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ハルハニズム~この秋雨を忘れない~  作者: 幕滝
向き合う勇気はあるか?
18/45

8.[12月3日]終?

前回の続き。


[注意]この章では作者の偏見や思い込みが含まれた描写が多数あります。気分を悪くされる方がいるかもしれません。それを承知の上で、お読みください。



十一月に坂月高校に転校してきた関西弁の少女・吉槻。花川春樹は彼女と遭遇した不愉快な悪戯の犯人を追う。

一方、水城悠貴は真鈴が複数の女子生徒から攻撃されている事実を知る。問題解決に向け、彼は行動する。

・水城悠貴*長身で余裕があるように見えるが気弱な一面も。

SIDE 水城



 十二月に入ったある日。

「帰り道の買い食いは駄目だって言ってありませんでしたっけ?」

 そう真鈴ますずがおどけた調子で言う。水城みずきは「そんなこと言わないでよ」と笑って返した。

 いつか水城、真鈴、井口いぐちで来たファストフード店の二階にいた。前回と違うのは、三人ではなく、水城と真鈴のふたりだけだということである。帰り道、ひとりで歩いている真鈴と遭遇した。水城が井口と手を組むようになってから、何度か真鈴とメールでやりとりをしていたが、思い返せばこうやって水城が真鈴と直接話したのは久しぶりだ。少し話したいこともあり、水城のほうから寄り道に誘ったのだ。

 それぞれのアップルパイとジュースを挟んで、ふたりは窓際の席に座っている。大きく切り取られた窓の外に目をやれば、通行人がちらほらと見える。同じように制服を着ているひとも多い。

 外の風景から目を離して、水城は真鈴を見た。

「それはそうと、最近はどうだい。色々と」

 真鈴はアップルパイの包装を解きながら、ひとりごちるように言う。

「随分抽象的な質問だねえ……。そうだね」

 口元にパイを運んで静止する。真鈴の目が宙をさまよっている。

「まあまあ、かなあ。楽しくやってるよ。三週間前よりはずっと」

 真鈴がアップルパイをかじる。その言葉に嘘はなさそうだと水城は感じた。水城が真鈴に訊きたいこと――それは真鈴が今もキリタニら女子グループのターゲットになっているのか、である。

 自分の唇を舐める。真面目そうなトーンの声を作る。

「単刀直入に聞いていい?」

 相手は首を傾げて、水城の言葉を待っている。

「あれから、キリタニに何かされたりはしてない?」

 自分の心拍数が急上昇したのを感じる。真鈴が口を開くのを待つ。

 間を置くことなく、真鈴は顔に笑みを浮かべた。

「全くないよ。二週間前からぱったりとなくなった。……心配していてくれたんだね。ありがとうございます」

 虚言ではないようだが、念を押しておく。

「本当? もし、また誰にも言うなと脅されているのだとしても、こっそり教えてよ」

「ありがとう。でも、水城くんが心配しているようなことはなにもないよ。たぶん、これからもね。みんなのおかげだよ。

 ……まあ、キリタニさんたちとすれ違うときはちょっと怖いけど」

 一点の陰りのない表情に、水城は胸を撫で下ろす。――よかった! ほとんど僕はなにもしていないが、それでも、真鈴さんの力になることができた!

「ところでさ」

 真鈴が楽しげに話題を切り替えた。

 彼女の話に受け答えしながら、水城は井口との約束通り、もうすぐ真鈴から離れないといけないんだな、と考えていた。

続きます。

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