事務所を探し始める日
王都から正式認可が下りた翌日。
俺はタクシーを止め、街区図を片手にうーんとうなっていた。
(会社を作るって……どこを拠点にするんだ?)
王都は広い。
ギルド前、中央通り、商業区、転移装置前……
タクシー需要がある場所は多いが、
“会社としての事務所”となると話は別だ。
そんなことを考えていると、背後から声がした。
「修一さーん!」
ロイクとニコが駆け寄ってきた。
「昨日の許可……本当にすごいことですよ!」
「これからは会社として動くんですし、まずは事務所ですよね!」
「それなんだよ……どうしたもんかなって」
俺が地図を見せると、ニコがクイッと指を指した。
「ここ、ダメですか?
ギルド前からも近いし、中央広場にも歩いて行けます!」
ロイクも頷く。
「確かにいい場所だが……家賃、高そうだな」
(そこなんだよな……)
事務所を借りるには費用がかかる。
馬車を置く場所も確保しなきゃならない。
修理場、保管スペース、みんなの休憩室だって必要だ。
一人で抱えるには重すぎる問題ばかりだ。
「うーん……もう少し候補を見てまわるか……」
そんなとき。
「修一さん」
振り返ると――リーネが立っていた。
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「ギルドのほうでも相談があって来ました」
「相談?」
「はい。あなたたちが正式認可されたことで、
“タクシー会社と連携したい”という商人や施設が増えています」
ニコが驚いた声を上げる。
「えっ!? もうですか?」
「ええ。
宿屋、食堂、移転装置管理局、商業組合……
“定期的にタクシーを利用したい”という要望が多いんです」
ロイクは口を開けたまま固まった。
「そ、そんなに……!?」
(……つまり、事務所を構える意味は大きいってことだ)
情報の受け渡し、定期契約、配車管理……
全部“場所”があってこそ回る仕組みだ。
リーネは続ける。
「ですので、ギルドとしては“事務所設立を急ぐべき”と判断しています。
そして……もう一つ」
「もう一つ?」
「馬車タクシーと修一さんのタクシーをまとめて置ける“専用スペース”について……
皆さんから提案が出ています」
ロイクとニコが同時に身を乗り出す。
「専用スペース!?」
「どこですどこです!?」
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リーネは微笑んだ。
「それをお見せするのは……もう少し後ですね。
みんなで準備している“サプライズ”らしいので」
「サプライズ……?」
俺とロイクとニコの声がきれいに重なった。
(なんだその言い方は……めちゃくちゃ気になるじゃないか)
リーネは軽く会釈すると、すぐにギルドへ歩いて戻っていった。
残された俺たちは顔を見合わせる。
「事務所、思ったより早く必要になりそうですね……」
「サプライズって何だろ……馬小屋改造したとか……?」
「いやいや、もっとすごいのかもしれんぞ……!」
わくわくと不安が入り混じった空気の中、
俺たちは再び街の地図へ視線を落とした。
(さて……会社の土台作り、いよいよ本格スタートか)
夕暮れの王都に、
これから始まる新しい“タクシー時代”の匂いが漂っていた。




