表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完】『異世界タクシーは今日も営業中!〜乗せた相手の悩みが少しだけ軽くなる車〜』  作者: 済美 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/69

タクシー協会、はじまる?

交通局での大規模な会議から一夜。

俺は白樺亭の朝食を食べながら、ひとつの言葉がぐるぐるしていた。


——会社、つくるか?


いや、ほんとに?

異世界で企業を立ち上げるとか、そんな大それたことできるのか?


考えれば考えるほど胃が痛くなる。


(でも……昨日の会議の感じだと、早めに動かないとダメだよな)


交通局は本気だ。

タクシーを“この国の交通制度の柱”にしようとしている。


その中心に、俺——。


責任重大すぎる。



---


昼前、タクシーを出してしばらくすると、

昨日講習に参加した若い御者が手を振ってきた。


「修一さーん! ちょっと乗ってもいいっすか!」


車を寄せると、彼は元気よく乗り込んできた。


「いや〜、昨日から街でめっちゃ話題ですよ、“タクシー増えるってよ!”って!」


「そんな広まってんの?」


「そりゃもう。

 冒険者の間では、“タクシーの優先乗り場作ってほしい”とか言ってたし、

 商人たちは“長距離タクシーも始めてほしい”って」


(需要、えぐいな……)


若い御者は続ける。


「それで……修一さんって会社つくるんですか?」


「は?」


「いや、昨日の会議で言ってたじゃないですか。

 “運転手の育成が必要だ”って。

 だったら、タクシーを統括する組織って絶対必要ですよ!」


こいつ……なんでそんな前向きなんだ。


「それに、修一さんを慕ってる御者、多いんですよ。

 “あの人についてけば食っていける”って」


「簡単に言うなよ……」


「簡単じゃないっすよ! だからこそやるんです」


俺は思わず吹き出した。


(……若いのに、言うことがいっちょ前だな)


とはいえ、彼の言っていることは正しい。


単なる馬車タクスィーの延長じゃなく、

“タクシー文化”を育てるには、どうしても組織が必要になる。


その名前は——


「タクシー協会……とか?」


「いいじゃないですか! かっけぇ!」



---


午後、ギルド近くで待機していると、

リーネが書類を抱えたまま小走りで近づいてきた。


「修一さん! 交通局から連絡がありました!」


「また?」


「増車計画、本格的に動くそうです。

 そして——“タクシー組織の立ち上げについて、修一さんの意見を求めたい”と」


「まじか……」


リーネは真剣な顔で頷く。


「ここから先は、修一さんが“個人の運転手”のままだと回らなくなります。

 本格的に、誰かがリーダーになる必要がある……そう言っていました」


「俺が……?」


「はい」


彼女は続ける。


「でも、あなたならできます。

 あなたのタクシーは人を安心させるし、御者たちからの信頼も厚い。

 それに——この世界に“新しい文化”をもたらしているんですから」


そこまで言われると、逃げられない。


(会社……協会……か)


重い。でも、不思議と嫌じゃない。



---


夕方。白樺亭に帰ると、女将さんが笑って出迎えてくれた。


「修一さん、なんだか最近、顔つきが変わったねぇ」


「そうですか?」


「ええ。“街を動かす人の顔”になってきてるよ」


思わず苦笑した。


(街を……動かす、か)


そんな大層な自覚はない。


でも——

待合所ができ、人が動き、経済が回り、

この街の“未来”が少し変わったのは確かだ。


俺は白樺亭の玄関先で小さく息を吐き、空を見上げた。


(会社……つくるか。いや、“つくるしかない”か)


この異世界での新しい挑戦が、いよいよ始まりそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ