パラレルワールド
…この世界は史実通り進んだ訳ではないようだ。今更気付いた。戦艦加賀がいるのだ。巡洋戦艦天城がいるのだ。あの軍縮条約で殆どを廃棄したはずの八八艦隊の殆どがいるのだ。ということは、こちらの日本は大分経済発展を遂げているのだろう。しかし、これは、マズイ。航空主兵へ移行しようとしているのにこれはマズイ。無用の長物になってしまう。
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「長官、ここは我々が住んでいた時間軸とズレているようです。」
「?例えば?」
「八八艦隊です。我々が住んでいた時間軸ではワシントン及びロンドン軍縮条約で廃棄されたはずでした。」
「ワシントン軍縮条約?知らんな…、あっ!もしや、ニューヨークで軍縮条約があったが、それに近いものなのか?」
「そのニューヨーク軍縮条約というのはどのようなものなんですか?」
「主力艦…、まあ、戦艦だな。それの保有を少しだけ制限するものだったよ。本当に少しだけだったが…。」
「我々が住んでいた時間軸では、対米七割を迫られ、仕方なくそうしました。そして、軍縮条約の理由は第一次世界大戦でイギリスが疲弊したためだったのですが…」
「第一次世界大戦?知らんな。まだ世界大戦とやらは起こっていないぞ。」
「はあ…。あ、史料を持ってきました故、これもご覧ください。取り敢えず一旦艦に戻ります。」
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これはマズイ。何回も言うが、これは非常にマズイ。は号作戦を変えねばならんようになってしまった…。取り敢えず砲術長達を呼んで作戦名と内容をきめなければ。
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やっと大体がまとまった。
・覇号作戦概要
一、潜水艦より発艦した潜水艇による先制雷撃。
二、大和、利根、筑摩以下小型空母よりなる偵察部隊にて偵察。
三、正規空母(主に蒼龍・飛龍)にて先制雷撃・爆撃。
四(追加)、日本海軍が誇る戦艦にてオアフ島を焦土と化させる。
五(改変)、抵抗が見られなくなるまで砲撃を続け、抵抗が無くなればオアフ島を占領する。
六、擱座した米戦艦の引き揚げ、改修。この為、工作艦及び補給艦・タンカーは必須である。
…長々と書いたが、簡単に言えばハワイを奇襲して占領するという簡単な作戦である。また、こちらの世界では大艦巨砲主義が色濃く残り、疑いの目なぞ全くかけられていなかった(一部各国将校を除く)。その為、世界最大の砲だと言われていた46cm砲は既に開発済み。大和に搭載する砲も51cm砲となっていた。大和の話が出たついで、スペックを紹介しておこう。
全長:263m、全幅:38.9m
主砲:51cm連装砲、二基四門
副砲:無し
搭載機数:40機
この40機というのは大きい。下手をすれば軽空母の搭載数さえも超える数である。
今は昭和13年。いつになれば完成するのか。
ちなみにこの時、先の時代でいう翔鶴型、こちらでいう宝鶴型正規空母も建造は佳境に入った。現在は二番艦までが進水、三番艦は起工完了、四番艦は様子見である。
また、我々が助言したことによって護衛空母や防空駆逐艦の開発もどんどん進んでいった。事はうまく運んでいると思っていた中、その事件は起こった。