表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完】『異世界タクシーは今日も営業中!〜乗せた相手の悩みが少しだけ軽くなる車〜』  作者: 済美 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/69

いつもの送迎、ちょっとだけ非日常

魔王を送り届けた翌日。

 俺――修一は、いつもの街道をタクシーで流していた。


「やっと普通の客を乗せられる……」


 昨日の魔王のくしゃみ騒ぎは、できれば忘れたい。

 車内の空気清浄は2回やったが、精神的な清浄はまだ足りない。


 そんなところに、乗車ランプが点いた。


「どうぞ〜、空いてます」


 乗り込んできたのは若い冒険者。肩をほぐしながら座る。


「ギルドまで頼むっす」


「了解」


 



---


 走り出すと、冒険者は愚痴をこぼし始めた。


「いやー、またダンジョンの規制なんすよ」


「まだ続いてるんですね」


「続くどころか悪化っすよ!

 昨日なんて――スライム階層なのに**“王者スライム”**とかいうのが出てきたんすよ!」


「スライム界にも王者いるんですね……」


「いや普通いないんすよ!?

 そいつ曰く“寝てたら知らん場所に出た”って!」


(……やっぱり転移装置の影響か?)


 俺は心の中でピンときた。

 魔王の城の地下の“脈動”。

 謎のモンスター移動。

 そして、勝手にワープしてくるスライム。


 ぜんぶつながって見えてくる。


 



---


 冒険者は続ける。


「そんで“今日は環境が悪いから定時で帰ります”って帰りやがったんすよ」


「スライムも働き方にうるさいんですね」


「“労働時間の見直しを要求するスライム代表”とか言ってましたよ」


(昨日魔王軍でも似た話聞いたぞ)


 世界が“働き方改革”を迎えているのか?


 



---


「あ、そういや兄ちゃん、最近の噂知らない?」


「どんな?」


「魔王城の方で地響きがあったとか。

 冒険者の仲間内で、いろんな説が出ててさ」


「どんな説です?」


「“魔王が怒って咆哮した説”、

 “魔王がドラゴンを一撃で黙らせた説”、

 “魔王くしゃみ説”」


「最後の急に弱くないです?」


「いや魔王でもくしゃみするでしょ?」


(昨日してた。めっちゃしてた。タクシーの中で)


 もちろん言えない。


 



---


「はい、ギルド到着です」


 冒険者は料金を払いながら言った。


「助かった! 兄ちゃんも気を付けてよ。

 最近ダンジョンも街も物騒だからさ」


「お互い様ですね」


「じゃ、また乗るっす!」


 陽気に手を振り、彼はギルドの中へ消えていった。


 



---


 車内に戻ると、タクシーのモニターがピッと光った。


《昨日の高位魔族の魔力痕跡を微量検知》

《魔王城地下の反応と類似》


「……タクシーまでよけいなこと覚え始めたなぁ」


 ため息をつきつつも、

 どこかで“また魔王に呼ばれる予感”がしていた。


 ――あの小さい魔王の愚痴を聞く日は、

 近いうちにまた来るかもしれない。


「さて、今日もぼちぼちやるか」


 俺はハンドルを握り直し、いつもの街道へ戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ