《CrossGate Online》
昼下がりのチャイムが鳴り終わると同時に、教室の空気が一気にゆるむ。
俺――速水迅は、椅子の背にもたれながら大きく伸びをした。
今日の放課後は特別だ。
いや、正確には“特別になる予定”だ。
理由はひとつ。
世界最大規模のVRMMO《CrossGate Online》が今日リリースされる。
「迅、帰るよー」
柔らかい声がして振り向くと、
長い黒髪を揺らしながら、白咲透花が俺の机に寄りかかっていた。
学校では“高嶺の花”扱いされてるけど、
俺にとってはただの幼なじみで、
そして――ゲーム仲間だ。
「おう。晴斗と玲奈は?」
「もう昇降口で待ってるって。今日、迅の家でやるんでしょ?」
「もちろん。あいつら、絶対もうテンション上がってるぞ」
透花がくすっと笑う。
その笑顔に、周囲の男子がちらちら視線を向けてくる。
まあ、いつものことだ。
俺たち四人は、学校では“四傑”なんて呼ばれている。
美男美女?
成績優秀?
運動もできる?
……いやいや、そんなのは全部オマケだ。
本質はただひとつ。
俺たちは、ゲーム界最強の匿名パーティー《Zero Chronicle》だ。
隠してるつもりはないんだけどな。
どのゲームでもトップランカー。
ランキングを荒らし、イベントを制覇し、
気づけば“謎の最強パーティー”としてネットで都市伝説扱いされている。
でも実際は、
ただの高校生四人が放課後に集まって遊んでるだけなんだけどな。
昇降口に向かうと、案の定うるさい声が聞こえた。
「おっそいぞ迅!今日の新作、絶対俺が一番乗りでレベル上げるからな!」
元気よく手を振ってくるのは、
俺の親友、相沢晴斗。
運動神経抜群、性格は犬。
ゲームではタンク職で、味方を守るのが異様に上手い。
その隣で腕を組んでいるのが、
クール系美少女の桐谷玲奈。
「晴斗、あんたが一番乗りとか絶対無理でしょ。
迅の家に着く前にコンビニ寄るって言い出すに決まってるし」
「おい!俺をなんだと思ってんだ!」
「犬」
「お前なぁ!」
いつもの喧嘩が始まった。
この二人、どう見ても両想いなのに、
自覚がないのか、認めないのか、
とにかくうるさい。
透花が俺の耳元で小声で言う。
「今日も仲良しだね、あの二人」
「仲良しって言うのか、あれ」
「言うよ?」
……まあ、透花が言うならそうなんだろう。
四人で歩きながら、今日のメインイベントの話題になる。
「なあ迅、今日の新作……マジでヤバいらしいぞ」
晴斗がスマホを見せてくる。
そこには“史上最大規模のVRMMO、ついに始動”の文字。
「フィールドの広さ、前作の十倍だってさ。
しかもAIが自律進化するらしい、ほんとかは分からないけどな」
「自律進化……?」
透花が興味深そうに眉を上げる。
「うん。プレイヤーの行動に合わせて、
モンスターも街も、全部が変化していくんだって」
「へぇ……面白そう」
玲奈も珍しく目を輝かせている。
俺はと言えば――
理由もなく、胃のあたりが重かった。
ワクワクなのか、
不安なのか、
それとも……別の何かか。
でもまあ、考えても仕方ない。
「よし、行くか。《Zero Chronicle》の実力、見せつけてやろうぜ」
「おー!」
「……はいはい」
「迅、張り切りすぎないでよ?」
そんな会話をしながら、俺たちは俺の家に到着した。
部屋に入ると、
四人分のVRヘッドセットが机に並んでいる。
晴斗が叫ぶ。
「うおおおお!テンション上がってきたぁぁぁ!」
玲奈が呆れたようにため息をつく。
「うるさい。近所迷惑」
透花は静かに笑って、
自分のヘッドセットを手に取った。
「迅、アバター作るの楽しみだね」
「ああ。今日の俺は……ちょっと盛るかもしれん」
「いつも盛ってるでしょ」
「おい、やめろ」
ゲームの起動画面が光を放ち、
四人の視界にキャラクリエイトのホログラムが広がった。
まるで透明な水面に触れるような感覚で、
指先を動かすたびに髪型や体格が滑らかに変化していく。
晴斗が最初に声を上げた。
「よっしゃあああ!まずは筋肉だろ筋肉!!」
画面いっぱいに、
常識を無視した巨大な胸筋と腕が表示される。
まるでファンタジー世界のバーサーカーそのものだ。
玲奈が眉をひそめる。
「またゴリラみたいなアバター作る気?」
晴斗は胸を張って、
自分のアバターの肩をぐるぐる回しながら言い返す。
「ゴリラじゃねぇ!タンクは体が資本なんだよ!」
透花は自分のアバターを見つめながら、
髪の色を淡い銀に変えたり、
目の色を少し紫がかった青にしたり、
細かい調整を繰り返していた。
「私は……現実よりちょっと大人っぽくしようかな」
その横顔は、
現実の透花よりも少しだけ大人びて見えた。
俺は思わず口にする。
「いや、現実でも十分大人っぽいだろ」
透花の指が止まり、
頬がほんのり赤くなる。
「……そ、そうかな?」
玲奈がすかさず突っ込む。
「はいはい、イチャつかない」
「イチャついてねぇよ!」
「お前ら、ログイン前からラブラブかよ!」
「黙れ犬」
「お前まで言うな!」
玲奈は自分のアバターの髪を銀色にし、
目を深い青に設定していた。
その姿は現実の彼女よりもさらに冷たく、
幻想的な雰囲気をまとっている。
「私は……クール系でいく。
髪は銀、目は青。どう?」
透花が目を輝かせる。
「玲奈ちゃん、似合いそう!」
「お前、現実でも十分クールだろ」
「……褒めてるの?」
「褒めてるよ」
「なら許す」
晴斗はというと、
筋肉スライダーを限界まで右に寄せていた。
アバターの胸囲がどんどん膨れ上がり、
ついには鎧がはち切れそうになる。
「ちょっと待て!俺の筋肉見ろよ!ほら!」
「……お前、胸囲120あるだろそれ」
「キモい」
「お前らひどくね!?」
透花は笑いながら、
自分のアバターの髪を揺らしてみたり、
表情を変えてみたりしていた。
「迅はどんなアバターにするの?」
迅は自分の画面を見つめながら答える。
「俺は……“ジンライ”でいく。
スピード特化の前衛。
髪は黒のまま、目は……金にしようかな」
金色の瞳が画面に浮かび、
アバターの表情が鋭くなる。
どこか“雷”を思わせる雰囲気だ。
「似合うと思う。迅らしい」
「厨二っぽいけど、まあ迅なら許す」
「お前ら、俺にも優しくしろよ!!」
「お前は筋肉盛りすぎなんだよ」
「タンクはこれでいいんだよ!!」
「ふふ……なんか、いつも通りだね」
「うん。こういう時間、好きだよ」
「よし、アバター完成したな。
《Zero Chronicle》、出陣準備完了ってわけだ」
「おうとも!!」
「楽しみ……!」
「……負けないよ」
四人のアバターが並んだ瞬間、
まるで“新しい物語の扉”が開いたような感覚がした。
やっと新作品始めました!!
今回はちゃんと設定も考えて、投稿していきます!!
僕の前作品を読んでくれた方も、初めましての方も、どうぞよろしくお願いします!
保険のR-15です。
長く続けたいのでいったん週一投稿していきますが、書き溜めができたりしたら、毎日投稿したりするかもしれません!
ジャンルはこれであってます、後々わかります。
是非、ブックマーク、評価、感想、誤字報告、リアクションなど、よろしくお願いします!!




