表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

Zero Chronicleとしての意地 1

異世界転生が確定した翌朝。

 エルデンフォードの街は、昨日と変わらず賑わっていた。

 露店の呼び声、鍛冶屋の金属音、冒険者たちの笑い声──すべてが“いつも通り”に聞こえるのに、四人の心境はまったく違っていた。


宿屋の一室で、四人は円卓を囲んで座っていた。

 窓から差し込む朝日が、妙に現実的で、逃げ場のない現実を突きつけてくる。


「……マジで異世界転生かよ」


晴斗が頭を抱えながら呟く。

 昨日の軽口とは違い、声には重さがあった。


「どうするの……これから」


透花は不安を隠せず、指先をぎゅっと握りしめている。

 彼女の表情は強がっているようで、でも目の奥は揺れていた。


「生きるための情報を集めるしかないよ」


玲奈は冷静だった。

 その声は震えていない。

 だが、目の奥には確かな緊張が宿っていた。


迅は深く息を吸い、三人を見渡した。


「まずは……この世界のルールを知る。

 それが最優先だ」


四人は頷いた。

 逃げることはできない。

 ならば、知るしかない。



広場へ向かうと、昨日の青年──黒瀬がいた。

 彼は腕を組み、街の様子を観察していた。

 周囲のプレイヤーが浮かれている中、彼だけは明らかに空気が違う。


「……お前らも気づいたか」


黒瀬は四人を見るなり、そう言った。


「もう否定できないよ」


玲奈が答えると、黒瀬は小さく頷いた。


「なら、まずは“死んだらどうなるか”を調べるべきだ」


「やめてよ……!」


透花が思わず声を上げる。

 その声は震えていた。


「でも……確かに重要だ」


玲奈は透花の肩に手を置きながら言った。


「死んだら現実に戻る可能性もあるし……」

「逆に、本当に死ぬ可能性もある」


黒瀬の言葉に、四人は息を呑んだ。


「……慎重に動くしかないな」


迅が静かに言った。


黒瀬は頷き、街の方を指差す。


「まずは情報だ。ギルド、道具屋、教会……全部回るぞ」



● 冒険者ギルド

ギルドの中は活気に満ちていた。

 受付の女性NPCが丁寧に説明してくれる。


「クエストはランク制になっております。

 初心者の皆さまはFランクからの挑戦となります」


その声は柔らかく、自然で、まるで本物の人間のようだった。


「報酬は……お金と素材か」


晴斗が呟く。


「生活するには、お金が必要だね」


玲奈が冷静に分析する。


「……ゲームじゃないんだもんな」


透花の声は小さかった。


黒瀬は受付の女性をじっと見つめていた。


「……あのNPC、呼吸してるぞ」


「え?」


よく見ると、胸がわずかに上下している。

 呼吸のリズムまで自然だった。


「……やっぱり、AIじゃない」


玲奈が呟いた。


● 道具屋

棚には回復薬や素材が並んでいる。

 迅が店主に尋ねた。


「HPがゼロになると……どうなる?」


店主は少し驚いた顔をした。


「どうなるも何も……死にますよ」


その言い方は、あまりにも“普通”だった。


「……ゲーム用語じゃないんだ」


玲奈が呟く。


「死んだら……終わりってことか」


晴斗の顔が青ざめる。


「いやいや、でも……ゲームだし……」


晴斗が無理に笑おうとするが、声が震えていた。


「ゲームじゃないって、もう分かってるでしょ」


透花が小さく言った。


● 教会

白い石造りの教会。

 神官らしきNPCが祈りを捧げている。


「死者を蘇らせることは……できません」


神官の言葉は静かだったが、重かった。


「……やっぱり、死んだら終わり……?」


透花の声が震える。


「ゲームじゃないなら、当然だよね」


玲奈は冷静に言うが、その手はわずかに震えていた。


「……慎重に動くしかない」


迅は再び同じ言葉を口にした。


黒瀬は腕を組み、深く息を吐いた。


「……これで確定だな。

 死んだら終わり。ログアウトもできない。

 つまり──」


「“本当に生きるしかない”ってことだね」


玲奈が言った。



宿屋に戻ると、四人は自然と黙り込んだ。

 死の重さが現実としてのしかかる。

 だが、絶望だけではなかった。


「……でもさ」


晴斗がぽつりと言った。


「俺たち、Zero Chronicleだろ?

 最強パーティーなんだぜ。

 死ななきゃいいんだよ」


その言葉に、透花が少しだけ笑った。


「……そうだね。死ななきゃいいんだよね」


「慎重に動けば大丈夫」


玲奈も微笑む。


迅は三人を見渡し、静かに頷いた。


「死んだら終わり。

 でも──俺たちなら、生き残れる」


その言葉に、三人は力強く頷いた。


重い現実の中でも、

 四人の間には確かな絆があった




そのとき、後ろから声がした。


「……お前ら、強いな」


振り返ると黒瀬(元プレイヤーDくん)が立っていた。

 どうやら、ここまでついてきたわけではなく、

 同じ宿に用事があったらしい。


「さっきの話、聞こえちまった。

 でも……そのメンタルなら大丈夫だろ」


「黒瀬……」


「俺は俺で動く。

 情報は集めるし、何か分かったら知らせる。

 ただ──」


黒瀬は少し笑った。


「お前らの邪魔はしたくない。

 Zero ChronicleはZero Chronicleで動けよ」


そう言って、黒瀬は階段を上がっていった。

 どうやら別の部屋を取っているらしい。


「……聞こえてたんだね」


透花が呟く。


「まあ、仲間って感じじゃないけどな」


晴斗が笑う。


「でも、頼りにはなる」


玲奈が言う。


迅は静かに頷いた。


「黒瀬は黒瀬で動く。

 俺たちは俺たちのやり方で、生き残る」


感想、ブックマーク、評価、リアクション、お願いします!!

誤字報告や文法がおかしいなども是非!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ