王都交通局からの正式許可
朝の王都。
ギルド前のタクシー待合所には、すでに冒険者たちの行列ができていた。
「今日は北門の護衛依頼だ、急ぎで頼む!」 「観光客が増えたな……転移装置前から来る人も多いぞ」
(……相変わらず盛況だな)
エリア制を始めてから半月。
タクシー文化は完全に街に根づき始めていた。
そんな中——
「修一殿、交通局から至急来てほしいと伝令が参りました!」
リーネが駆け寄ってくる。
少し息が上がっている。
「交通局? なんだろう……」
俺はタクシーのドアを閉め、局へ向かった。
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局長室に通されると、
交通局長、ギルドの幹部、そして商業組合の代表まで揃っていた。
(なんだこの並び……絶対ただ事じゃない)
局長が重々しく口を開く。
「修一殿。ここ数ヶ月の“タクシー文化の定着”……まことに見事であった」
「えっ、あ……いえ、そんな……」
「ギルドからの報告もある。
“依頼遂行率が上がった”“移動の効率化”“迷子の減少”……
タクシーの存在が、王都の交通事情を大きく改善している」
ギルド幹部が頷く。
「冒険者の移動がスムーズになったことで、街全体の流れが良くなりました。正直……なくては困る存在です」
(そんなに……?)
商業組合の代表も言った。
「観光客もだ。転移装置から降りてきた客が真っ先に向かうのが、タクシー待合所だ。
王都の新しい顔として、宣伝に使わせてもらっているくらいだよ」
(知らねぇよ……!)
局長はゆっくりと立ち上がり、
机の上の一枚の書類を俺に差し出した。
「修一殿。王都は、正式に“タクシー運行組織の設立”を許可する」
「…………え」
目の前の紙には、でかでかと文字があった。
《特例交通事業認可書》
「前例がないものゆえ、時間がかかったが……君の下に集う仲間、
そして街の状況を見る限り、“組織化”は必要であろう」
リーネが満面の笑みで頷く。
「おめでとうございます! 修一さん!」
「ま、待ってください……
これってつまり……会社、みたいなの作れってことですか?」
「その通りだ」
局長は笑う。
「君一人のままでは、街の発展についていけん。
ロイク、ニコ、その他の御者たち……
正式な“社員”として組織に迎え、責任と権限を持つべきだ」
「…………」
胸の奥が熱くなる。
嬉しさか、戸惑いか……
うまく言葉にできない何かが込み上げる。
「……でも俺、ただの運転手ですよ?
会社なんて、作れるんですか?」
「作れるさ」
うしろから、聞き慣れた声がした。
振り向くと、白樺亭の女将さんとマリアが立っていた。
「誰より真面目で、誰より働いて、
誰より人のために動ける……そんな人が代表じゃなきゃ困るよ」
マリアも笑顔で言う。
「修一さん、がんばってください!
あたし……宣伝係、やりますから!」
ロイクも胸を張る。
「運行管理は任せてください」
ニコは魔道具を掲げて叫ぶ。
「通信魔道具も改良します!!」
(…………こんなに頼れる仲間がいたんだな)
局長がまとめるように言った。
「王都は君を信頼している。
だからこその正式許可だ。——受け取ってくれ」
俺は深呼吸し、認可証を握りしめた。
「……わかりました。
やります。会社を、つくります」
局長が満足げに頷く。
「よし。ではまず“会社名”を決めよ。
許可はそこからだ」
(……名前か。これは悩むな)
タクシー文化の次のステージが、静かに幕を開けた。
俺の胸は、不安よりも——楽しみに満ちていた。




