プロローグ
205X年、日本は原子力超弩級護衛艦「やまと」の建造を計画していた。
その「やまと」にはまだ米国も受験段階であったレールガンが搭載。機関は前述の通り原子力。その過剰電力をレールガンに回して作動させる。
当初この計画は公表されておらず、起工後に明らかになったため、未だ関係悪化の一途を辿っていた中・韓はもちろんのこと、米国や英国からも批判を受けた。ただ、この批判は防衛庁長官の長い説得により消えた。
時は変わり206X年。世界は再び戦争へ向かおうとしていた…。
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「…なんだ、この巨大な艦は…」
「超弩級護衛艦、やまとであります!」
そう会話していたのは初代艦長の斎藤猛海将補と砲術長佐々木和正一等海佐であった。
護衛艦としては異例の海将補(少将〜中将相当)が艦長となるこの艦、砲術長や航海長等も一等海佐ばかりであった。
「ん…。あれが超電磁砲…レールガンか?」
「そうであります。たった10gの弾ですが、射程は500kmを超えるとか…」
「500km以上!?レーダーが発展した今だからこそできるものだなあ…。初速は?」
「聞いた話によるとM8.0を超えるとか。」
「ほう…。そりゃあまたすごいな。航海長、最大戦速は?」
「35ktsと聞きました。このでかい艦がそんな速さで動くとは思いもしませんでしたよ。」
そういうのは航海長の北島佐輔一等海佐。彼はDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の指揮の際に優秀な成績を収めたため、抜擢された。
「しかし…。こいつを護衛艦と言っていいんだろうかなあ…。」
「もう、護衛艦なんて万能用語と化していますからね…。」
そう。この時代、護衛艦は多岐に渡っていた。もうDD(汎用駆逐艦)とは言えないクラスのものまでが自衛隊にはそろっていたのだ。
先ほどもあったDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)のいせ型(二代目)や、DDA(航空中継護衛艦)のほうしょう型等々々…。どちらも戦艦大和を超える大きさである。
「こいつの最初の護衛艦としての航海が来週か…。胸が騒ぐな…。」
「「はいっ!」」
そして、一週間後。
艦隊を率いて遠洋航海の時がやってきた。
旗艦は勿論やまと。対潜哨戒専用としてほうしょうとりゅうじょう。万が一に備え、艦隊防空の任を担うのはイージス艦のあまぎ、かつらぎ、くらま。またその外側に潜水艦のうんりゅう、えんりゅうがいるという艦隊である。
「両舷、前進微速。これより遠洋航海に出る。総員帽振れ!」
乗員全員の帽子が振られる。この先あんなことが起こるとは知らずに…。