「修一さん、仕事なくなるって本当ですか!?」
夕暮れの王都。
私は一度タクシーを止め、飯屋へ入ろうとしていた。
その瞬間——
「シューイチさぁぁん!!」
路上に響く絶叫。
見なくてもわかる。タクスィーの連中だ。
振り返れば案の定、
例の“馬車でタクシーの真似をしている三人組”が
勢いよく走ってきた。
先頭の男・バロスが、息を切らしながら叫ぶ。
「た、転移装置の噂聞きました!?
お、俺ら……終わりですか……!?」
後ろの二人、テオとララも同時に泣きそうな顔。
「王都を“転移でひとっ飛び”とか……」
「馬車の需要なくなるじゃないですか!!」
「何なら修一さんだけ生き残って、
私ら全滅のパターンですよね!?」
「待て待て、落ち着けって」
私は両手を前に出して制止する。
(ほんとこいつら、騒ぐときの息ぴったりだな……)
「転移装置の噂は確かに聞いたけど、
今んとこ“誰も実物を見たことない”んだよ」
バロスが涙目で叫ぶ。
「でも、商人は“国境まで一瞬”って言ってました!」
「農民は“家庭用モデルがそのうち出る”って!」
「冒険者は“迷宮前に直で転移”って言ってましたよ!」
「それ全部、今日乗せた客の話だな……」
私は頭を抱えた。
「つまり、お前らも結局“噂でパニックになってる組”じゃないか」
「いやぁぁぁ不安なんですよ!!」
「馬車、一台買ったばっかりなんです!」
「借金返す前に仕事なくなるのは嫌ァァァ!!」
三人とも、地面に突っ伏す勢いで騒ぎ出す。
(どうして毎回こうなるんだ……)
「よし、こうしよう」
私は深呼吸して、彼らの前に立つ。
「明日から調べる。
本当に転移装置が完成してるのか、
どの規模で普及するのか。
ギルド、役所、魔導師団、全部回る」
三人がピタッと黙った。
「……ほんとに?」
「修一さんが……調べてくれる?」
「救世主じゃん……」
「救世主じゃない。ただの確認だよ。
仕事なくなるのは私も困るからな」
「修一さん……!」
「一生ついていきます……!」
「ギルドより信用してます!!」
「いや、普通にギルド信用してくれ……」
三人は突然、円陣を組む。
「よし! 明日から“転移装置調査団”発足だ!」
「団員は四名、隊長は修一さん!」
「異議なし!!」
「お前ら勝手に決めるなァ!!」
それでも三人は満面の笑みだった。
たぶん不安で押しつぶされそうだったんだろう。
「……よし、少なくとも噂の真偽くらいは確かめよう」
「お願いします、隊長!!」
「だから隊長じゃない!!」
夜の王都に、タクスィーたちの叫び声が響き渡った。




