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折に触れて廻る・・間違いだらけのタイムリープ  作者: 馬場 ヒロシ


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第二部 恵美 第三章 堕落とピンチ

互いの道を進むことになった2人だったが、ヒロシは堕落に陥っていき、恵美は大きな事件に遭ってしまう。

第三章  堕落とピンチ



1983年4月・・ヒロシは静岡の安アパートにいた。

「よし!履修科目はこれでいい。後はアルバイトを探すだけだ。」駅にあった求人誌を見て「もう決まった!ここだ!」

ヒロシはバイトを即決で決めた。選んでいる時間が無駄だと思っていた。前と同じようにバイトに勉強に頑張ろうとしていた。

一方でで恵美はヒロシが離れ淋しさのどん底だった。

「ヒロシ君・・頑張っているかな?私は毎日同じ様に店手伝って、疲れて眠るだけ・・でも、ヒロシ君の顔を思い出すと・・あそこが熱くなってくるわ・・私のxxx・・熱いわ!」

そう独り言を言うと、パジャマを脱ぎショーツに手を入れた。

「寂しい・・ヒロシ君に会いたい・私のxxx正直だわ。ヒロシ君を思い出すだけで濡れる・・」

ブラを外して自分で胸を揉んだ。「あゝあゝ!ヒロシ君・・」

いつの間にか布団の中でxxxに指を入れzzzをしていた。恵美は限界に近かった。

夫婦でありいつも側にヒロシがいたことを思い出し、ヒロシに抱かれ高揚していたことを思い出すたび、どうしても・・自分でしたくなって止まらなかった。

「ダメ・・あゝあゝあー!ヒロシ君を感じちゃう」

ひとりでいっていた・・

我にかえり「私・・体がヒロシ君を求めてる・・でも今は我慢しないと・・」と言い先を考えていた。

だがこの行為が悪夢を生むのであった・・


ヒロシはそんな恵美を忘れ新たな道を進んでいた。

ただ・・入学した大学のレベルは前の大学に比較にならぬほどレベルが低かった。ヒロシには講義の内容も、テスト範囲もすらすらと頭に入っていった。

生活が厳しいヒロシは、学食を控えてアパートで白飯を梅干しや、古漬けをおかずに食べていた。

そんな時、前期の試験が迫った際に、いつも話をしていた上田という東京から来ていた同級生に熱心にテスト範囲等を聞かれた。ヒロシは特に威張ることもなく、上田にテストに出そうな範囲を教えていた。

上田は喜びヒロシを学食に誘い、昼飯を奢ったのであった。

ヒロシは何日かぶりで肉を食べ、感動したのだった。

前期試験が終わると上田がヒロシのアパートに来た。

「なあ!ヒロシ!ありがとう!テストの回答バッチリだったよ。助かった。」そう言いプレゼントだといって、近くの銭湯の回数券を10枚もくれた。

このようにしてヒロシは学業の天狗になっていき、講義にバイトにテストのアドバイザーとなっていた。

これによりヒロシは好きな弁当やビールや酒・タバコを手に入れた。

テストの要点を聞きにくる中には、女子大生もいたが見返りは特に求めていなかったが、いつしか彼にメモを渡す風習になっていた。

あるメモには(オッパイを1回揉める券)や(xxxをパンティの上から触ってもいいわ券)、(後腐れがないSEXができる券)など・・過激なものもあったが、1回デートできる券が一番多かった。

「谷君って格好いいから・・Cしてもいいよ・・」という輩もいたがヒロシは「君がもっと大人になってからね・・今は1回貸しね。ここに置いておくから・・」そう言いカラーボックスの上に置いた。そこには30枚ほどの無料券があったが、券の履行は女子大生だけは決してしなかった。

ヒロシは怖かった・・またエミリのような事は避けたかった。

噂は広がりテスト前には10人ほどが並ぶ時もあった。

ヒロシの最初の堕落・・他力で生きる

これが目覚めていた。

大学2年となりヒロシは、バイトを居酒屋に変えていた。これが2番目の堕落要因だった。

ここであった同じバイト仲間に賭け事に誘われて嵌った。そして同じ時期にその仲間の誘いで、男女4人でドライブしてさゆりと恋に落ちた。

大学3年生では学業疎かになり、バイトに賭け事に、さゆりに深くのめり込んだのだった。

更にさゆりの他にも2人の女性と付き合って、すっかり女たらしになっていた。

ヒロシの心の中は(どうせ・・俺を本気で好きだと言ってくれる女はいない・・抱いて気持ちよけりゃいい・・)すっかりエミリとの事を忘れて、いつの間にかそう思うよになっていた。

お金が無くなると、さゆりやその女の子達に工面を頼むのであった。最悪の堕落した男になっていった。

大学3年の春だった・・ヒロシ22歳


ヒロシの元にある女性がやってきた。彼女はロックバンドをやっているとの事で、ヒロシにテスト範囲を聞きにきた際に、たまたま受付が終わっており帰ろうとした日があったという。

その時に悲しい声で長渕剛を歌うヒロシの歌を聴き、彼女が探していた音(声)だったと。それでどうしてもバンドに参加して欲しいとの事だった。

「俺・・音楽は・・もう捨てたんだよ。昔は好きだった・・でもある事がきっかけで捨てたんだ。もう俺には音は聞こえない」

ヒロシはそう言いドアを閉め鍵を掛けた。

ヒロシには恵美との思い出が全てであった。学園祭で彼女の為に歌ったが、受け入れられず、去っていった恵美の影が残っていて、それ以来、楽器も二、三度手にしたが・・。

「音・・か。俺にはもう・・どうでもいいことだ」

そう言い、ついギターを手にして恵美の為に作った曲を歌っていた。自然に涙が出てきたヒロシだった。

夕方になりバイトに行く時間で玄関を開けた。

突然なことでヒロシは驚いた。先ほど帰ったと思ったその女性が玄関先で座っていたのだった。

「さっきの歌・・すごくいい歌だけど、悲しそうに唄ってましたね・・経験がそうさせたんですね。」

「何が分かるんだよ君に!だいたい玄関に座って待ち伏せして、人の音って言うか歌を聞いてるなんて・・泥棒だよ!音泥棒!」

女性は笑って「音泥棒?私・・別に盗んでませんよ。聞こえただけです。・・でもいい声。あなたの声素敵です。やっぱりうちのバンドに是非参加して下さい!よろしくお願いします!」

女性は頭を下げて頼んだが、ヒロシはバンド先に急いだのだった。しかしその女性は次の日も翌々日もヒロシを訪ねてきた。

そんなある夕方の事だった・・

ヒロシはバイト休みで久しぶりに、さゆりと飯でも喰おうかと駅前で待っていた。すると遠くから音楽が聞こえてきた。

「キーボードだな・・?いや〜下手だな・・」

ヒロシはそう思い音がする方に行ってみた。

そこにはヒロシをバンドに誘っている例の女性が・・キーボードを鳴らしていたのだった。

初心者ではないと思われたが、ヒロシには偶に音ハズレを起こしているのが気になった。その女性は気にせず弾き続けていたが、2、3人いる観客を見て急に演奏を止めた。

「こんなものね・・私の実力・・」そう言い電源を切ろうとした。が・・

「俺に貸してみなよ!」ヒロシが突然話しかけてきた。ヒロシはイコライザーを弄ると、基本的な音の確認をすると優麗に弾き始めた。女性がさっき弾いていた同じ曲だったが、まるで違う曲に聞こえ、リズム感や正確な鍵盤タッチによる曲本来の音になっていた。

2、3人いた観衆の見る目が変わり、周りから人が集まってきた。ヒロシは曲にアレンジを入れ弾き始め、更に観衆を驚かせた。演奏が終わると大きな拍手があり、指笛なども混ざった。

「君の演奏・・悪くはないけど!音が死んでいるよ。俺の音がいいとか言ってたけど、先ずは自分の音だね!」そう言うと遠くに見えたさゆりに手を上げ

「さゆり!今いく!」

さゆりの待っている方に走っていった。

女性は「やっぱり・・私の思っていた通り・・彼は音楽の天才だ。是が非でも私のバンドに入れなきゃ・」独り言を言った。


恵美は12月の忘年会シーズンで忙しい店を手伝っていたが、満員の店で毎日来る男性が気になっていた。

食事をするとお金を払ってすぐに帰る・・5日間程だ。

今日も夜7時きっかりに現れたため恵美はお茶を出し

「いらっしゃいませ・・今日も来ていただきありがとうございます」そう明るく接客した。

「天麩羅定食お願いします・・」そう言うのであった。

恵美は心で(よく食べるし、まあ顔も悪くなく、ガッチリした体つき・・スポーツでもやっているのかしら?)

そう考えていた。その客はいつもの様に食事が終わると席を立ちレジに向かった。母親が接客中で「恵美!お勘定もらって」

恵美は普段からレジはしなかったが、忙しい店内を見て慌ててレジに向かった。

「今日もありがとうございました。980円です」

男は「ごちそうさま・・」そう言うと1000円札を出した。「ありがとうございます。20円のお返しです」

その時だった「これ・・読んで下さい」そう言いメモを小声で渡された。そう言うと男は帰っていった。

恵美は忙しい為メモをポケットに入れ、仕事を続けた。

家に帰りさっきの渡されたメモに気付いた。「?なんだろう??」

メモを開いてみると恐ろしい事が書いてあった・・

<このメモを見ていると言う事は、やっと渡せたんだ。僕は佐々木と言います。佐々木ゴロウと言います。>

恵美はハッと思った。「前の・・旦那だわ」

<僕はあなたと見合いする予定でした。ですが・・そちらからお断りのお話があって・・なぜだろうと思いお会いしたかったです。写真の通り、お綺麗で驚きました。・・何日かお店で会ううちに好きになってしまいました。是非一度お話しをしませんか?お返事お待ちします。佐々木ゴロウ>

「そういうこと・・私が狙いだったんだ。どうりで見覚えのある顔。それに声・・あんな感じだったかな?」

そんなことを思ってはみたものの、過去の暴力や無理矢理犯す様に抱かれて子供を授かった・・それに無職に酒・・散々だった過去・・

「もう同じ轍は踏まないわ!ヒロシ君を信じられなくて、軽い気持ちで彼と結婚して、60で散々後悔して・・ああ!思い出したくもない!」

恵美は過去の彼との惨劇を思い出し、とても会う機会などあり得ない・・そう思っていた。

次の日も男は食事に来た。レジでお金を出そうとした時に、「お母さん・・私やるからお父さんを手伝って!」恵美が変わりお金を受け取った。

「ありがとうございます。980円です。」そういいお金を受け取り、20円のお釣りを返した。

「あの・・無理ですので。私好きな人いるから・・ごめんなさい」そう男に返事をした。

男は顔を伏せ店を出ていってしまい、恵美は少し安堵な気分になって仕事に戻った。

家に帰りお風呂の後、髪を乾かしていた。「どうして・・彼は急に現れたのかしら?次元が歪み、本来出会うはずの人じゃない彼が現れた?のなのかしら?」

両親は後片付けをしてからの帰宅だった為、恵美はいつもの様に早めにベッドに入って寝るのであったが・・

「あゝあゝ・・あんー」いつもの様にヒロシを思い出しオzzzzをしてしまっていた。

疲れてそのまま眠ってしまった恵美だったが、急に布団に重さを感じ起きあがろうとしたが「じっとしてろ!」そう声がした。男は恵美を押さえながらズボンを脱ぐと、パンツも下ろし恵美を犯した。さっきまでzzzzをしていたので全裸に近かった為、あっという間に容易に犯されてしまった。

そこに突然両親が帰宅し恵美を助けたが、恵美はすでに放心状態でベッドに全裸で横たわっていた。

直ぐに警察を呼び犯人が逮捕された。驚くことに犯人は佐々木ゴロウだった。

事情聴取でゴロウは「大した女じゃないくせに気取りやがって!こっちが下手に出たら!クソが!まあいい・・犯して楽しんだから・・へへへ」

恵美は何日も部屋に閉じ籠り、窓の鍵をしサッシにガムテープをして暗い部屋で頭を抱え怯えた。母親は心配で店には出ずパートを増やして、恵美が一人にならない様にした。

食事もせずただ「ヒロシ君・・ごめんなさい。私の体汚れちゃった。もう・・会えない」そう呟いていた。

犯人の佐々木は恵美の他にも余罪があり、少なくとも10人が犠牲となっており、1人が行方不明だった。警察の必至の取調べと裏付けで、行方不明者は公園の池の中で発見された。

佐々木は婦女暴行だけでなく、殺人もおこなっていた。

裁判が開かれ、多くの被害者の参考人質疑で次々と残忍な犯行が明るみに出て、佐々木ゴロウには懲役30年が言い渡され収監された。

事件後半年過ぎたが、恵美は憔悴していた。

仕事をする元気もなく、食事を摂る手も止まっていた。

「恵美・・ちゃんと食事して。このままだと体を壊して入院よ。」

母親が心配したが、恵美の目は死んでいた。

外出もせず誰とも会おうとしなかった娘が心配になり、母親はデパートの買い物に無理に連れ出した。

恵美は歩きながら、すれ違う人が来ると母親の背に隠れ怯えていた。

かなりの重症だった。人との会話もひと月以上もしておらず母親は「・・恵美の声!忘れちゃうわよ!何か言いなさい!話くらいできるでしょう!」

だが恵美は黙ったままだった。

デパートに着き買い物を終わると喫茶店でお茶をしていた。そこに牛山が来たのだった。

「恵美のお母さん・・お久しぶりです」

「ああ・・ヒロコちゃん。待っていたわ。この子と会話してあげて。私には何も話ししないから・・」そう言い涙した。

牛山は「じゃ!お母さん・・恐縮ですけど少しだけ席を外してください」

母親は牛山に恵美を任せ、席を外したのだった。

「恵美・・恵美!」無反応だった。

牛山は少し刺激がないとダメだと思った。

「恵美・・よく聞いて。犯人は捕まって安心なの。それに・・いつまでも塞ぎ込んでいたら身体壊すわよ!いい加減にしな!親友の私にも心を開かないつもり!」恵美はそっと牛山を見つめ・・

「私・・汚い。汚いの!この口もこの胸も!このxxxだって!みんな汚されてしまった・・もう嫌・・生きていけない」そう言い泣いてしまった。

「そんなことないわ。恵美は恵美だから。いつもの我の強い恵美に戻ってよ。心配でならないわ!」

恵美は涙を拭くと「もう・・会えない。ヒロシ君に」

牛山は意を決して「ヒロシもね、貧しい暮らしの中、最近やっと音楽に目覚めたよ!バンドに入り頑張り出したわ。それまでは碌でもない生活していた様だけど・・」

恵美は安心した様に「よかった・・ヒロシ君目覚めたんだ・・ヒロシ君は音楽が似合うわ・・よかった・・」

そう言いまた泣き出した。

「恵美!こんなみそぼらしい自分をヒロシに見せたいの?もっとキリッとしてよ。ヒロシがいたら見て悩むよ!」

「ヒロシ君にはもう会えない・・私・・汚れたし、心もズタズタだし・・この格好だって見せれない。ジャージ姿。あの男・・私を押さえつけて!口に舌入れてきて!私の胸掴んで!自分の物まで私に入れて!腹に出して逃げて行ったわ!ああ!ああああっ!!頭が痛い・・割れそう・・」

周りにいた人々が恵美の叫びに似た声で驚きざわついた。

牛山は周りに平謝りしたが恵美は「・・汚い。汚いわ。あの男の全てが私に付いて・・嫌。ヒロシ君に合わせる顔ない」

そう言い下を向き頭を抱えた。だが突然背迎えの席から声がした。「恵美・・君は君だろう。俺の初恋の恵美だろう」

恵美は驚き顔をあげ後ろを振り向いた。そこにはヒロシが座っていた。紛れもなく本物のヒロシだった。

「・・ひ・ろしく・ん?」泣き顔で見たのだった。

「いいよ・・恵美。もう何も話ししなくていい。放っておいた俺が悪かった。大学行っても君が忘れられず・・くだらない人生過ごしてたよ。俺だって君に恥ずかしいこといっぱいしてた。だけど悪気があっても止められなかったよ。」

ヒロシはそう言い恵美の手を握り少しだけ微笑んだ。

牛山は「2人とも久しぶりに散歩でもしたら!」

ヒロシは「うん!いい考えだ。恵美!行こう!なあ!」

恵美は重い腰をあげ「この・・格好で?」

牛山は「ああ、そうか。上下ジャージ姿だったね」

そう言い恵美を連れ母親の元に行き、話をし今日買った恵美の服が牛山に渡された。牛山は「ヒロシ!待っていてね!」そう言い試着室に入っていった。

恵美の母親はヒロシに近づき「何ていうか・・恵美はあなたをずっと待って・・思っていたようで・・お見合いの話が沢山あっても、五年だけ待ってほしいと・・好きな人がいて、5年後には紹介できるとずっと言ってたの。どうも・・それはあなたみたいだね。あの子の顔に書いてあったわ。事情は良く分からないけどと・・必ず恵美を迎えにきてくださいね。あの子の一生の希望だからお願い・・」

恵美の母親はそう言うとヒロシの手を取り涙した。

「私は帰りますけど・・これ受け取って。」

そう言い紙袋をヒロシに渡し帰って行くのだった。

ヒロシには驚愕の出来事だった。あの恵美が事件に巻き込まれて被害者になるなど、到底考えもしなかった。

牛山に連絡をもらった際にも、持っていた受話器を落し頭を抱えていた。自分ができること・・そればかり考え故郷に戻ったのでであった。

10分ほどして恵美は細身のジーンズに白のTシャツで現れた。表情は曇っていたが、よく似合っていて高校生時代よりも素敵になっていた。

牛山は「ヒロシ・・後は頼むわよ!私はここまでだから」そう言うのであった。

「うん。分かったよ。牛山さん!ありがとう」

牛山が帰り恵美と2人になった。

正直なところ何をどう話せばいいか?分からないヒロシだったが、2人で散歩しながら思い出話を始めた。

「・・俺さ、中学の時イジメられていただろう。毎日が・・苦痛でたまらなかったよ。なぜ俺が?なぜ俺だけが?そう考えて、暗い部屋でずっと考えていたんだ。自分が悪いのか?周りが悪いのか?それとも時代が悪いのか?ってね。でもね。ある日分かったんだ。あの雨の日・・君に助けてもらった日」

恵美はすれ違う人を避けながら「助けたい・・そう思ったんじゃない・・かわいそう・・そう思えたわ」

ヒロシは「そっか。だから分かったのかもしれない。みんなかわいそう・・って思いながら見て見ぬふりをしてた。君に貶されて気付いた。・・そもそも自分が弱いからダメなんだって。

自分を変えるなんてできない・・そう落ち込んでいたけど、違った・・何も努力していなかったんだ。だから俺は自分を変えようと必死になった。勉強も音楽も誰にも負けない様に・・そうしたら・・ある人を好きになっていた。自分でも信じられないくらい好きになって、その子に好かれよう!そう思って頑張れた。・・俺、後悔してるこの3年半を。君から距離を置こう・・と言われた時になぜ諦めたんだと。沸々と気持ちが裂かれて、大学でも散々な生き方をしてた。女も騙し、賭け事にも染まって、気付いたら昔の俺に戻っていた。イジメではなくどん底の自分イジメ・・そうしたら音楽にまた出会った。

君を諦めずにいれたら、どうだったか?結果は分からない。でも変わらない事がある。今でも恵美が好きだ・・これだけは死ぬまで忘れられない。」

ヒロシは自分勝手に喋り過ぎた。

恵美は「そう・・今でも好きでいてありがとう。私も・・いや何でもない。私には言えない。今の私には・・」

そう口をつぐんでしまった。

2人は暫く歩いたがあまり話は弾まず、いつしか恵美に家に着いてしまった。

「今日はありがとう・・ヒロシ君。」そう言うと家に入っていった。振り向きもしなかった。

ヒロシには分かってはいたが、彼女の事件のことを思うと胸が張り裂けそうで、言葉が上手く口から出なかったのである。

仕方がなくヒロシは実家に帰るのであった。

ヒロシは風呂場でいろいろ考えていたが、恵美の心に入り込む方法が見つからなかった。

その晩ヒロシは恵美の母親からもらった紙袋を開いた。

ヒロシは中身を見て少し驚いたが、確認をするのであった。

ラジカセにてテープを入れ再生ボタンを押した。

<今日はヒロシ君が私のために歌を歌ってくれました。嬉しくて恵美、本当にヒロシ君が大好きです。ありがとう!>カシャ

<今日はヒロシ君のマネージャーをした初日です。ふー疲れた。でもねヒロシ君のそばにいられるから最高です!>

<今日・・ヒロシ君に距離を置こうって言った。全くの嘘です。誰がなんて言おうとも、私はヒロシ君の側にずっといたい!・・でも今はダメ。今はヒロシ君の大事な時期だから。将来のヒロシ君のため嘘でもいいから離れないと・・ダメなの。でも・・大好き。愛してるわヒロシ君・・今度は私から付き合おうって言うから。ちょっと先かもしれないけど、その時は私を抱きしめて!強くね!キスも忘れずに・・ううう・・>

<今日はヒロシ君が大学を辞めて地元に戻ってきたところで会った。ヒロシ君に。私のせいだわ。大学辞めたのも・・エミリちゃんの事も・・私がヒロシ君と距離を取らず、一緒にいれたら・・変わっていたかも・・ダメな私。ごめんヒロシ君>

<ヒロシ君が静岡に行っちゃった・・寂しい。恵美淋しくて仕方がないわ。会いたい・・ヒロシ君。会いたい・・>

<今日もヒロシ君を考えていてお店のお皿割ってしまった。顔が見たくて・・声が聞きたくて>

この様な内容の肉声テープが60分テープにぎっしりと録音されていた。

ヒロシはひとり泣いていた。恵美の想いや待っていてくれていた気持ちを思うと耐えられなかった。

するとヒロシは急に立ち上がって着替えて外に飛び出しっていった。無我夢中に夜道を走った。

着いた先は恵美の住む家だった。夜の9時を過ぎていて失礼だと思いながら、インターホンを鳴らした。

こよなくして恵美の母親が出てきて「あら谷さん、どうしたのそんなに汗かいて!走ってでもきたの?」

ヒロシは「恵美さん・・ご在宅ですか?いらっしゃいますか?」そう言い尋ねた。

その声を聞き奥から恵美が出てきた「どうしたのヒロシ君?何かご用なの?」恵美は暗い声で尋ねた。

「ああ!あるとも!ありすぎるよ!」ヒロシは大汗をかきながら話を続けた。

「君は俺から逃げたのか?俺が嫌いで距離を置いたって言うけど!本当はどうなんだよ!」

恵美の母親は「大声はよして。それに恵美は・・」

ヒロシは玄関から中に入ると恵美を抱きしめた。

恵美は驚きヒロシを離そうとしたが、ヒロシは決して離さず、

「分かった。君が必要な事・・分かったんだ・・」

そう言い涙を流した。

「ヒロシ君・・もういいわ。昔の私じゃないの・・今は・・だから、あなたはあなたの道を進んで・・思い出にするから」

恵美は完全に自暴自棄に陥り、ヒロシの言葉が心に入ってこなかった。母親も下を向いた。

ヒロシは恵美の両肩を掴みじっと見つめて「俺を見てくれ」目を逸らそうとする恵美に言うのであった。

恵美は下を向き「まともに見れないわ・・そうなった・・」

「だったら」ヒロシはそう言い恵美に無理矢理キスをした。母親もびっくりしてしまった。

恵美はヒロシを離そうと必死になったがいつしか・・力が抜けていった。

(ううう・・ヒロシ君。ヒロシ君の口づけ・・あなたを感じるわ・・忘れていた感情が・・蘇るように)

ヒロシはそっと唇を離し「俺は君が好きだ。誰よりもずっと前から」そう言い再度キスをした。

恵美は受け入れるようにヒロシの背に手を回した。

恵美は小声で「でも・・私の身体は汚れたわ。醜い悪魔に汚された。ヒロシ君・・私はもう昔の恵美じゃないの!」恵美はそう言い心を吐露した。

「ううん・・恵美は恵美じゃないか。俺は全然気にしない。だって君が悪いんじゃない、その悪魔が悪いんだから。汚れは俺が一生かけて落としてあげるよ。心の暗闇は俺が一緒になって光を運んでくるから・・もう我慢しなくていい。もう距離も置かなくていいよ。直ぐに俺の胸に飛び込んできて欲しい。君に言ったはずだよ!俺は結構・・一途なんだと・・ね!」

そう言い笑った。

恵美は大泣きしヒロシに抱きつき離さなかった。

「ヒロシ君!ヒロシ君!会いたかった!大好き!もう離さないわ!ずっと私のそばに居て!」そう言うのだった。

恵美の母親も泣きながら「良かったわ・・本当に」

そう言い安堵の表情を浮かべたのであった。

帰宅してきた父親もびっくりしていたが「奥に来たまえ」そう言いヒロシを居間に連れて行くのだった。

父親はヒロシをじっと睨み「君は恵美のことをどう思っているのかね?別れたり付き合ったり・・忙しいが?それに・・恵美は大きく傷ついている。」

ヒロシは心の準備が出来ていた。

「お父さん・・僕たちはまだ22ですけど、大人です。今回の酷い事件が起き失ってはいけない人に気付きました。一度は別れましたけど、もう彼女をひとりにはしません。僕が彼女をずっと守っていきます。ですので娘さんを僕に下さい・・お願いします!僕は本気です!お願いします!」

聞いていた恵美はまた大泣きをしていた。

父親も少し涙し「うん・・分かった。君を信頼するよ。恵美を大切にして欲しい・・少し我が強いが我慢してくれ」

恵美は心の傷を持つ自分をヒロシがなぜ結婚までしたいかが、全部は理解できなかった。

「ヒロシ君・・」「なに?」

「ヒロシ君はまだ22だけど、結婚まで考えたの?私と」「うん。さっき決めた」「えっ!さっき・・」

「だって・・誰にも恵美を取られたくない。俺だけの恵美にしたかった。だから君のお父さんに言われ、そう決めた」

恵美は嬉しかったが、自分の闇は消えていないし、仕事のことや大学のことはどうなるのか?心配でもあった。

「でもね、結婚式は2年後ね!入籍は明日しよう!それと俺と静岡に行こうよ。向こうで今より少しだけ広いアパート借りるから。君は俺と同じバイトしてね。いつも一緒がいいから・・それに・・」

「ちょ・ちょっと待って!そんな事まで決めたの?この短時間で?お父さんとお母さん知ってるのかな?」

「大丈夫!さっき恵美がお風呂に入っている間に話したから」

恵美は驚愕した。頭がよく行動力があるヒロシだったが、今回は更にスピーディに事を運んでいた。

「でもいいの?本当に・・私で・・後悔しない?」

ヒロシは恵美をそっと抱きしめて「だから・・もう誰にも君を渡したくない。1分1秒でも早く一緒に居たい・・後悔なんてしないよ。さっきも言ったけど・・俺って!・・」

「一途?・・なのよね!」

恵美はそう言い笑った。

「やっと笑ってくれたね!君は笑顔がよく似合う。」

「ヒロシ君・・明るくて楽しい、幸せな家庭にしましょ」2人は手を繋ぎ恵美の家に戻るのであった。

恵美は幸せを呼び寄せた。


翌日・・ヒロシと恵美は市役所に行き入籍した。

牛山は2人の門出を祝うかいてを開き、中学や高校の友人と、恵美とヒロシの両親を呼んだのであった。

「恵美さん・・コイツはやる事も早く人当たりも良いが、諦めも早い奴だから、しっかりと監視して道から逸れないようにしてくれ」ヒロシの父は若い2人が心配だったが、恵美の確りそうな表情を見て頼むのであった。恵美はヒロシの両親の手をとり言うのであった。

「私はポンコツですけど、彼は今は石炭ですけど磨けば磨くほど光るダイヤモンドです。中学生時代は彼のイジメの傍観者でしたけど、それから直ぐに好きなりました。だから、絶対に結婚するんだって思うように生きてきました。・・だから・・うううー」

「恵美!おめでたい日にまったく泣いてるの!」

牛山は少し怖い顔で言うのであった。

「違うわ・・嬉しくて嬉しくて!たまらないの・・」

牛山は恵美を抱きしめて「これからが長いから・・頑張るのよ!ヒロシがバカしたら、私が駆けつけて殴ってあげるからね!大丈夫だわ!」

それを聞いていたみんなは大笑いした。

2人の旅はこうして出発したのだった。


続く


突拍子もない展開になり、今後の展開が見逃せない。

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