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廃墟、それ以外言い表すことのできない辺り一面の瓦礫。
なんとか家屋の形をとどめているものも散見されるが、そこで暮らすことのできる状態ではない。
そんな場所に彼は暮らしている。
彼の暮らす場所には名前が無い、場所だけではなく建物や人名すらも呼ばれることがない。それは呼ばれないのではなく呼ぶことができない、つまり誰も覚えていないのだ。
それゆえ彼に名前は無い、暮らす区域の中での識別の為の呼び名以外には。
彼はE-5と呼ばれている。その区域で一番酷い扱いを受けている。
「無能者」と呼ばれるものの中でも識別の為に格付けがされている。
主にS,A,B,C,D,Eの6段階に分かれていて、その後ろにつくのは数が多いことで識別を安易化するための数字である。
彼は災厄が起こった当初からこの地域にいた。
その当時はまだ幼く言葉もまともには話せていなかった。
彼の父は彼が産まれてすぐに事故で亡くなっている、彼の母は災厄ときに魔物に襲われ喰われた。
彼は悲しみに暮れながらも、周りの人と協力して今まで生きてこれた。
そして、この後大きく生活基準が変化することとなる。
やっとのことで維持できていた生活圏に数人の余所者が入ってきたのであった。
余所者は当初その場の生活レベルを上げる為に指揮をとらせてほしいと申し出た。
その場にいた大人達は諸手を上げて喜んだ、今まではうろ覚えの知識での食糧栽培や長期保存できる数少ない食料品で食いつないできていたからだ。
彼やその他にいた子ども達は疑問を抱いていた、自分達の生活圏を出てまで周りを助けようとするのは賢人と呼ばれていた少数の人で、その彼らはもういないのではないのかと。
実際に子ども達の懸念は正しかったのだ。
余所者達は自分達が満足できる環境を欲していただけなのである。
自らが満足できる環境を作り、周りにいるものを無理やりにでも従わせ、格付けをして争わせたのであった。
その結果が6段階の格付けによる環境の変化であった。
彼は必死だった、親が残してくれた命を無駄にしない為に。
彼は足掻いた、酷い環境に苛まれながらも生きていく為に。
そして、その時が来たのである。
思いつきや勢いで書いているので更新ペースはまちまちですし、内容もまとまっていなかったりします。
それでもよろしければ今後もよろしくお願いします。