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『異世界タクシーは今日も営業中!〜乗せた相手の悩みが少しだけ軽くなる車〜』  作者: 済美 凛


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15/26

弟子魔法使い、初めてのお使い

昼過ぎ。王都の中央通りをゆっくり流していると、

小柄なローブ姿の少年が道路ぎわで必死に手を振っていた。


「タクシーさん! 市場までお願いします!」


「おう、乗りな」


少年は緊張した様子で乗り込んできた。


「買い物か?」


「はい! 師匠に“煉獄トカゲの尻尾を十本買ってこい”って頼まれたんです!」


名前は物騒だが、串焼き用の人気食材らしい。



---


タクシーで市場の近くまで到着すると、入口は今日も大混雑していた。


「う……人、多い……」


背の小さな弟子には、押されれば転んでしまいそうだ。


「市場の入口くらいは、一緒に行ってやるよ」


「えっ……ほんとに!?」


「運転手の親切サービスってやつだ」


少年はほっとしたように肩をゆるめた。



---


呼び込みの声と人波が渦巻く市場入口。


弟子は完全に埋もれそうなので、私は軽く肩を添えて誘導する。


「ほら、流れに逆らうなよ。足元注意な」


「は、はいっ!」


串焼き屋に辿り着いたところで、私は立ち止まった。


「店はここだ。ここから先は一本道だから迷わないさ」


「……行ってきます!」


少年は意を決して店主に声をかける。


「煉獄トカゲの尻尾、十本ください!」


「おっ? お使いか。えらいじゃねぇか」


店主はにやりと笑い、丁寧に包んだ袋を渡す。


「師匠によろしくな」


「はいっ! ありがとうございます!」


包みを抱えて走って戻ってくる少年。


「買えました!」


「よし、タクシーに戻るか」



---


帰りの車内では、包みからいい匂いがただよい、

少年は足をぶらぶらさせながら笑っていた。


「僕……師匠に褒めてもらえますよね……?」


「褒められない理由がないだろ。立派なお使いだ」


「えへへ……!」



---


塔の前に到着すると、扉が開き、大柄な魔法使いが出てきた。


「お、買ってきたか。……おお、ちゃんと十本そろってる!」


「がんばりました!」


「よし、よくやった!」


頭をぽんぽんと撫でられる少年。


その笑顔を見届けて、私はメーターを止める。


「さて、次の客を拾いに行くか」


異世界タクシーの一日は、まだまだ続く。



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