王都初のタクシー待合所、作るぞ!
王都の朝はいつも賑やかだけど、今日は特に気合いが入っていた。
昨日の講習会で、御者たちの悩みをたくさん聞いたからだ。
「お客さんがどこにいるかわからない」
「流しても乗せられない日がある」
「効率を上げたいけど、やり方がない」
……それなら、いっそのこと“タクシー待合所”を作ればいい。
そう思いついた俺は、前に転移装置の件で訪れた交通局へ向かった。
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交通局の建物はいつもどおり立派で、受付の職員も俺の顔を覚えていたらしい。
会議室に通され、しばらくして局長と担当官が姿を見せた。
「それで修一殿、今日はどのようなご相談かな?」
俺は軽く咳払いをして切り出した。
「タクシーが常駐する“待合所”を王都につくりたいんです。
お客さんが来やすい場所を作れば、御者も市民も助かるはずで」
担当官は腕を組みながら慎重な表情だ。
「ふむ……理屈はわかりますが、本当に需要が?」
局長も同意するように頷く。
「場所の確保や建設費もかかるからな。慎重に進めねばならん」
俺は昨日の講習会で聞いた御者たちの声を熱心に話した。
だが――
「理解はできますが、すぐに返事は難しいですね。予算の問題もあり――」
その瞬間、会議室の扉が静かに開いた。
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黒ローブの人物が入ってきた。
その姿を見た瞬間、俺は思わず身を乗り出した。
(このローブ……悪徳令嬢の時に見たやつだ!)
交通局長と担当官が即座に立ち上がり、深く頭を下げる。
「こ、国王陛下!!」
(……え? 国王!? じゃあ当時つけて来てた“黒ローブの変な人”って……?)
ローブのフードがゆっくり外される。
国王は俺をまっすぐに見つめ、開口一番こう言った。
「修一よ。あの時は、付け回すような真似をしてすまなかった」
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突然の“告白”に、俺は固まった。
「つ、付け回してたのって……やっぱり陛下だったんですか?」
「うむ。異世界から来た者の行動を見極めるためだった。
かつて異世界転移者によって国が危険に晒された例もある。
君がどんな人物なのか、知る必要があったのだ」
国王は本気で申し訳なさそうな顔をしている。
「だが、今は民からの評判も聞いている。
誠実で、働き者で、困っている者を放っておけぬ性格だと」
う、うわ……なんか照れるんですけど。
国王は交通局長に向き直った。
「局長。修一の提案した“タクシー待合所”、どう思う?」
局長は顔を引きつらせながら答える。
「ま、街の利にはなるかと。しかし、予算が――」
「私が許可する。進めよ」
言葉に一切の迷いはなかった。
「ひ、陛下!? もう少し検討を――」
「必要ない。王都の発展に繋がるものなら、すぐに動くべきだ」
国王の一声で、交渉は一瞬で決着した。
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国王が退室したあと、交通局の空気は一変した。
「すぐに候補地を決めろ!」
「御者のシフト管理はどうする!」
「案内板の文言を作れ!」
「予算だ、予算の資料を用意せねば!」
まるで蜂の巣をつついたような騒ぎだ。
局長は俺に向かって苦笑いする。
「修一殿、あなたのおかげで王都が大きく動きますよ」
「い、いや……俺はちょっと言っただけで……」
「“ちょっと”の積み重ねが文化になるんです」
外に出ると、夕方の風が心地よかった。
(王都に……本当にタクシー文化が根付くのか)
胸が少しだけ高鳴った。




