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ふゆのさくら  作者: 舞桜
第二章
10/24

04報告

「ふぅーーーーーん。じゃあ、とりあえずは、一見落着か?」

「た、たぶん?」

「良かったやん、佑奈!」

 二人がやっと予定があい、こうして再び会えるようになったのは、佑奈が翔と付き合いだして、一か月が経とうとしている頃だった。

「どっか行ったり、したんか?」

「まぁ……。花火大会とか、カラオケとか、普通にショッピングとか?」

「おぉおぉ、ええ感じやん」

「でも、まだ良く分からない。〝猫〟を待ってるのに、翔が好き……なのか」

「急ぐなって。これから、これから!」

「うん……」

「分からんまま進むんがええんやろ! 答えが分かってる数学の問題解くほどおもろいもんはないで」

「さすが理系のれいさんからの進言。できれば、文系で例えてほしかったかな、数学と言う文字すら嫌悪感を感じる私としては」

 数学も楽しいのに、と返すはる。

 どこまでいっても、趣味は合わない。

「で、次はいつ会うん?」

「ん……。それが……」

 佑奈が決まりの悪そうに言葉をにごす。

 ん? と聞き返すれいから少し、目をそらし、ごにょごにょと何かを口にした。

「え? なんやて?」

「翔の……その……」

「翔の?」

「家族ぐるみの海に、ね?」

「海に?」

「ついていくことになっちゃった」

「………………………………………はい?」

 れいが、い、の口のまま固まってしまった。

 実は、と話し始めた佑奈の話は、つい三日前の話だった。



           



「佑奈、明日なんかある?」

「あ、バイト!」

「どこで?」

「んっとね、○△市のくそでかいショッピングセンター!」

「……え、まじで?」

「へ? なんで?」

「俺も、そこでバイトしてる」

「ま、まじで!?」

 家でしかネットに繋がらないタブレットで、なんとかLINEをしている佑奈は、最近は文字がうつのがめんどくさくなって、無料電話をするようになっていた。

「何時までバイト?」

「14時かな」

「俺んち、そこから徒歩5分くらいのとこなんだ。よかったら、来ないか?」

「うへぇい、まじで」

「いや、まぁ正式にいうと、俺が可愛い彼女できたって連呼してたら、つれてこいっておかんがさぁ」

「なんでー!?」

「ま、そんなわけだから、きたら?」

「さらっと言わないで!」

 大丈夫、おもろいおかんやから、と言いくるめられ、結局バイト終わりに家に寄ることになってしまった。

「うひょひょひょ、私恐ろしくヘタレなのに、会話なんてできるのかな」

 翌日のバイトにも身が入らない。

 もういっそずっとバイトが終らなければいいのに、と願いながら、刻々と進む時計を見ては、やりきれないため息をついた。

「――あ、佑奈、こっちこっち」

 そんな願いもかなうはずもなく、よろよろと事務所を出たところに、翔はいた。

 さすが、同じ店内で働く従業員。

 どこがどうつながっているのか、知っている。

「ねぇ、ほんとに行くの?」

「もう来るって言ってきてるしな」

 うぅ、と唸りつつも、翔の後をついていく。

 細い道を通って大通りにでると、そのまま突き進んで住宅街へと入っていく。

 左に三回曲がってすぐの所に、見慣れた翔のチャリが止まっているのを見つけた。

「うぁあ、本当にきちゃった」

 佑奈はもう一度鏡で、身だしなみを整える。

 と、いっても長時間のバイトでぺったんこになり、変な方向にくせがついしまっている髪はなかなか治らない。

「大丈夫だ、髪がぼさぼさでも佑奈は可愛い」

「可愛くないから困ってるのぉ!」

 知らないところで勝手にハードルを上げよって、と翔を睨む。

 当の本人の翔は、何が面白いのか笑いながら悪かった悪かったと言いつつ、玄関のドアをあけた。

「ただいまぁ」

「お、お邪魔します……」

 家に入ると同時に、翔と同じ香りが漂ってくる。

 あぁ、本当に翔の家なんだと実感した瞬間だった。

「ほら、佑奈、いくぞ」

「ちょ、ちょちょちょまっ……」

 玄関を入ってすぐ左にあった、おそらくリビングに繋がっているのであろうドアを翔があける。

「おかえり、兄さん」

「ただいま」

「あ、帰った? 翔。例の子は?」

「ここにいるよ」

 翔の影に隠れるように後ろへ下がった、佑奈の背中がぐっと押される。

 前を覆うものがなくなった佑奈は、あわてて頭をさげた。

「お、おじゃまします!」

「そんな固くならんでいいのに。ほら、もっと前行ってくれるか。ドアが閉めれない」

「う、ご、ごめん」

 翔に肩を押され、一歩、二歩前に出て、そろっと顔をあげる。

 ソファーに翔の両親らしき大人が二人と、食卓のところに佑奈より少し幼い女の子が一人いた。

「あぁ、なるほどな可愛いな」

 ソファーに座っていたパパさんらしき人が、ふむふむと首を縦にゆらし、

「あ、母さんこの子好きだわ」

 その横に座るママさんが、じっと佑奈を見ながら呟き、

「兄さんがお世話になってます、中学二年の彩です」

 翔と良く似た笑顔でほほ笑んでいた。



           



「……で、気付いたら明後日から行く日帰り海プチ旅行についていくことになった」

「いやいやいや、全然伝わらないんやけど!?」

 そんなこと言われても、佑奈自身、なんて説明したらいいのか分からない。

「とりあえずゆっくり座り、と言われ、座って」

「ほぉほぉ」

「そういえば、いつかの二日間、海行ってて俺いないからって翔が言いだして」

「ふむ」

「母さん、この子気に入ったから、べつに一緒に行ってもいいよってママさんが」

「……うん。なるほどね、で片付けたらアカン気がするけど、そういうことにしとくわ」

「そうして。私も良く分からない」

「佑奈の母さんはいいって言ってるん?」

「うちの母さんが、そんなことにいちいち駄目って言ってくると思う?」

「思わん」

 即答だった。

 佑奈が母に相談した時に、行って来れば、と返されたときと同じくらい早かった。

「まぁ、そんなわけで、行ってくるわぁ海」

「おう、いってらっしゃい海」

 頑張れ、と肩を叩かれ、あい、と返す。

 その後は一しきり、話し終わると、また報告することを約束して解散した。


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