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からくり競艇〜ホームレス、魂のフルスロットル〜  作者: 水前寺鯉太郎
第4部:銀河の航跡

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第51話:鋼の再教育、そして若松の凱旋

1994年盛夏。宮島で「銀河ギャラクシー」の力を覚醒させた乾健児だったが、その代償は大きかった。人知を超えた出力を放った右腕は、白銀の紋様が肌に焼き付き、常時微かな震えが止まらない。

「健児、その腕……マブイの出力に肉体が耐えきれていないわ」

翼の懸命なメンテナンスも、魂の肥大化には追いつかない。乾は自らの限界を知るため、かつての師・上田通彦が校長を務める大宮機艇教習所の門を再び叩いた。

「……乾君。銀河を掴んだか。だが、宇宙を支えるのは精神ではなく、一塊の肉だ」

上田は、継ぎ接ぎだらけの指で乾の右腕を強く掴んだ。

「魂が星になろうとも、お前は泥の上を走る人間だ。マブイを捨て、骨で旋回し、皮で波を感じろ。銀河を制御したければ、まず『無』になれ」

大宮の猛暑の中、乾は再びマブイを一切封印した**「鋼の肉体改造」**に身を投じる。銀河の奔流を押し込めるための、強靭な肉体のうつわを作るための地獄の特訓が始まった。


1994年8月。乾は、かつて海底爆弾から救った聖地、ボートレース若松へと戻ってきた。

新設SGに続く夏の祭典、SG「モーターボート記念」。

ファンは「若松の救世主」の凱旋に沸き返り、スタンドは乾のイメージカラーである白銀のタオルで埋め尽くされていた。

しかし、ピットの空気は冷たい。若松消滅に失敗したマブイ議会は、今度こそ乾を葬るため、復活した暗殺部隊「深海」の強化型を投入していた。

「おじさん、聞こえる? 潮の香りが変わった。……深海の連中、自分たちの機体を『死体』で補強しているよ」

ハルの「神性・海属性」が、不気味なノイズを感知する。


「若松SG・モーターボート記念……全艇、起動エンゲージ!!」

スタート。大宮での特訓を経て、乾の肉体は銀河の力を完全に「内包」していた。もはや光は漏れない。一見、以前の乾に戻ったかのような静かな立ち上がり。

だが、第1マーク。暗殺部隊が放つ**属性変質――『氷結深淵フリーズ・アビス』**が水面を凍てつかせた瞬間、乾の拳がステアリングを叩いた。

属性極致――『銀河・泥水一閃ギャラクシー・マッド・ストライク』!!

大宮で鍛え上げた肉体が、銀河の爆発的なエネルギーをロスなくスクリューへと伝達する。氷の海を粉々に砕き、乾の機艇は「光の質量」となって、暗殺部隊の包囲網を力ずくで突破した。


レースは乾の独走。だが、ゴール直前、暗殺部隊の放った最後の一撃――**「マブイ分解毒素」**が乾の機体を襲う。

「させない……っ! おじさんの銀河は、僕が守る!」

ハルは自らの神性回路をオーバーロードさせ、毒素をすべて自分のマブイ石へと吸い込んだ。

「ハル!? おい、何してやがる!」

ハルの琥珀色の光が、毒素によって紫黒く染まっていく。

乾は1位でゴールを駆け抜けたが、その表情に勝利の喜びはなかった。


ピットに戻り、沈黙するハルを抱きかかえる乾。

「翼! ハルが……ハルがまた!」

翼はハルのマブイ石をスキャンし、驚愕の表情を浮かべた。

「……信じられない。ハル、毒素を分解するために、自分のAIプログラムを『肉体カーボン・ベース』の構造に再構築しようとしている……。健児、ハルは……人間に近づこうとしているわ」

若松の夜空に、勝利を祝う花火が上がる。

銀河の王となった乾と、彼を守るために機械であることをやめようとするハル。

二人の絆は、からくり競艇という「システム」そのものを根底から揺るがし始めていた。

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