ボク、女の子なんだよ!
…真斗はいつものようにクマさんを抱きしめながら眠っていた…。
「真斗?」
(クマさん抱いて…
眠っちゃたのかな?)
こっそり真斗の部屋に入って来た真琴。
決して夜這いではない
…ただ昔のようにしたかっただけなのだ…。
「せっかくボクが来たのに…
すぐ寝ちゃうんだね…起きてるかと思ったのに…」
真斗のクマさんを抱いて寝ている姿を見ていた真琴。
(ちょっとイタズラしちゃおっかな〜)
そう思って、真斗のベッドに座り…
わきの下を軽くくすぐる。
すると眠っている真斗の体がピクッと動く…
真琴はこの反応が面白くて、ついやりすぎてしまった…。
「くすぐったい…
ってマコ!?」
真斗が目を覚ましてしまった。
正気にかえった真琴は自分がしていたことをほんのすこし後悔した…
「ま、マコ…何で俺に抱きついてんだ?」
真琴はクマさんに抱きついている真斗に抱きついていたのだ…。
真斗はこの状況がイヤではなかった…
だって背中から女の子が抱きついているのだから…。
「…ボクが居るのにすぐ寝ちゃうから…
ちょっとイタズラしよかなって思って…」
「…ちょっとどころじゃ…無いよな?」
「うん…やりすぎた…ごめんね…」
「…じゃあ俺の言うこと聞いてくれるか?」
(何だろ…変なコトじゃ…無いよね…)
「その…マコの部屋…見たいんだ…」
「…いいよ。
でもその前に、コーヒー飲もうよ。
話したいこともあるしさ…」
俺とマコはコーヒーを飲む。
買い置きしておいた缶コーヒー。
マコはカフェオレを
俺は微糖のコーヒーを飲む…
マコはカフェオレが好きらしい。
そして俺はコーヒーを飲んだ後、マコの部屋に足を踏み入れる。
「…なんだこれ…
すげぇ…」
そこは朝まで(もう零時回ったから昨日か)何にもなかった部屋のハズだが…
キチンと女の子の部屋になっていた…
「変かな?」
「いや…変どころじゃない…すげぇ!
何でなにもなかった部屋が
…こんなに女の子の部屋になるんだよ!?」
「だって…
情報を仕入れて、
どんな部屋にしたらいいかなって考えてたからね」
「…情報?
…姉ちゃんから?」
「うん、アタリ」
そう言って真琴はベッドに座る。
「真斗も座りなよ」
「うん…姉ちゃんと連絡取ってたの?」
そう言って真斗もベッドに座る。
「うん、たまにだけどね。」
「…マコさぁ。
引っ越す気ないだろ?」
「うん…ダメかな?」
(やっぱしな…)
「ダメじゃ無いけど…マコはいいのか?」
「いいって何が?
ボクがそうしたいからそうするんだよ」
「そっかぁ…
そういえば話って?」
「ああ、それはね…」
そして真琴は
アメリカでのコトを話し始めた…。
マコはアメリカでの生活に慣れるまで、
真斗にもらったぬいぐるみを抱いて毎晩泣いていたらしい…。
「本当にボクは誰も居ないところに来ちゃったんだなって…
スゴく寂しかったの」
でも、そんなマコを変えていったのは、マコの兄…秀真である。
「でも、そんなときに、ボクを変えてくれたの…秀兄が…。
『泣いてばっかじゃダメだろ?
まずは話しかけ無いと…』って…
そう言って秀兄は、
毎日ボクに英語を教えてくれたんだ」
それから少しずつマコは本来の姿を取り戻していった。
…俺が知っている、いつもの明るいマコに…。
「それから…
いつも秀兄がそばに居てくれたんだ…。
周りからは、
『仲のいい兄妹』
って言われてた。
…だからボクは、
『何で秀兄はいつもそばに居てくれるの?』
って聞いたんだ、
そしたら秀兄は…
『俺がおまえを守るためだ』って…。
その頃、お父さんは、仕事が忙しくて…
あんまり家に帰って来なかったんだ。
だから秀兄はいつもボクを守ってくれてると思ってたんだ、
でも…それだけじゃなかった…」
実はその頃、
マコの父さんは会社の重役で…
マコがあらゆる目的で誘拐されたりする可能性があったらしい…。
秀真さんは、そんなマコを守る為にも、
一緒に居たらしい。
マコがそのコトを知った事件があった…
マコが中学生
(アメリカでは7年生とか言うらしい)
になったばかりの春…。
マコは一人で下校しているといきなり
…知らない男に
車に乗せれれそうになったらしい…
つまり誘拐だ。
通りがかった人が助けてくれたので大事には至らなかったらしいが…
スゴく怖かったらしい。
そのコトをマコは、涙ながらに話してくれた…。
「それからボクは、自分の身は自分で守らなきゃって思ってね…空手を始めたんだ。
けっこう強いんだよ?
男の子に勝てるくらいにね!」
「そっかぁ…だから、あの時あんなに力強かったのか」
「痛かった?
…ごめんね…」
「いや、大丈夫だから…謝るなよ…」
(本当はすげー痛かったケド…)
「ところでさ…
一年前になんかあったのか?
…姉ちゃんが新婚旅行でそっちに行ったのも…
マコがレースの世界を知ったのも、
それくらい何だろ?」
「…お父さんが
…再婚したんだ。」
(えっ…再婚!?)
「それで、ボクと秀兄は家を出て…
二人で暮らし始めたんだ。
…そんなときに、お姉ちゃんが新婚旅行でコッチに来て…」
「そっかぁ…
そんなコトがあったのか…。
…それで、いつレースを?」
「うん、
その後に…
秀兄にサーキットに連れて行ってもらってそれで…」
「なるほど…。
…それでさ…
何で日本に?」
「…秀兄が、結婚したんだ…。」
「…それで、マコはコッチに来たんだな?」
「うん…
由希さんはいい人だけど…二人の生活を邪魔したくなくて…」
「そうだな…
俺も母さんが再婚して…マコと同じような感じだったら…
同じようにすると思うよ。」
「…ところで…
何でずっと、
『ボクは女の子だ』
って、言ってくれなかったんだ?」
「…その…隠すつもりは無かったんだよ?。
秀兄が、
『真斗はおまえのコトを男の子だって勘違いしてるぞ?』
って教えてくれるまで知らなかったし…。
だから、ちゃんと会って女の子だって言おうって決めたの。」
「だから、写真を送ってこなかったんだな?」
「うん、
ちゃんと言わないと分かってくれないと思ってね…」
「…まだ、聞いてないけどな?」
(まぁ分かってるケド…ちゃんと聞きたいし…)
「そうだったね…。」
そう言うとマコは立ち上がって俺の方の見て…
「ボクは女の子なんだよっ!
…なんか改めて言うと恥ずかしいね…」
…真っ赤になったマコも可愛いな…
その夜、
(もうすぐ、
朝方だけど…)
二人は昔のように…同じベッドで眠った。
…手を繋ぎながら…