ブルーオート
「じゃあ行ってくるね!」
そう言って姉ちゃん達は遊園地へと出掛けていった。
「よし、
じゃあ行くか」
そう言って陸兄は車庫に向かう。
俺はマコを呼びに、2階の姉ちゃんの部屋へと向かった。
「マコ~
用意出来たか?」
「うん。
真人は?」
「昨日の内に終わらせたよ。
たいした量無かったしな」
「おーい」
下から陸兄の声が聞こえる。
「じゃあ行くか?」
「うん」
一階に戻ると玄関から車の音が…
「へぇ~
まだ乗ってたんだ」
「おう。
気に入ってんだよコイツ」
そう言って陸兄は車庫の扉を閉める。
「なんかスゴそうだね
なんて車?」
マコが運転席を覗き込みながら聞いてくる。
「260RS…
ステージアだよ」
「ああ、あれね。
でも…こんなだったっけ?」
そうマコが聞くと陸兄が少し得意げに答える。
「これはね…
羊の皮を被った狼なんだよ」
そう言いながら
ボンネットを開ける。
「これって…RB26?」
「そう、
GT-Rのエンジン」
「陸兄、今からどこ行くの?」
「俺がこの車を買ったトコ
…まぁ、いいのあると思うケド…」
「ケド…?」
「アイツ変わりもんだからなぁ
…まぁ真琴ちゃんなら大丈夫だろうけどさ」
「そういえばこの車…
どれくらい出てるんです?」
「ん、パワーか…
450馬力前後かな?
ブーストアップ仕様だし…」
「ブーストアップで450…」
「でもさ
エンジンノーマルで
タービンもノーマルだから」
「えっ?
それで大丈夫なの?」
「うーん…
他を結構ヤってるから大丈夫だよ
強化クラッチ、
インタークーラー、
オイルクーラー、
それに、パイピング…
あと…」
「…えっと…二人とも…
解説して?
俺には
さっきから何話してるのかさっぱりで…」
「…とにかく…
ごっそりヤらなきゃならないんだよ… 」
「そっかぁ…」
「二人共…
知らないからほっとこー
みたいなのやめてくれ…」
「じゃあ真人、
今のところ解説を…」
「えっ…何で俺?
…まぁ多分、
他をキッチリ強化してるって…コト?」
「なんだ~
分かってるじゃん」
「それでいいのか?
マコ…」
「ココだ、着いたぞ」
「変な店だね…」
「確かに変な名前だ
な…」
『パーツなら、
ブルーオート』
なに屋?
倉庫のような店内に入ると、
車の下から声が…
「陸、そこのスパナとってくれ」
陸兄が車の下にいるツナギ男にスパナを渡す
「ったく、
今日は客として来たんだけどな?」
「ちょっと待っててくれ、
これを閉め終わったら…よし」
そう言ってツナギ男は、車から出ると…
なぜか俺を見た。
「で、どんな車がいいんだ?」
えっ、何で俺?
「えっと…俺じゃなくて…」
「青森、違うって、
買うのはこの子」
陸兄はそう言ってマコの肩にポンと手をのせる
「えっ…女の子?」
ツナギ男…もとい
青森さんは、
「じゃあ、こっちにあるから」
そう言って俺たちを外へと案内した。
そこには、部品取り車の数々…
「ココって…
ジャンクヤードですか?」
「ああ、そうだよ
…えっと…」
「真琴です、山本真琴」
「真琴…って…
じゃあ、山本さんの姪?」
「そうですよ
…叔父さんのコト知ってるんですか?」
「知ってるも何も…
なぁ陸?」
「ああ、俺たちはさ
山本さんの後輩のトコで働いてたんだよ」
「専門学校の同期でね
山本さんの後輩のトコに居たんだよ。
…えっと6年前か…
俺がココをやり始めたのは…
車ってさ、最期にはスクラップになるだろ?
…それって
もったいないと思わないか?」
「まぁ、青森は運が良くてな
…カブって分かるか真人?」
「カブって…
あの食うやつ?」
(バカだ…)
「…じゃあ、
真琴ちゃんは?」
「…もしかして…
株の取引?」
「やっぱ、頭いいな~
真人とは大違いだな」
「わるかったな陸兄…
てか、本当ですか?」
「ああ、博才あってな。
…車はこっちだ。」
その時
誰かの携帯が鳴った
(…プルル…)
誰だ?
「ん…俺だ。悪い
ちょっと先行っててくれ。
陸、後頼むわ」
「ちょっ青森!
…ありゃ仕事だな…」
「仕事って…」
「青森は、
まぁ見ての通り
個人投資家でな。
本人いわく
『遊びでやったら上手くいった』らしくてさ。
まぁ才能あったんだろうな…」
「だったら
何で解体屋?」
「さっき言ってたろ
『もったいない』って
…ここにある車達をバラして、他の車に使う。
それで他の車が命を取り戻して走る。
青森は、生き返らせたかったんだろうな
車にある魂をさ…」
「さてと…
多分この中から選べってコトだろうけどさ…」
「陸兄…
3台しか無いけど…」
「俺に言うなよ…。
真琴ちゃん、
どれがいい?」
「えっと…」
マコは、3台の車をじっくりと見始めた…
旧型マーチ、
81スターレット、
二代目シティ、
…と、
ホットハッチが並んでいる訳で…
見た感じ、
どれを選ぶのかは解りきってるんだけど…
内装や外装、エンジン周り等
一通り見た後でマコは…
「これかな?」
「やっぱりな…」
選ばれたのはマーチだった…でも
…普通じゃないよなコレ
あ、青森さんだ
「お、決まったか?」
「なぁ青森、
コレしかないのか?」
「コレしかってなぁ
…選りすぐりの三台なんだぞ?」
「あの…
マーチが気になるんですけど…
普通じゃないですよね?」
「お、目利きだね。
そう、他の車は程度が良い極上モノだけど…
あれは違うんだよな…」