チュートリアル
視界が白い光に包まれ、次の瞬間には四人は“どこでもない場所”に立っていた。
いや、立っているというより──浮いている。
「……おおおおお!? なにこれ!!」
真っ先に声を上げたのは晴斗だった。彼の足元には床がない。けれど落ちる気配もない。
白い空間がどこまでも広がり、上下の感覚すら曖昧だ。
「浮遊感の再現……すご……」
透花が感嘆の声を漏らす。
彼女の髪がふわりと揺れ、まるで水中にいるような感覚が伝わってくる。
「VR技術、ここまで来たんだ……」
玲奈は腕を軽く振り、空気の抵抗を確かめるように動かす。
その動きに合わせて、白い粒子が淡く揺れた。
迅は周囲を見回しながら、ただ一言。
「……すげぇな」
四人が浮かぶ白い空間は、無機質なのにどこか心地よい。
音も風もないのに、不安はまったく感じない。
“ゲームのチュートリアル空間”として、完璧すぎるほどの完成度だった。
そのとき──
白い粒子が一点に集まり、淡い光の球体が現れた。
直径一メートルほどの、滑らかな光の球。
中心に淡い紋様が浮かび、ゆっくりと回転している。
『ようこそ、《CrossGate Online》へ。
これより、基本説明を開始します』
声は中性的で、どこか機械的。
だが不気味さはなく、むしろ安心感すらある。
「おお……チュートリアルAIか!」
「球体ってのがまた未来感あるね」
「説明よろしくお願いしますって感じだな」
「……こういう演出、好きだわ」
四人がそれぞれ感想を漏らすと、球体はゆっくりと回転しながら言った。
『まずは、世界の概要を説明します』
その瞬間、四人の身体がふわりと浮き上がり──
景色が一変した。
四人は、どこかの街の上空にいた。
白い空間ではなく、現実のような青空。
足元には石造りの建物が並び、中央には大きな噴水広場が見える。
「うわっ……! 街の上空!?」
「これ……全部リアルタイムで描写してるの?」
「処理能力どうなってんだ……」
「それな、すげぇ……」
球体が説明する。
『ここは、皆さまが最初に訪れる街──エルデンフォードです。
冒険者の拠点として、多くの施設が存在します』
四人は上空から街を眺めながら、まるで観光客のように感動していた。
「建物の質感やば……」
「NPCの動きも自然すぎる……」
「これ、映画じゃん……」
「いや、映画よりすげぇだろ……」
球体が再び光を放つ。
『次に、フィールドの説明を行います』
視界が切り替わり、四人は草原の上空に移動した。
風が吹き、草が揺れ、遠くには森が広がっている。
小型モンスターがのんびり歩いているのが見えた。
「お、あれ絶対序盤の雑魚だろ!」
「スライムっぽいね」
「草原の表現、リアルすぎる……」
「これ、歩くだけで楽しそう」
球体は淡々と説明を続ける。
『フィールドには多様なモンスターが存在します。
初心者は街周辺の安全地帯から探索を始めることを推奨します』
次に四人が移動したのは、巨大な洞窟の上空だった。
洞窟の入口は黒く口を開け、内部には淡い光が揺れている。
「絶対罠あるやつじゃん……」
「序盤ダンジョンでも油断できなさそう」
「この規模、初日から攻略動画出るだろ」
「俺らも行くよな?」
球体が言う。
『ダンジョンは複数階層で構成され、探索と戦闘が中心となります。
危険度は階層ごとに上昇します』
四人は頷きながら、次の説明を待った。
視界が再び白い空間に戻り、四人の周囲にスキルエフェクトが浮かび上がる。
「うわ、エフェクト綺麗すぎない?」
「これ絶対課金スキン出るやつ!」
「UIの反応速度、異常に速い……」
「スキル構成、後半伸びそうだな」
球体が言う。
『スキルは職業とレベルに応じて習得する方法と、
クエストなどの方法でも習得できます。ステータス画面をご確認ください』
四人の前に、半透明のステータスウィンドウが開いた。
ーーーーーーーーステータスーーーーーーーー
【名前】__________
【称号】__________
【レベル】1
【種族】ヒューマン
【職業】初心者【ビギナー】
【HP】50 / 50
【MP】20 / 20
【ステータス】
STR:5
VIT:5
AGI:5
INT:5
DEX:5
LUK:5
【スキル】
・なし
【装備】
・木の武器
・布の服
・なし(アクセサリ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……初期ステ、全員同じか」
「まあチュートリアルだしね」
「ここからどう伸ばすかが勝負だな」
「俺、AGI特化にしようかな」
球体が続ける。
『次に、メニュー画面の説明を行います』
その瞬間、四人の視界に半透明のウィンドウがいくつも浮かび上がった。
まるで空中にスマホ画面が並んでいるような、未来的なUIだ。
「おおっ、メニュー出た!」
「めっちゃ見やすい……」
「設定多くて覚えられるか、これ……」
「反応速度も速いな」
球体が項目を順に示すように光を放つ。
『こちらがメインメニューです。
・ステータス
・インベントリ
・クエスト
・パーティ
・システム
以上の項目から、各種操作が可能です』
「シンプルでいいね」
「ごちゃごちゃしてないの助かるわ」
「初心者でも迷わなそう」
「UIデザイン、センス良すぎない?」
「俺ぐらいセンスある」
……。
球体は続ける。
『ステータスでは、皆さまの能力値や職業、スキルを確認できます。
レベルアップ時の成長もこちらで確認可能です』
「まあここは定番だな」
「後でビルド考えるの楽しみだね」
「迅はどうするの?」
「……まだ決めてない」
『インベントリでは、所持アイテムを管理できます。
容量はレベルに応じて拡張されます』
「最初からまあまあ容量多くない?」
「これ、素材集めめっちゃ楽じゃん」
「重量制限ないの神」
「クラフト勢が喜ぶやつだな」
『クエストでは、受注中の依頼や進行状況を確認できます。
メインクエストとサブクエストに分類されています』
「管理画面めっちゃ見やすい!」
「フィルター機能あるのありがたい」
「これ絶対クエスト量多いよね」
「やり込み勢歓喜だな」
『パーティでは、仲間の状態や役割を確認できます。
パーティスキルの設定もこちらから行えます』
「お、パーティスキルあるんだ」
「連携系のやつかな?」
「機能ありすぎだな」
「Zero Chronicle で組むのは久しぶりだ」
『システムでは、ゲーム全体の設定を変更できます。
・音量調整
・画質設定
・UIサイズ変更
・視線操作の感度
・ジェスチャー操作のON/OFF
・ランキング
・掲示板
・通知設定
・アカウント情報
・サポート
以上が主な項目です』
「設定項目めっちゃ多い!」
「視線操作の感度調整できるの助かる……」
「通知オフにできるの神」
「配信者向けの設定も多いな」
球体が締めくくるように言う。
『メニューは意識するだけで開閉できます。
また、視線操作とジェスチャー操作の両方に対応しています』
「視線操作、ほんとに遅延ゼロだ……」
「ジェスチャーも自然すぎる」
「これ、現実のスマホより快適じゃね?」
「UIの完成度、やば……」
四人は完全にテンションが上がっていた。
まるで新しい世界に足を踏み入れた子どものように、
メニューを開いたり閉じたりしながら感動を共有する。
『では、最後に戦闘の基本を体験していただきます』
四人は草原の地面に降ろされ、目の前に小さなスライムが現れた。
「ちっさ!!」
「HP10くらいじゃない?」
「まあチュートリアルだし」
「これ本当に安全なの?」
「今さら?」
「いや、今だからだろ」
「迅、やってみて」
「え、俺?」
「リーダーでしょ」
「そうそう」
「頼んだ」
迅は苦笑しながら木の剣を構え、スライムに近づく。
軽く振り下ろすと──
スライムは一撃で弾け飛んだ。
「おお、倒した!」
「エフェクト綺麗!」
「操作性めっちゃいいな」
「これ、戦闘楽しいぞ」
球体が言う。
『これで基本説明は終了です。
皆さまの冒険が、素晴らしいものとなりますように』
光が四人を包み──
いや、光ったというより、
眩しさが、殴ってきた。
次の瞬間、彼らはエルデンフォードの街の入口に立っていた。
「……よし!」
「やるか!」
「冒険の始まりだね」
「楽しみすぎる……!」
四人は笑い合いながら、街へと歩き出した。
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頑張るぞー




