仲間からの贈り物
夕暮れの王都は、金色の光に染まりながら一日の終わりを告げていた。
ギルド前のタクシースポットで仕事を終えた俺は、シートに身を預けながら伸びをする。
(ふう……今日も一日、だいぶ走ったな)
エリア制が浸透し、馬車タクシーたちも少しずつ慣れてきた。
俺ひとりで抱えていた負担は、確実に減っている。
──そんなとき。
「修一さーん!! こっち来てくださーい!!」
リーネの声が、通りの奥から響いた。
(ん? なんだ?)
ギルド職員が慌てる声ではない。どちらかというと、ワクワクを押し殺したような声だ。
近づいてみると──
そこには、ロイク、ニコ、白樺亭の女将、マリア、そして馬車タクシー仲間たちまで勢ぞろいしていた。
「な、なんだよこの人数……?」
ロイクが照れくさそうに胸を張る。
「修一さん。今日は……あなたに見てもらいたい場所があるんです」
「場所?」
ニコが嬉しそうに手を引く。
「とりあえず来てくださいっ!」
みんなに囲まれながら歩くこと数分──
王都の外れ、ほどよく広く、見晴らしのいい土地に出た。
そこには、見たことのない建物が建っていた。
瓦屋根の事務所。
横には馬車三台とタクシー一台が余裕で停められる屋根付き車庫。
え?
「……え?」
本当に声が漏れた。
マリアが満面の笑みで言う。
「修一さん!
ここ……みんなで少しずつお金を出しあって、借りたんです!」
女将が穏やかに微笑む。
「あなたがずっと一人で頑張ってきたからねぇ。
事務所くらい必要だと思ったんだよ」
ロイクも続ける。
「王都の正式許可も出た。
なら、ちゃんと“自分たちの拠点”が必要だと思いまして」
胸が熱くなる。
言葉が出ない。
そんな俺の前に、ひょこん、と小柄な影が現れた。
「おい、修一! 聞いて驚け!!」
爆発したような髪。白衣。
もちろん──サラだ。
「世界初の通信魔道具!!
完成したぞっ!!」
彼女が掲げたのは、手のひらサイズの小さな水晶装置。
中心が淡く光っている。
「距離はまだ短いが……街中なら十分会話できる!
タクシー隊の連絡網、第1歩じゃっ!!」
「サラ……本当に……?」
「わしを誰と心得る! 天才じゃぞ!!」
ニコが目を輝かせる。
「修一さん! 試作3号機、これ!
今日から僕が“連絡係”やります!!」
ニコの手で通信装置がピカッと光った。
キーン……と澄んだ音が空に響く。
そして──装置から聞き慣れた声が。
《こちらロイク! 通信、聞こえるか?》
ニコが叫ぶ。
「やった!! 成功です!!」
ロイクの実際の声も後ろから聞こえてきた。
「いや本当、感動して泣きそうで……」
俺は──こみ上げてくる熱を、もう抑えられなかった。
(こんな……こんなすごい仲間たちに囲まれて……
俺はどれだけ恵まれてるんだ)
女将がそっと言う。
「修一さん。あなたが頑張ってきたから、みんなも応えたいんだよ」
マリアも、優しい笑顔で。
「ここから、“星見タクシー”が始まるんですよ。修一さん」
胸が熱い。
涙が、危うくこぼれそうになった。
俺は深く息を吸い、みんなの顔を見渡し──言った。
「……ありがとう。
本当に……ありがとう。
ここから、もっといいタクシーを作っていくよ」
星見タクシー。
仲間たちの想いが詰まった事務所。
そして、世界初の魔道通信機。
第一部の最後にして、最高のスタート地点を与えられた。
その夜、星空の下。
俺は静かに誓った。
ここから“星見タクシー”を本物にする。
仲間たちと、この世界のために。
――第一部 完。
ここで第一部完とさせていただきます。
第二部もただいま製作中です。
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