おままごと
可愛がっていたお人形のパーツをなくし、夜中にこっそり『パパの指』や『ママのお耳』を切り取って縫い合わせる。
今度は『足の指』その次は『二人から一つずつのおめめ』
全部のパーツを交換したら、完璧なお人形が出来上がるのよ。
パパもママも亡くなったのは二十年も前、剥製の作り方を知っていた私はただ一つ、おめめだけはできなかった。
三十年以上前から引き籠っていた私は、パパとママをお人形の上で復活させる。
そう決めた。
だから新鮮なおめめだったら、可能なんじゃないかと思ったんだ。
目が覚めるとそこは見たことのない広い部屋だった。
私は口に猿轡をかまされ、隣に杏子がいることに気づき絶望した。
二人とも、後ろ手に結束バンドで縛られ。
両足も同じく縛られていた。
部屋全体の窓が分厚い遮光カーテンで閉ざされ、薄暗かった。
薄暗い部屋のその一番奥に二つの人形のようなものが見えた。
部屋全体は何かが腐ったような強烈なにおいがして、私は思わず口から息を吸おうとして、猿轡をかまされていたことに気づき、絶望した。
体をゆすり杏子にぶつかって目を覚まさせた。
杏子はとても驚いていたが、私が顎で人形を指すと、はっと息を飲み、こくこくと頷きあうと、人形の方に芋虫のように這って少しずつ近づいて行った。
亀の歩みのようにじりじりと、広い部屋の端から端まで何時間だっただろう。
途中で休憩を挟みながらといえど、杏子は途中で体力が尽きたのか何度も動けなくなった。
かと言う私も手足を拘束されているのだからちっとも動けない。
杏子と同じく何度も途中で動けなくなった。
せめて水分でも……と思ったが。
そんなものはどこにもない。
もう少しで人形に近づくというところで、「きゃはははは」と笑い声が聞こえた。
ぱっと振り返るとそこには私たちを襲った醜く汚い女のような生物がいた。
その生き物は大きく、年は四十を超えているだろう。
きょろきょろと目玉を動かしながらこちらに少しずつ近づいてきた。
悪臭が漂ってくる。
あれに襲われた時、私達はBARにいた。
あちらのお客さんからと言われて、ありがとうございますと言い飲んだその後からすごく眠たくなってきて、気づくとここにいた。
「あの男はどこだ」と聞きたいこちらの気持ちを察したかのように。
「あれは雇った男よ」と答えが返ってきた。
そこからあれは喋りだした、自分が引き篭っていたこと、引き篭っていた間に、独学で剥製の作り方を学んだこと。
パパとママをお人形さんにするために一つ一つパーツを取っていったこと。
二体の人形が完成まであと一歩なこと。
完成したら二体のお人形を使っておままごとをすること。
目をきらきら輝かせながら語るその姿は、まるで化け物の様だった。
「でね、あなた達の目が欲しいの、新鮮な目をつけてあげれば、きっと綺麗になるわ」
私達は猿轡の下でうー!だとかああああだとか呻いていた。
その見た目とは裏腹に、少女のような声をしたそいつは「きゃはははは」と笑っていた。
手にはなにかスプーンに似た器具を持っている、その器具を振りかざすと、私の左目をぐるりとくり抜いた。
「ううううううううう」くぐもった声しか出せないが、その痛みは筆舌に尽くし難いものだった。
「安心して?色んな動物で実験してきたから、完璧よ?後でちゃあんと殺してあげるし」
次は杏子だ、順番に一つずつくり抜く気だ。
芋虫のような姿じゃ助けることもできない。
「ああああああああ」
杏子の声が聞こえる、聞こえても何も出来ない自分が情けなくて涙が出てくる。
そのまま私達は両目をくり抜かれて何も見えなくなった。
「ふんふうん、可愛い綺麗で新鮮なおめめ」パパとママにつけてあげるからね。
ぶちゅっ。
私達の目玉を潰しだした。
「なんでなのよ!」
「はははは、剥製を学んだんなら知ってるだろう、目玉はガラスアイが一番それっぽく見えるんだよ」
私達の目が新しく生え出した。
私達はクルペダ星人だ。
私達を生け贄に選んだのが一番の間違いだったようだな。
たまたま観光に来ていた地球で、こんな目に合うとは思ってもいなかったが、今回の旅のお土産はあの奇妙な人形にしよう。
この人間はもちろん処分する。




