表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

異世界転生?

エルデンフォードの街門をくぐった瞬間、四人は思わず足を止めた。


「……人、多っ!!」


晴斗が叫ぶ。

 その声に、透花と玲奈も同時に目を見開いた。


「え、ちょっと……リリース初日だよね?」

「こんなにプレイヤーいるの……?」


街の中は、まるで祭りのような賑わいだった。

 石畳の通りにはプレイヤーがひしめき合い、露店の前には行列ができている。

 広場ではすでにパーティ募集の声が飛び交い、鍛冶屋の前では武器を振り回して試し斬りをしている者までいる。


「事前登録1000万って言ってたけど……」

「それにしても多すぎない?」

「……まあ、人気なんだろ」


迅はそう言いながらも、街の空気に圧倒されていた。

 NPCの動きが自然すぎる。

 プレイヤーとNPCの区別がつかないほど、表情も仕草もリアルだ。


まるで、本当に“街”として機能しているようだった。


「とりあえず、クエスト掲示板行ってみよっか」

「おう、序盤はクエストこなしてレベル上げだな」

「掲示板……あ、あれだね」

「行くか」


四人は人混みをかき分けながら、掲示板へ向かった。




掲示板の前には、すでに多くのプレイヤーが集まっていた。

 クエストの紙が次々と剥がされ、受注されていく。


「うわ、もうこんなにクエスト受けられてる……」

「みんな早いなぁ」

「でも、初心者向けのはまだ残ってるね」

「じゃあ、これとこれにしよう」


四人が選んだのは──


● クエスト①《森の薬草採取》

● クエスト②《迷子の子どもを探せ》


どちらも初心者向けの簡単なクエストだ。


「薬草は森の入口付近に多く生えていますよ。お気をつけて」

「うちの子を見つけてくださって、本当にありがとうございます……!」


NPCが自然に話しかけてくる。

 声の震え、表情の変化、仕草──どれも人間そのものだった。


「NPCの演技力高すぎじゃね?」

「感情表現がリアルすぎる……」

「声の震えとか、完全に人間じゃん」

「……まあ、最近のAIはすごいしな」


迅はそう言いながらも、胸の奥に小さな違和感を覚えていた。

 だが、それを深く考えるほどの不安はまだない。



クエスト①《森の薬草採取》

街を出て草原を抜け、森の入口へ向かう。

 風が吹き、草が揺れ、鳥の声が響く。


「この景色……ほんとにゲーム?」

「空気の匂いまで再現されてる気がする……」

「没入感やばいな」

「薬草は……あ、あった」


薬草は光の粒子でわずかに強調されており、採取は簡単だった。


「よし、10本集まった」

「じゃあ次、迷子の子どもだね」

「街に戻るか」

「おう」



クエスト②《迷子の子どもを探せ》

街に戻ると、子どもNPCが泣きながら歩いていた。


「お兄ちゃんたち……迷っちゃったの……」


その声は震えていて、涙の光までリアルだった。


「大丈夫、親御さんのところに連れていくよ」

「ほんと? ありがとう……!」


子どもは迅の手をぎゅっと握った。

 その温度まで感じられるような気がした。


「……すげぇな、このゲーム」

「ほんとに“触れてる”みたいだね」

「NPCの手ってこんなにリアルだったっけ……?」

「技術の進化ってすげぇわ」


四人は子どもを親のもとへ送り届け、報酬を受け取った。





「いやー、序盤でも楽しいな!」

「街戻って装備見よっか」

「その前に……ちょっと休憩しない?」

「そうだな。説明も多かったし」


四人は宿屋へ向かった。

 宿屋の中は落ち着いた雰囲気で、木の香りが漂っている。


「ここ、めっちゃ落ち着く……」

「リアルすぎて逆に怖いわ」

「じゃ、一旦ログアウトして飯食おうぜ」

「うん、そろそろ現実のほうもお腹空いた」


四人は席に座り、同時にメニューを開いた。



「……あれ?」


最初に声を上げたのは透花だった。


「設定の一部、押せなくない?」


四人が確認すると──


・音量調整

・画質設定

・UIサイズ変更

・視線操作の感度

・ジェスチャー操作のON/OFF


これらがすべてグレーアウトしていた。


「ほんとだ……なんで?」

「初日だから制限してるとか?」

「いや、でも設定系が使えないって珍しくない?」

「……まあ、ゲームによってはあるか」


迅はそう言ったが、胸の奥に小さな不安が芽生えた。



「じゃ、ログアウト……」


晴斗が言い、四人は同時にログアウトボタンに視線を向けた。


しかし──


ログアウトだけが、グレーアウトしている。


「……あれ?」

「押せない……?」

「いやいや、そんなわけ……」

「バグ……か?」


四人の表情が固まる。


晴斗「初日だしな! まあ、あるあるだろ!」

透花「……そう、だよね?」

玲奈「サポート……あれ、問い合わせも押せない?」

迅「……一旦落ち着こう」


沈黙が落ちる。


宿屋の中は静かで、外からは街の喧騒が聞こえる。

 その“普通の音”が、逆に不気味に感じられた。


「……なあ」


晴斗がぽつりと言った。


「これさ……ログアウトできないって……」


四人の視線が晴斗に向く。




「もしかして……異世界転生しちゃってるとか?」




「ちょ、やめてよそういうの!」

「でも……NPCの自然さとか、街の空気とか……」

「ゲームってレベルじゃなかったよね」

「……冗談だろ。そんなわけ──」


迅が言いかけたとき。


晴斗「でも、ログアウトできねぇんだぜ?」


誰も笑わなかった。


冗談のつもりだった。

 でも、誰も笑えなかった。


四人の間に、重い沈黙が落ちる。


「……と、とりあえず……今日は宿屋で休もう?」

「うん……明日になれば直ってるかも」

「そうだね……」

「……ああ」


四人はそれ以上何も言わず、部屋へ向かった。


ログアウトできないまま———


感想、ブックマーク、評価、リアクション、お願いします!!

誤字報告や文法がおかしいなども是非!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ