表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界タクシーは今日も営業中!〜乗せた相手の悩みが少しだけ軽くなる車〜』  作者: 済美 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/32

『タクシーの評判が招いた、なんちゃって馬車』

王都での営業にも慣れてきた頃だった。


昼下がり。いつものように客を降ろし、車を走らせていると――

妙にカラフルな旗を立てた馬車が、私の横にピタッと並んできた。


「……ん?」


「おい兄ちゃん! そこの“鉄の車”!」


と、その御者が声を張り上げる。


「んん? なんでしょう?」


「最近評判になってるタクシーってのは、お前さんだな!?」


(あ、噂……広がってたのか)


「そうですけど……」


「俺たち、“タクスィー馬車”だ!!」


「タク……スィー……?」


馬車の横には大きく、雑な字でこう書かれていた。


【たくすぃー / はやい・やすい・まあまああんぜん】


(“まあまあ”って正直だな)


御者は鼻息荒く胸を張った。


「お前さんの人気がすごいって聞いたからよ、ウチらも同じこと始めてみたんだ!」


「いや、同じと言われても……馬車ですよね?」


「違う! “タクスィー馬車”だ!」


「いや馬車ですよね?」


「……馬車だな!」


(あ、認めた)


御者は得意げに続けた。


「見ろ、この“ほにゃららメーター”!」


見ると、料金表を描いた木の板を紐でぶら下げている。

御者が手で板をガチャガチャ動かすと、数字が微妙に変わる仕組みだ。


「……自作?」


「そうだ! 移動距離で変わる“つもり”の料金表だ!」


(つもり……)


御者はさらに興奮して言った。


「でな! せっかくだから“勝負”しようじゃねぇか!」


「勝負?」


「向こうの市場まで“どっちが先に客を届けられるか”!

 俺らが勝ったら、タクスィー馬車の名前を王都に広めてもらうぜ!!」


(……いや完全に売名じゃん)


私は少し考えた。

本来なら断ったほうがいいんだろうが――


背後で、私の車が小さくピピッと鳴いた。


《注意:非公式競争は想定外ですが……

 勝率:100%》


(え、何その自信)


「……いいですよ。でも安全第一でいきますからね」


「よっしゃあ!! なら乗れ、客!!」


見ると、近くに買い物帰りのご婦人が立っていた。


「えっ、あたし!?」


御者が無理矢理乗せようとするので、私は慌てて制止した。


「すみません奥さん! 乗車は自由選択でお願いします!

 危険な乗り方はしませんので!」


ご婦人は少し迷って――私のタクシーを指差した。


「こっちが揺れなさそうだから……タクシーに乗るわね」


「……マジか!?」


御者の膝がガクッと落ちた。


「よ、よし……競走は……やめとこうか……」


「安全に勝るものはありませんから」


「ぐぬぬぬ……!

 でもな、兄ちゃん!」


御者は突然、にっと笑った。


「これから王都に“なんちゃってタクシー”が増えるぜ!

 覚悟しとけよ!」


「そ、それ脅しじゃなくて業界の健全化にしてください……」


御者はどこか満足げに馬車を走らせていった。


《乗客を送り届けました

 満足度:★★★★★

 料金:銀貨4枚》


ご婦人は降り際、にこりと笑って言った。


「本物と偽物、乗ればすぐ分かるものね」


私は苦笑しながら天を仰いだ。


「……異世界でタクシーの苦労まで味わうとか思わなかったよ」


王都の路地裏では、今日もどこかで“たくすぃー馬車”が走っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ