そして、弟子入り志願!?タクスィー三人組、帰還
夕暮れの王都。
そろそろ飯屋に入ろうと思い、タクシーを停めた瞬間——
「シューイチさぁぁぁん!!」
遠くから絶叫。
まさか……と思って振り返ると、案の定。
“タクスィー三人組”――バロス、テオ、ララが砂煙を巻き上げて特攻してきた。
「修一さん!!」「やっと会えたぁ!!」「俺ら死にそうでした!!」
勢いのまま三人に抱きつかれ、私は思わずよろめく。
「おいおい、どうした急に……地方都市で仕事してたんじゃなかったのか?」
三人は息を切らしながら口々に叫ぶ。
「王都の噂がすごいんですよ!!」
「“タクシー待合所が二つもできた”とか!」
「“観光客が溢れてる”とか!!」
「“仕事が爆増してる”って聞いて!!」
なるほど。
噂は地方にも広がっていたか。
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三人は早口で続ける。
「ギルド前の待合所が大人気だって聞いて!」
「さらに転移装置の前にも待合所ができたって!」
「他都市からの客が大量に来てるらしいじゃないですか!?」
そう。
先週、交通局が急ピッチで “転移装置前タクシー待合所” を整備したことで、
・異世界観光客
・他都市の商人
・冒険者の遠征組
が一気に増えたのだ。
結果、王都の客数は跳ね上がり——
その噂が地方まで届き、三人は不安で居ても立ってもいられなかったらしい。
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そして三人は同時に、私にすがるような目を向けた。
「……俺ら、置いてかれてません?」
「地方でのんびりしてたら終わる気がして……!」
「修一さん……見捨てないで……!」
いや、誰も見捨ててない。
「まず落ち着け。順番に説明する」
三人は何故か気をつけ姿勢で聞くモードに入った。
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まず説明したのは、ここ最近の変化だ。
・ギルド前で待合所が稼働
・転移装置前にも新待合所が誕生
・他都市からの観光客が急増
・馬車タクシーが混雑するため“担当エリア制”を導入
・通信具がまだ不安定なので“時間帯ローテーション”で運行
説明が終わると——
三人はぽかんと口を開けたまま固まっていた。
「……マジで、文明が進んでる……」
「王都、別の世界みたいだ……」
「修一さん、一体何者なんですか……?」
ただのタクシー運転手だよ。
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すると——
バロスが突然、膝をついた。
「修一さん!!」
テオとララも横に並び、地面に頭をこすりつける勢いで深々と頭を下げる。
「俺たち……弟子にしてください!!」
「本物のタクシーを学びたいんです!」
「王都のやり方、全部覚えたい!!」
通行人がざわつくほどの大声で叫ぶ。
(……ほんといつも全力だな)
でも、三人の眼差しは真剣だった。
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「いいか、弟子になるってのは簡単じゃないぞ」
「覚悟あります!!」
「いくらでも働きます!!」
「もう馬車タクスィーの“真似事”じゃ嫌なんです!!」
そこまで言われたら——
私は、静かに頷いた。
「なら教えてやるよ。王都のタクシーの“今”をな」
三人は弾けるように立ち上がって叫んだ。
「うおおおおお!!」
「修一さん最高!!」
「明日からお願いします師匠!!」
「いや“師匠”は違う。名前で呼べ」
「はい師匠ォ!!」
話聞け!!
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夜の街を走り去っていく三人の背中を見送る。
(……にぎやかになってきたな)
タクシー待合所が増え、他都市から客が流れ込み、
王都の交通は新しい段階に入っている。
そして今日——
またひと組、仲間が増えた。
それが、妙に嬉しかった。




