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【第一部完】『異世界タクシーは今日も営業中!〜乗せた相手の悩みが少しだけ軽くなる車〜』  作者: 済美 凛


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会社名、どうする問題

事務所候補地探しと同時に、

避けて通れない“もう一つの大問題”があった。


――会社名を決めることだ。


夕暮れの白樺亭。

いつもの飯を食べながら、俺は手元の紙を見て頭を抱えていた。


「名前……どうしような……」


そこにマリアがすっと近づく。


「修一さん、会社作るんですよね?

 名前って大事ですよね!」


「だから悩んでるんだよ……」


すると厨房から顔を出した女将さんまで加わる。


「あんたの会社なら、安心できる名前がいいねぇ」



---


そのとき、白樺亭にロイクとニコが飛び込んできた。


「修一さん! 名前の案、考えてきました!!」


「まずは私から!

 “王都救援車隊おうときゅうえんしゃたい”!!」


「救援って言葉がもう違うぞ」


ロイクも得意げに胸を張る。


「俺はこれです!

 “超速! ロイク交通”!」


「お前の名前だけ大きくなるのはダメだろ」


「じゃあ“馬神ばしんタクシー”!」


「いや馬しか運ばなそうなんだが」


ニコが続ける。


「“大地を駆ける車輪たち”!」


「長い!!」


「“修一&フレンズ交通組合”!」


「某テーマパークのショーかよ!」


気づけばテーブルが名前案で埋め尽くされていた。


・絶対安全馬車隊

・走れ! 中央通り運送網

・王都タクシー同盟

・馬速ギルドリンク

・星降る夜の運送屋

・ドキドキ王都ライド便


(……カオスだな、これ)



---


そこに女将さんが近づき、静かに言った。


「名前ってのはね、長く続く“看板”になるんだよ。

 あんたの仕事は、ただ人を運ぶだけじゃない。

 人の不安や重荷まで少し軽くしてあげる……

 そんな気持ちが伝わる名前がいい」


その言葉に、ロイクもニコも黙った。


そしてマリアが、ぽつりと呟く。


「私は……“星見タクシー”っていいと思います」


「星見?」


マリアは照れくさそうに微笑む。


「修一さんって、夜にお客さんを乗せてるとき……

 時々、空を見上げるじゃないですか。

 あれ、私好きなんです。

 なんていうか……“どこへ行っても道が見える人”って感じで」


(そんなふうに見られてたのか……)


ロイクが腕を組んで頷いた。


「星見タクシー……悪くない」


ニコは目を輝かせる。


「かわいいし、覚えやすい!!」


女将さんも笑顔になる。


「夜でも迷わないタクシー……いいじゃないの」


俺は紙に“星見タクシー”と書いてみた。


なんだろう。

胸の中にすっと馴染む。


「……これでいくか」


ロイクとニコが同時にガッツポーズした。


「ついに会社名決定ですね!!」


「やったー!!」


マリアは少し照れながら言う。


「修一さんにぴったりだと思いますよ」


(……そう言われたら、なんか嬉しいな)


こうして俺たちの会社名は――


“星見タクシー”


に決まった。


異世界の夜空の下で、

俺たちは静かに、けれど確かに一歩前へ進んだ。


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