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【第一部完】『異世界タクシーは今日も営業中!〜乗せた相手の悩みが少しだけ軽くなる車〜』  作者: 済美 凛


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エリア制初日の大混乱


エリア制の運用が始まったその日――

朝の王都は、いつもよりざわついていた。


ギルド前、中央広場、商業区。

馬車タクシー組はそれぞれ担当エリアに配置され、

「こっちで客を拾え」「今日はこの場所を覚えるんだ!」

と気合の入った声が飛び交っていた。


俺もタクシーを走らせながら、

(うまくいくといいけど……)

と少し不安に思っていた。


そんな矢先だった。


腰の 魔通信試作2号機 が震える。


《……しゅい……さん……ギル……ど前……やば……い!》


「ニコ!? 全然聞こえん!」


ノイズだらけ。

やっぱり通信はまだ頼れない。


急いでギルド前へ向かうと――


そこには、人、人、人!!

見える範囲すべて“タクシー待ちの行列”ができていた。


(……なんじゃこりゃ!?)


ギルドの巨大な建物の前に、

冒険者が30人以上ずらりと並んでいる。


「修一さん! 大変です!」


リーネが駆け寄ってきた。


「急遽“荷物の一斉搬出依頼”が何件も重なって……

 みんなギルド前から移動したいみたいで……!」


なるほど……

依頼が重なれば、冒険者たちは一斉にここから移動を始める。


「でも中央広場はガラガラだぞ!?

 商業区なんて誰もいない!」


後ろから声が聞こえて振り返ると、

馬車タクシーのまとめ役、ロイクが駆け寄ってきた。


「修一さん、どうしましょう!?

 エリア制って聞いてたのに……ギルド前だけ地獄です!」


確かにこのままじゃまずい。


エリア制は

「その場所に人が来る」

ことが前提だ。


しかし現実――

客はイベントや依頼、タイミングで偏る。


(無理に“場所”に固定したのが逆に仇になった、か……)


ロイクは焦り顔で言う。


「このままだと客は怒るし、評判が落ちます!

 どうすれば……!」


「落ち着け、ロイク」


俺は深呼吸して、ギルド前の行列を見渡した。


(……偏りは避けられない。

 なら、固定じゃなくて……)


答えはすぐに出た。


「時間帯でローテーションしよう」


「時間帯……?」


「ああ。

 “朝はギルド前に集中”

 “昼は商業区”

 “夕方は中央広場”

 って感じで、時間ごとに配置を変える」


リーネが目を見開く。


「イベントや依頼の動き……

 確かに、時間帯で変わります!」


ロイクも手を叩いた。


「なるほど!

 “場所”じゃなくて“時間”を軸にするわけですね!」


「そういうこと。

 エリア制は続けつつ、時間で動きを変える。

 これなら偏りも取りやすい」


冒険者たちはまだ行列していたが、

ロイクが馬車組に大声で指示を出し始める。


「ギルド前、増援!

 中央広場と商業区は昼の配置から再開するぞ!」


御者たちが一斉に馬を走らせる。


冒険者の列からも

「助かるぜ!」「ようやく乗れる!」

と安堵の声が上がる。


(……よし、なんとか乗り切れたな)


リーネがほっと息をついた。


「修一さん、やっぱり現場経験が活きてますね……」


「まぁ、昔もこういう渋滞とか……よくあったからな」


タクシーのエンジンをかけながら、

俺は夕日が差し込むギルド前の光景を見る。


王都に根づき始めた“タクシーの文化”。

その第一歩はまだ不安定で、揺れてばかりだ。


でも、少しずつ形になっていく――

その実感が胸にあった。


(ここから、まだまだ改革は続くんだろうな)


そう思いながら、俺は次の客を乗せに車を走らせた。


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