誕生
嶋谷瑠菜は優しい家庭に産まれた。
瑠菜の元気な産声は家族を安心させた。
『僕に似てるな、可愛くなるな』
まだしわしわの瑠菜をみて父が言うと家族はみんなして笑った。
雲ひとつなく晴れた穏やかな日だった。
翌日、看護師が瑠菜の異変に気づいた。
『赤ちゃんちょっと顔色よくないなぁ。体も冷たいし、先生に診てもらってきますね。』
看護師はそのまま瑠菜を連れていった。
しばらくし、医師が母親の所へ来た。
『お子さんは心臓に病気があります。』
母親は医師の言葉に驚きを隠せなかった。
『あんなに、元気に産まれたのに?
どうなるんですか?』
母親は震える声で話す。
『心臓病と言っても、すぐ命に関わるものではありません。今は少しの間NICUで預かりますが数週間で退院できます。体の成長をみて手術を考えていきます。』
医師の説明で母親は少し安心したが、不安は大きかった。
それから2週間後瑠菜は、退院した。
『瑠菜ちゃん、こっちむいてー』
瑠菜の両親も5つ離れた兄も
同居する祖父母も瑠菜の退院を喜び
みんなで瑠菜を可愛がった。
一週間後、瑠菜は検診のため病院を受診した。
医師に聴診器を当てられると号泣し
とても心臓病とは思えないくらい
元気に泣いている。
診察を終えた医師は母親ににこやかに話す。
『瑠菜ちゃんは、すぐに手術をする必要はありません。3才になったら、心臓カテーテル検査をします。その検査結果で手術を進めましょう。それまでは、とりあえず1才になるまでは3ヶ月に一度の検診を受けて、問題なければ1才からは半年に一度見せて下さい。』
母親は不安を隠せないが、少し安心した。
『日常生活で気をつけることはありますか?』
『そうですねぇ、ミルクのあげすぎは心臓に負担をかけるので気をつけてもらうのと…といっても普通にしてもらって大丈夫ですよ。顔色が悪いとかぐったりしてるとかあれば連れて来て下さいね。』
瑠菜は泣きつかれたのかすやすや眠りだした。
母親は瑠菜の寝顔をみて微笑む。