会社名、どうする問題
事務所候補地探しと同時に、
避けて通れない“もう一つの大問題”があった。
――会社名を決めることだ。
夕暮れの白樺亭。
いつもの飯を食べながら、俺は手元の紙を見て頭を抱えていた。
「名前……どうしような……」
そこにマリアがすっと近づく。
「修一さん、会社作るんですよね?
名前って大事ですよね!」
「だから悩んでるんだよ……」
すると厨房から顔を出した女将さんまで加わる。
「あんたの会社なら、安心できる名前がいいねぇ」
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そのとき、白樺亭にロイクとニコが飛び込んできた。
「修一さん! 名前の案、考えてきました!!」
「まずは私から!
“王都救援車隊”!!」
「救援って言葉がもう違うぞ」
ロイクも得意げに胸を張る。
「俺はこれです!
“超速! ロイク交通”!」
「お前の名前だけ大きくなるのはダメだろ」
「じゃあ“馬神タクシー”!」
「いや馬しか運ばなそうなんだが」
ニコが続ける。
「“大地を駆ける車輪たち”!」
「長い!!」
「“修一&フレンズ交通組合”!」
「某テーマパークのショーかよ!」
気づけばテーブルが名前案で埋め尽くされていた。
・絶対安全馬車隊
・走れ! 中央通り運送網
・王都タクシー同盟
・馬速ギルドリンク
・星降る夜の運送屋
・ドキドキ王都ライド便
(……カオスだな、これ)
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そこに女将さんが近づき、静かに言った。
「名前ってのはね、長く続く“看板”になるんだよ。
あんたの仕事は、ただ人を運ぶだけじゃない。
人の不安や重荷まで少し軽くしてあげる……
そんな気持ちが伝わる名前がいい」
その言葉に、ロイクもニコも黙った。
そしてマリアが、ぽつりと呟く。
「私は……“星見タクシー”っていいと思います」
「星見?」
マリアは照れくさそうに微笑む。
「修一さんって、夜にお客さんを乗せてるとき……
時々、空を見上げるじゃないですか。
あれ、私好きなんです。
なんていうか……“どこへ行っても道が見える人”って感じで」
(そんなふうに見られてたのか……)
ロイクが腕を組んで頷いた。
「星見タクシー……悪くない」
ニコは目を輝かせる。
「かわいいし、覚えやすい!!」
女将さんも笑顔になる。
「夜でも迷わないタクシー……いいじゃないの」
俺は紙に“星見タクシー”と書いてみた。
なんだろう。
胸の中にすっと馴染む。
「……これでいくか」
ロイクとニコが同時にガッツポーズした。
「ついに会社名決定ですね!!」
「やったー!!」
マリアは少し照れながら言う。
「修一さんにぴったりだと思いますよ」
(……そう言われたら、なんか嬉しいな)
こうして俺たちの会社名は――
“星見タクシー”
に決まった。
異世界の夜空の下で、
俺たちは静かに、けれど確かに一歩前へ進んだ。




