山本ガレージとサニトラ
俺はマコの運転する軽トラに、
尚人のパンクした自転車を積んで
ミラー越しにミニでついて来る姉ちゃんと尚人の姿を見ながらさっきの会話を思い出す…
「実はボクね…
テストドライバーを叔父さんのショップでやるんだ。」
「えっ…マジで!」
「うん、それでね…
真斗にボクの隣に乗って欲しいんだけど…いいかな?」
「いいよ。」
(面白そう!)
なんか飛ばしてね?
「…マコ、この道で合ってんのか?」
「うん、だってこの前来たんだよ。
…それぐらい覚えてるよ〜」
チューニングショップなんかこの辺あったけなぁ?
…なんか見覚えのある建物が見えてきたぞ?
やっぱり
『山本自動車』
…あれっ?
名前違う…
「なぁマコ…本当にここなのか?」
「うん、ほら、
『山本ガレージ』
って…えっ!?、名前違う!」
「…山本自動車だったよな?」
…待てよ…マコの叔父さんってまさか…
「なぁ叔父さんってさ…山本 淳…」
「うん、やっとわかったんだね!」
「真琴ちゃんー」
あっ姉ちゃんだ。
「やっと追いついた…
いきなり加速しないでよ〜
こっちはNAなんだからついていけないよ…」
「ごめんね、つい飛ばしちゃった〜」
「なぁ真琴ちゃん…こんなとこに何の用があんの?」
「そうだった、尚人君は何も知らないんだったね…ボクね…」
そう言ってマコは尚人に
レース活動をするコトと
テストドライバーをするコトを話す。
「えっマジで!?
…スゴいんだな真琴ちゃんって…」
そんな話をしてる間に姉ちゃんが誰かを連れてきた、
その人物は姉ちゃんに耳を引っ張られている…って陸兄?
「悪かったってば…痛いって、
つねるなよ〜」
「陸兄…なんでいるの?」
「お、真斗と真琴ちゃん 待ってたよ〜
もうすぐ山本さん帰ってくると思うよ。…って真子、もう離してくれ…頼む…」
姉ちゃんは手を離すと
「さぁ、白状しなさい!」
と言った…
スゴい迫力だ…
「分かったよ…」
そう言うと陸兄はシャッターを開ける。
ガラガラ…
そこには一台の小さなトラックが…
「あれっ?
おっちゃんのサニトラ…」
この車は
『山本自動車』…もとい、
『山本ガレージ』
の社長、山本淳の
愛車である。
「へぇ〜コレが
サニトラかぁ…
思ってたよりもちっちゃいね」
マコは初めて見たらしい…
「まぁ…昔から作ってたからな…」
「昔ってどれくらい?」
うーん…どれくらいだろ…
かなり昔だったよな
「…うーん…」
「確か…67年から71年までが初代で、
71年から2008年までが2代目だよ。
ちなみにコレは、
2代目の…角目だから後期で…うん、
ショートボディだな。
まあ、いろいろイジってあるみたいだけどな」
「陸兄詳しい!。
てゆーかさ…2008年 まで作ってたの?」
「輸出で南アフリカで
1400 BAKKIE って名前でね、ちなみに…
日本では94年に生産終了したよ」
「…詳しいのね陸って…」
「まぁ山本さんに散々言われたらね…
『サニトラはなぁ』って
…酔うとそればっかしでさ…
まぁコレは初めて見たけど…あっ!」
「コレって…」
「忘れてたよ。
コレ、サニトラのカギ。
山本さんから、
預かってたんだった…
『真琴が来たらコイツに乗らせてやれ…
コイツにはあらゆるセンサーが付いてる。
まぁ…テストだな、
客の車に乗せられるかの…』って。
とりあえず真斗と一緒に走ってきてよ。」
「お、俺も!?」
「もちろんでしょ?
それとも怖いのかな?…ボクの運転が…」
「そ、そんなわけないじゃん!」
「じゃあ行こっか!」
俺は若干の不安を抱きながらナビシートに座った。
目線が低い…
でも、マコの方はバケットだからもっと低いか…
マコは軽くペダルに足を乗せ、セルを回す。
キュルルル グォォン!
サニトラは軽く
千回転ぐらいでアイドリングを始める。
「じゃあ行ってくるね」
そう言ってマコはサニトラを発進させた。
「とりあえず、
ドコ行こっか?」
「そうだな…
暑いし、ワックでも行くか!」
ワック…大手ハンバーガーチェーン店でこの辺では隣町にある。
まぁ隣町と言っても20分程かかるが…。
「じゃあ、真斗のオゴリね」
「まぁ…
それくらいならいいよ」
そんな会話をうるさい車内で交わしながら、
サニトラは国道に入る。
ブォォォン!
気持ちよく加速していく。
てか、よく回るなぁ…
「なぁマコ?」
「うん、なに?」
「本当に走るの好きなんだな」
「うん、だって楽しいんだもん!」
そう答える横顔はなんだか輝いて見えた。