山本五十六
《理解デキヌ故、横須賀鎮守府ニテ話ヲ伺イタイ。》
その電文が来たのは、最後にこちらが送ってから一時間後だった。
参謀部などで話し合っていたのだろう。
《了解ス。我之ヨリ横須賀ヘ向カウ。》
ー横須賀ー
「おお、横須賀だ、横須賀だ!」
「昔も今も変わらんのだなあ…。」
乗員達は口々にそう言い合う。しかし、そんな場合ではなかった。電文で聞いた限り、現在は昭和12年の11月。本当にタイムスリップしてしまったのだ。
〈総員、配置につけ。これより山本五十六司令長官が我がやまとに乗られる。失礼のないように。〉
艦内スピーカーでそのような旨を伝えると艦内は慌ただしくなった。先ほどまで横須賀を見てはしゃいでいた船員たちも大慌てで整列している。
…徐々に内火艇が近づいてきた。あれに山本五十六司令長官が乗っておられるのだ。
そして、接舷された。
「どうも、山本五十六司令長官。私はこの艦の艦長、斎藤猛と申します。」
「…名前をなぜ知っているのだ?」
「電文でも伝えたはずです。私たちは『未来』から来た、と。」
「なるほどな、本当だったんだな。」
「では長官、こちらへ。」
「うむ。」
ーーーー
「これから皆さんには、『未来』のビデオを見て頂きます。大変ショックに思われるかもしれませんが、これは実際起こったことです。苦手な方は艦内の案内をさせます故、そちらへ。」
と、言ったものの、予想通り立ち上がる海軍将校は一人もいなかった。
ビデオの上映が開始された。ビデオには、第二次世界大戦での敗戦と、現在の海上自衛隊への発展の経緯、海上自衛隊とは何か、護衛艦について、等であった。
「ほう、そうか…。やはり、航空主兵の時代が来るのだな?」
「はい。ただ…。私達が来た未来では、再び大艦巨砲主義に戻ろうとしています。」
「それはまた、なぜ?」
「乗って頂く時に見られたかもしれませんが、この艦には、レールガン…日本語にすると超電磁砲というものが積んであります。超電磁砲というのは簡単に言えば電気の力だけで砲弾を発射するシステムで、私達が来た未来では日本しか実用化がなされていません。」
「ほう…。試射は今できるかね?」
「いや、この様な湾内では他の艦船に被害を与えかねませんから、外海に出てからでないと不可能です。」
「いえ、出力を下げれば可能であります。」
(佐々木一佐!何を言うか!)
(現実に可能であります。やってみましょう。)
「…ほう、では撃ってみてもらおうか?」
「了解しました。総員、甲板より避退せよ。これよりレールガンの試射を行う。」
「出力、10%、仰角10°、右20°に向け!」
「長官、これを。」
と、いって手渡したのは閃光覆いである。
「撃ち方ァ用意!…撃ィ方ァ始めェ!」
耳を劈くような音と共にレールガンより発射された弾丸は光を携えながらぐんぐんと空の彼方へ飛んで行った…。