見せていた。

 これには兵士も驚いている様子だった。


 すごすぎでしょ、あいつ。よっぽどステータスがよかったのかな?

 魔木には劣るものの他にも何人か、強そうな人もいた。


 ついに私の番が回ってきた。ピンクスライムの前に立つ。バスケットボールよりも少し大きいかな?

 まずはコイツのステータスの確認からだね。

 私はピンクスライムのステータスを見たいと念じてみる。



 名前:ピンクスライム

 種族:スライム

 レベル:1

 能力:HP 15

    MP 0

    攻撃 5

    防御 2

    魔力 5

    俊敏 8

    運  2



 念じるとすぐにステータスが表示された。あれ? コイツって最弱なんだよね。

 私と対して能力値に差がない気がする。

 もしかして私って相当弱かったりする?


 剣は私にはすこし重かったので、ナイフを受け取った。早速近づいて切りつけてみる。

 スライムのHPは2しか減っていなかった。


 再度切りつける。今度は1だ。やばい。弱いすぎじゃない?


 結局倒すのに最低10回は切ったと思う。

 しかもちょっと油断してたらいきなり体当たりされて、3ダメージくらったし。


 他の人で反撃受けた人なんていないし、5回以上攻撃したひともいない。

 みんなもっと簡単に倒していた。背中にみんなからの視線を感じる。

 兵士の人もある意味驚いている様子だった。


 ちょっと、いやかなり恥ずかしい。今すぐにでも走って逃げ出したかった。


 いくらなんでもここまで弱くする必要はないじゃないか!

 異世界初日なのに、もう私の心は折れそうになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ