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折に触れて廻る・・間違いだらけのタイムリープ  作者: 馬場 ヒロシ


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第二部 恵美 第五章  最終決戦

朱音の提案に乗り恵美は朱音が優位な次元に飛び最終的な戦いにいどむのだった。

2000年秋・・恵美は37歳になっていた。

ヒロシは仕事もバリバリとこなして、毎日遅くまで仕事をしていたが、休みの日は恵美とヒカルを連れて、ショッピングや映画館に行くなど、優しく逞しいヒロシになっていた。

そんなヒロシを見ている恵美も、人生で最大に幸せな日々だった。喜び満ち溢れた人生道に辿りついた。

「ねえ、ママ?なんでママはパパを、いつもヒロシ君って呼ぶの?他の人はお父さんや、あなたや・・そう呼んでるけど?変じゃない?」

「ぜんぜん変じゃないわ!私は彼が初恋の人だし、いつまでも恋人同士のように過ごしたいの。だからこれからもヒロシ君って呼ぶわ。いいでしょ?」

ヒカルは恵美の話を聞いて、子供の前でよく言うわ!と思いながら納得するのだった。

そんな秋の深まったある日だった。

恵美は洗濯物を干し、スーパーへの買い物に出かけた際に、ある光景を見た。

前に見えるスーパーの建物が揺れて見える・・幻覚なのか?それとも錯覚なのか?恵美は大きな目をパチクリさせてみいいった。

「あれ何かしら?・・えっ!・・あれって・・」

そこにはいつぞやの自分達を呑み込んだ、裂け目が現れる前兆の光景だった。

「どうして・・現れたの?ヒロシ君のピンチでも私の心の叫びでもない・・まあ避けよう!今は!」

そう心で思い恵美はスーパーを避けて、近隣の商店街に向かおうとした。

その時だった。目の前に黒いキャップを被った女性が立ちはだかった。

「逃げる気・・?ですか?恵美さん・・私は今朝からここで待っていたのに。避けようなんて・・」

立ちはだかったのは朱音であった。

「何度も何度も彼を得るために、いろいろしたけど・・あと一歩の所でダメだったわ。・・貴方ってツイてるわ。苦しくなると、誰かが貴方を救ける。私には助けの手は誰も出さない・・違いすぎじゃ?」

恵美は朱音を睨み「あなたはどうしてここまでするの?あの学園祭の演奏でヒロシ君の優しさが分かって、納得してくれたんじゃないの?」

「納得?・・笑わせないでよ!私と先輩の次元にこっそり割り込んだくせに!第二の人生を続けたかったのに、あなたが執拗に私たちを追ってきたから、リセットしたのに・・また!あなたは付いてきた!第三の人生で先輩を私から奪い取って・・再リセットしたら忍びの様にそっと割れ目に入って逃げて・・第四の人生は私の独断場だった筈なのに、先輩を言いくるめて、私に罠をかけ陥れ、先輩と結婚して、子供まで作って・・悔しくて悔しくて!改心などできないわよ!」

恵美は矢継ぎ早に喋る朱音に後退りしたが、再度睨み

「・・偶像の世界・・あなたの理想郷は?ヒロシ君を何度も騙して、彼と結婚しても避妊して!子供が欲しくなかったんでしょ!それにユウジとかいうバンド仲間と付き合いながらヒロシ君と結婚して・・第二の人生で逃げてたのは私が追ったからじゃないわ。そのユウジ君という元カレに追われていたんでしょう?それに第四の人生ではその人の子供まで身籠って・・ヒロシ君を大きく傷つけたよね!ヒロシ君は・・それに気付いていたけど、あなたの改心・・ユウジ君と幸せになって欲しいと願って、何も言わずに去ったのよ。私と結婚したのはそのずっと後だから。ちゃんとステップ踏んでゴールしたわ。あの学園祭の数日前のバスでヒロシ君は朱音ちゃんから話して欲しかったんだよ。自分がしてきた騙し討ちを・・だから知らぬふりしていたの・・」

朱音は薄っすらと笑みを浮かべて、恵美の両肩を掴んだ。そして恐ろしい言葉を言うのであった。

「まあ・・恵美さんの言うことにも一理あるわ。でもねあなただって、一度目は先輩を振って、違う人と結婚したわよね?それは騙していない訳?本来の筋なら、この第一の人生は、先輩とさゆりさんの人生だった筈だわ。なのにさゆりさんが存在しなくなって・・その座をあなたが奪い取って・・まるで最初から正妻の様にしてるけど、自分の心は痛まないの?それとも先輩がきのどくで結婚してあげたの?」

恵美は朱音の両手を払いのけ言うのであった。

「私は・・確かに一度は間違った選択をしたわ・・でもね、私は本来、ヒロシ君をずっと好きだったわ。結婚しても、元夫に暴力受けても、それにあなたが仕組んだ元夫の性暴行事件・・ヒロシ君が好きだから曲がらず、信じて着いていこうって思いここまできたの。だから・・私が正妻とか偽物とかじゃないわ。10代に戻りやり直せて、本当に好きな人に抱かれたの・・」

朱音は遂に憤激し「あゝ!分かったわ・・それじゃ!あの裂け目に二人で入って・・行先で最終決戦としましょう!私が負けたら、二度と先輩と恵美さんの前に現れない・・でも・・私が勝ったら、先輩は私のモノだから・・その時はせいぜい子供と仲良く暮らしてね!」そう言い恵美の肩に再度手を置いた」

恵美は短い時間だが考えた。裂け目の先はきっと自分が不利な設定になっている筈・・だが、ここで逃げたら一生、朱音が関わって着いてくる。その度に地雷を埋められ、踏まないように生きて、踏んでしまったら最悪な事件が起きる。それだけは避けたいと思った。

「分かったわ!行きましょう!約束は守ってね!」

そう言い2人は目の前に現れた裂け目に飛び込んだ。

裂け目の中では今までの出来事がスライドショーの様に目に入ってきた。

恵美は沢山の苦労や悔しさに、喜びと・・頭の中を駆け巡っていた。

やがて・・再び裂け目が現れ外が見えた。

二人はどうも20歳過ぎの社会人の様だった。

朱音は気づくと自分の腕の中で倒れているヒロシを見た。

「ヒロシ君・・ヒロシ君・・会いたかったよ!朱音・・先輩との事沢山後悔してるから、ここから私が守っていくね!」そう言うのであった。

一方で恵美は実家の自分のベッドで目覚めた。

「ううん・・ん。どうして私はここにいるの?・・そうか、朱音ちゃんの計画する最終決戦の場に来たのね・・じゃあ!二人を探さないと・・」

そう言い立ち上がり、ヒロシと朱音が住む当時の街に急いで出かけた。

時はヒロシと恵美が30歳で朱音が28歳の、2人が第二の人生を終わらせた日だった。

恵美は慌てて現場に行ったが、既に二人をその場で確認できなかった。

「えっ・・もう第三の次元に飛んだの?・・いえ・・それはないわ。朱音ちゃんがその選択はしない。この次元にとどまっている筈だわ。第二の人生でヒロシ君とやり直すつもりだわ・・」

恵美が絶対的に不利な第二の人生・・ヒロシが朱音に出会い、恋をして結婚した次元だ。

この次元では圧倒的に朱音が有利であり、恵美は単なる過去の初恋相手である。第一の人生でヒロシと恵美は壮絶な死を選び、最終最後は一緒に居たい・・そうヒロシへの想いが湧き上がり追跡していた次元・・

だがヒロシにとって恵美は、この次元でも別の男と結婚した自分に対する裏切り者と思われていた。


その1時間前に朱音は腹痛で倒れたヒロシを病院に連れて行き、ずっと側で看病していた。

だが・・一日経っても二日経っても、ヒロシは目を覚ますことがなかった。

朱音はヒロシの手を握りしめて自分の額にあて、心で刹那に思っていた。

「リセットはもうしないわ・・この次元で先輩と生きる。ユウジ君には時間かけて分かって貰うわ・・もう先輩を離さない。つまらない感情で裏切らないわ・・だから先輩・・私と生きて。朱音を昔みたいに愛して・・お願いだから」

朱音は第二の人生に戻り、ヒロシを見た瞬間・・抑え切れないほどの愛情を感じていた。本当に好きだったから、裏切りもしたけど一度も忘れなかった・・誰かに抱かれようと・・愛するはこの人だと・・。

三日目の朝にヒロシに兆しがあり、握っていた手を握り返してきた。

朱音は泣き叫び、ヒロシの胸にそっと顔を埋めた。

そうとは知らずに恵美は、ヒロシの家の前でずっと張り込みをしていた。

「確か・・朱音ちゃんがヒロシ君を刺し、自分も刺したけど、その事件はきっと起きていない筈だわ。だから・・必ず家に戻ってくる筈・・」

恵美は諦めずに、朝から晩まで張り込みをしていた。

家の張り込みを予想していた朱音は、ヒロシの退院後は自分の実家に連れて帰っていた。

2人を見た朱音の母親は、ヒロシとのチャラけた生活を知っていた。しかも当時・・居場所を隠していたが、、母親だけには居場所を教えていた。

「朱音・・もうこんなこと辞めな。私が今も生きてられるのは、あなたが谷さんと嵐山さんのご両親にお金を無心したお金があったからよ。何も知らない嵐山さんは私の心配までしてくれて・・。周りに迷惑かけるの分からない?」

そうである・・朱音は次元を変えること度に、母親も道連れにして次元を超越させていた。可愛い自分の娘を守るために、最初は必死であったが、いつしか恵美のヒロシを想う決死の覚悟や、朱音がする嫌がらせや、醜い事件に嫌気がさしていた。

朱音は母の話を聞きながら「ちっ!」と舌打ちしながら「母さん・・この人は私の夫よ!だから、ちゃんと面倒見てよね!脅したなんて・・人聞きが悪いわ。あの人が勝手に追いかけてきて、私に意見言うから、この人が私の夫よって言ったら、何でもするから返して!そううるさいからお金貰っただけじゃない!私が悪い訳じゃないわ!しっかりしてよね!母さん!」

恵美は第二の人生でヒロシを追い、大学時代や社会人になってからも、朱音会い彼女の素行に疑問を抱き、ヒロシを現実に戻す様に説得をしていた。

耳を傾けない朱音にあちこちからお金を貰い受け、母親の病気の治療費や生活費にしていた。

しかし・・半分の資金は身を隠すための逃亡費にしていた。


それからひと月後・・

ヒロシは元気を取り戻し会社に復帰した。

朱音もヒロシと共に会社に復帰して、毎日を過ごしていた。

「はー疲れた!朱音!」「なに?ヒロシ君?」

「明日の自治会の公園清掃だけど、何時だっけ?」

「うん!明日ね・・朝9時からよ!」

「そっか。俺なんか疲れたから、先に寝るわ!」

ヒロシはそう言い寝室に行った。

朱音には不満があった。母親の実家に来てからは、全く夜の営みがなかった。母親への気遣いをしているのか?とも思っていたが、それらしき兆候も無かった。

ヒロシはベッドに入り直ぐに寝いいってしまった。

夜中ふと気づくと人肌を感じ目が覚めた。

「うう・・ん?朱音?どうした?早く寝ないと?明日清掃だから・・」ヒロシは眠い目を擦り言った。

「先輩・・今夜は・・久しぶりに私を抱いて・・私さみしい。結婚して4年も経つけど、こんなにしないの初めてだから・・私のxxが欲しいって言ってる・・」

朱音はそう言うとヒロシにディープキスをし、舌を絡めてきた。ヒロシは一度はやめようとしたが、仕方がなく要求にのった。

朱音はパジャマを脱ぎヒロシのズボンを下ろすとxxxをしゃぶってきた。ヒロシも久しぶりの興奮で朱音のブラを外し、パンティも脱がし裸にした。

ヒロシも久しぶりのSEXだったが、中で出さずに朱音のお腹の上にcccを出した。

「なんで・・中に出さないの?いいのに・・」

「だって・・朱音は子供が欲しくないんだろ?一年前くらいからそう思っていたんだ・・だから」

朱音は興奮のあまり自分の失態が恥ずかしかったが、なぜ?ヒロシが避妊のことを知っているのか?不思議だった。

行為の後・・

「先輩・・私は子供欲しいよ・・確かに去年くらいまでは、まだ早いかな?って思っていたけど・・今はすごっく欲しい。あなたとの子供が・・」

ヒロシは天井を見て「そっか・・俺ずっと君との子供が欲しかったから、できないのは俺のせいかと思っていたんだ。だけど・・君自身がそう思ってたんだ」

ヒロシはガッカリして反対を向き寝てしまった。

朱音は口を滑らせたと後悔したが、この次元で子供さえできてしまえば恵美に勝てると確信していた。

一方で恵美は家への張り込みをひと月もしていた。

流石に収穫がない状況に、気が滅入っていた。

「朱音ちゃん・・いったいヒロシ君をどこに隠したのよ?これじゃ時間の無駄使いだわ!」

そんな折に家の前に郵便屋がポストに葉書を入れたが、直ぐに取り出しバイクで走り出そうとした。

恵美は慌てて家の前に飛び出して郵便屋さんに声をかけたのであった。

「すいません・・この家へのハガキですよね?どうして持ち帰るんですか?」

恵美は手がかりを得ようと必死だった。

「ああ・・これ? ポストに入れようとしたけど、転送先が書いてあることに気づいたから・・」

そう言うのであった。恵美は家の知り合いだと嘘をつき、葉書を手に入れたのだった。

その転送先には朱音の実家の住所があった。

(ああ・・そう言うこと?待っていても来ない筈だわ)

恵美はその葉書の住所をたよりに、朱音の実家に向かうのであった。

暫く行くと二階建てのアパートがあり、階段からジャージ姿の2人が降りてきた。

恵美はガックリとした。ヒロシがこのひと月で、朱音にすっかりとマインドコントロールされてしまっているようで、第二の人生の続きを見ているようであった。

「先輩!ゴミ袋と軍手持ちました?」

「ああ、持ったよ。行こう!遅刻だ・・」

そう言い2人は近隣の公園に行き、遅れたお詫びをして部落の清掃に加わった。

「全く・・すっかりご近所付き合いしてる。さすがだわ・・朱音ちゃん。流れを作るの上手い。」

朱音は急に鋭い視線を感じ木陰を見た。

「しまった!」恵美はさっと身を隠したが、朱音に見られてしまった。

休憩時間・・朱音は「先輩、ゴミ袋捨ててくるね。ここでみんなとお茶してて」そう言いゴミ袋を持ち恵美の側に寄ってきた。

「は〜ん・・盗み見ですか?」

「ちょっと人聞きが悪いわ!私はそっと2人を見ていただけよ。覗き見なんてしてないわ!」

「まあ〜いいわ。・・どう?ここで勝てる?この私に?いくら騒ぎ立てようと、ここでは私と先輩は夫婦だし、あなたは他人なんだから・・」

恵美は握り拳を作り朱音を殴ろうかと思ったが、騒ぎ立てても確かに今は不利になるそう感じた。

「分かったわ・・私は帰るわ。でも・・きっとあなたの化けの皮を剥いであげるから!」

そう言い恵美は走って行ってしまった。

朱音は安心して「どう・・これで私の勝ちよ!」

そう息巻いたのだった。

その夜、ヒロシは部落の会合に出かけた。

公民館には15人ほどの近隣住民が集まって、秋祭りの進行や出し物の相談をしていた。

自治会長からヒロシはメインステージでの催し物の手伝いをお願いされた。

ヒロシは「はい分かりました。任せてください」

そう言い承諾したのだった。

家に帰ると朱音は編み物をしていた。

「ただいま!うん?朱音・・編み物か?・・でも小さい手袋だな?」

「うん!将来の私たちの赤ちゃんの為に編んでるの」

ヒロシは少し怪訝そうな表情をしたが、少し笑って「そうか・・そうなるといいよね。俺も願うよ・・」

朱音も微笑みそう願った。

恵美は家に戻り八方塞がりのこの状況を打破する方法を考えていた。

「彼女がヒロシ君に出会うのは中学生で、私とヒロシ君が初めてデートした秋祭り会場ね。・・でもこの時代には何もないか・・。あの2人がバンドを組んで、ヒロシ君が彼女のためと言って曲を作った・・この大学時代もダメね。じゃあ!私がヤキモキした新婚時期は?・・糸口はないか?」

恵美は過去の2人の流れを遡り、解決する糸口を探したが全く思いつかなかった。

そこに恵美の母親が部屋に入ってきて「ちょっと・・いつになったらお見合いするのよ?もう30なんだから、後妻とかしか無くなるわよ!全く!」

嫁に行かない恵美の両親はヤキモキしていた。

「ごめん・・今考え中だから・・きっとするから」そう言い誤魔化した。

「何度も同じこと言わせてないでね!・・全く恵美の心の中に私の話は伝わらないのかしら?針の頭に糸を通すみたいでイライラするわ!・・」

そう言い階段を降りて行った。

「えっ?針に糸・・」「そうよ・・ごく僅かな小さな穴・・そこにきっと答えがあるわ。探さないと」

そう言いながら恵美はもう一度、2人の出会いから今までを知る限り考えた。


それから1週間が過ぎ10月の日曜日に、地域住民の秋祭りが開催された。

商店街では昔と変わらず、露天商も出て賑わった。

ヒロシも準備をして出かけたのであったが、出掛けに朱音の母親からメモを渡された。

「お母さん?何ですか?これ・・」

「シッ!・・朱音に見せないで。自分で見たら燃やしてくださいね。お願い・・」

ヒロシは訳がわからなかったが、メモをポケットに入れ出掛けたのだった。

そこにトイレから出てきた朱音が「あれ!先輩行っちゃったの?ねえ母さん?」

「ああ・・そう言えばさっき行ってくるって聞こえたわよ。もう言ったと思うよ」

そうしらじらしく言ったのであった。

「着替えていかなきゃ!急ごう!」

朱音も部屋で着替えをし、化粧をして出かけたのであった。

ヒロシは会場に着くと、メインステージの音響準備を始めていた。そこに朱音が遅れてやってきた。

「先輩・・行くなら行くって言って下さいよ!私慌てて出てきたから、化粧が上手くいかなかった」

「あーごめんね朱音。朝はステージ準備で力仕事だから、俺だけ先に出たんだ。申し訳ない!」そう笑って答えた。ヒロシは朱音にパイプ椅子に座って見てて欲しいと頼み、朱音もヒロシと数人の男性でステージを作る姿を見守っていた。

10時となり徐々に近隣の住人や町の人達が集まり、いつの間にか活気が出始めていた。

メインステージでは小学生の合唱団によるコーラスから始まり、三味線や和太鼓による大衆向けの演奏もあった。その後はビンゴゲームやクイズコーナーなど、メインステージ周辺は賑わった。

午後も2時になり秋祭り恒例の素人のど自慢が始まった。演歌やニューミュージックなど、歌に自慢がある人達だった。朱音はヒロシにも出場するようにせがみ、4番手で出場するのであった。

ヒロシの番が来て朱音は大盛り上がりだった。

ヒロシはここで何を歌うか?朱音もドキドキだった。

「こんにちわ!谷と申します。僕は少しだけギターが得意なので、これで歌います・・」

朱音は心で(melody歌って!)確信していた。

だが・・ヒロシはEmを基調にした前奏を始めると、ギターを激しく爪弾いた。

朱音は愕然とした。その曲は・・長渕剛の暗闇の言葉だった。朱音が初めてヒロシに出会い好きになったきっかけの歌・・でも恵美に対する憎しみや、ヒロシを苦しませた過去の醜い自分が写る鏡的な歌だった。

その伸びのある声も、優しいビブラートも昔のままのヒロシだった。

「なんでよりによってこの歌なの(怒)!Melodyはどうしたのよ?私の曲はどうしたの!」

朱音は悔しくなりステージから出て行ってしまった。

歌が終わるとヒロシの元に1人の女性が寄ってきた。

「ヒロシ!久しぶり!生きてた?」

そこには中学、高校と同級生の牛山が立っていた。

「えっ!牛山さん?懐かしい・・何年ぶり?」

「10年ぶりよ!全く・・音信不通なんだから。相変わらず歌は上手いね。でもね、聞いてくれる人居ないから・・淋しい?」

「いや!俺・・結婚したんだ。4年前に同じ会社の子と。だからそこに・・?あれ居ない?どこに行ったんだ」

「へーえ?そうなんだ。どんな人?紹介してよ。・・ああーこの子は私の息子で太郎・・」

牛山は5年前に店の常連客と結婚して、今は二代目カレー専門店を夫婦で切り盛りしていた。

「へー太郎君・・可愛いね!うん4歳なの?」

ヒロシは子供好きだったので自然に牛山の子供にも好かれたようだった。

「ねえ!ママ・・恵美おばちゃんはどこ?行こうよ」

太郎はそう言いながら牛山の手を引いた。

「えっ?恵美が来てるの?驚き・・」そうヒロシは驚愕した。

「うん。恵美が久しぶりに秋祭りに行こうって誘われたの。だけど誘った本人は何処に?・・」

「確か・・20歳の時に結婚したんだよね?もう・・子供も大きいかな・・まあ久しぶりに会いたいね!」

ヒロシも懐かしく恵美に会いたいと思ったが。

「ヒロシ・・あんた大丈夫?恵美はまだ独身だよ。何寝ぼけたこと言ってるのよ!」

ヒロシは更に驚愕して確認した。

「恵美が独身・・?あり得ない・・」

牛山は「忘れられないみたいよ。あんたのこと。あんたと別れて、あの子後悔してた。なんで諦めてしまったって・・何度も会う度泣いてた。・・でも今のヒロシを見たら諦め付くわね!結婚したんだし。」

ヒロシは何故か、恵美の顔を思い出して涙が流れた。

「どうしたのよ!泣いたりして・・今が不幸なの?」

「・・違うよ。彼女のこと信じてあげれなかった・・それが無性に悲しい。俺・・最低だな。1人だけ幸せ掴むなんて・・そう思うと悲しい」

牛山はヒロシの肩をポンと叩き「過ぎたことだわ。気にしなくていいと思うわ。大丈夫!恵美だって必ず幸せになるよ!そうに違いないわ」

そう慰めた所に怒りを鎮めた朱音が戻ってきた。

「ああ!朱音!紹介するよ・・この人昔の友人で・・」

朱音は話を遮り、ヒロシの肩にあった牛山の手を避けさせると「触らないで!私の先輩の肩に!」

「おいおい朱音・・失礼だろう!俺の大切な友人だよ。それにその口の利き方どうしたんだ」

ヒロシは久しぶりに朱音に激怒した。

「いいわよ。あんたの奥さんって良く分かったから・・まったく恵美の爪の垢を飲ませたいくらいだわ。失礼しちゃう。さあ!太郎!行きましょう!お邪魔みたい」

そう言いながら牛山は含みを残して立ち去って行った。

「どうしてあんな人と関わるのよ。私だけじゃ不満なの?会いたいなら私に言ってよ・・ね?」

朱音は怒ったヒロシに口を更に滑らせてしまった。

「ごめんなさい・・先輩。誰にでも優しくするから・・心配しちゃって・・本当にごめんなさい」

朱音は謝ったがヒロシは憮然とし、ステージ前のパイプ椅子に座った。

「俺が歌ってる時に・・どこに行ってたんだ?俺の歌が好きだと言ったくせに・・」

「・・曲」「曲って?」

「あの歌は・・嫌いなの・・だから」

「おかしい・・俺が君に一番最初に贈った歌だったはずなのに・・嫌い?おかしいし不思議だ」

朱音は本音を吐露しないはずだったが「嫌な思い出でもあるわ。先輩と恵美さんが仲良しで、私だけ不幸だったから・・」そう言うのだった。

ヒロシは何かを思い出したかのように呟いた。

「あとは・・あなたが考えて・・か」

朱音はヒロシの脳裏に昔の光景がフィードバックされるようで気がかりになり「帰ろう。家に・・」

そう言いヒロシの手を掴みひいた。

その時だった・・突然にヒロシの目がステージ上に釘つけとなった。

そこには細身のジーンズにTシャツ、少しだけ高い踵のヒール靴を履いた恵美が立っていた。それはヒロシが第三の人生で見た恵美だった。

「恵美・・」「恵美さん?」

朱音は恵美を止めようとステージ上がろうとしたが、ヒールを脱ぐとそれを朱音目掛けて投げた。

ヒロシはその光景に驚き心が何かを感じた。それを見たヒロシは朱音の腕を持ち離さなかった。

「止めなきゃ!」「ダメだ。朱音・・ここに俺と座っていよう。俺は見たいから・・」

「ダメダメ、ヒロシ君!見ちゃダメだよ!騙される」

そう息巻きステージに上がろうとしたが、がんとして朱音の腕を離さなかった。

恵美はキーボードの椅子に座り弾き始めた。

歌は歌わず演奏のみだったが、ヒロシと朱音には分かる曲だった。「FirstLove」だった。

第三の人生で恵美がヒロシに聞かせた曲だった。歌を入れても良かったが、今は1993年で宇多田はデビュー前だったため態と演奏だけにした。

ヒロシの目には涙が自然と溜まり溢れそうになっていた。朱音はこの状況を覆すため、ヒロシの手を振り切りステージに上がった。

朱音は恵美をハガイジメにして、隠し持っていたナイフで恵美の首に持って行きヒロシを見た。

「もう!もう!どうして!なんでなの?あなたは恵美さんが憎くないの?私の夫でしょ!この人は他人でしょ!なのにどうして!なんでいつも恵美さんなの?もういいわ!」そう言いナイフを刺そうとした。

周囲の客席にいた人たちは大騒ぎして、ステージ前から去っていった。

「朱音・・もういい加減にして!何度次元を変えても、俺と恵美の絆は消えないから・・良く分からないけど、そう言うことみたいだ。今朝、君のお母さんにメモを貰って意味わからなかったけど、今やっと分かった気がする。・・君を助けて欲しいと。そう書いてあった。俺の予想だけど、牛山を呼んだのは恵美だと思う。全然、恵美の情報がなかったから、牛山さんに託したんだと思う。」

朱音は恵美を睨み「どこまで人を苔にするのよ!私が勝つ次元であんたは何をしてくれたの!もう少しだったのに・・どこまで馬鹿にするのよ!」

そう言い朱音は恵美の喉元をナイフで切ろうとした。

が・・手からナイフが消えて無くなった。

朱音は驚き「何!どうしたのよ!ナイフが無い!」

ヒロシは咄嗟に朱音に抱きつき押さえつけた。

「ヒロシ君っ!女房の私に・・こんな仕打ちないわ」

そう言い抵抗した。

ヒロシはゆっくりと力を抜いて、朱音を落ち着かせた。

恵美は恐怖のあまり声が出なかったが、ヒロシの横に座り泣きながら「ごめんね・・ヒロシ君・・私」

ヒロシは「ううん・・いいさ。俺を最後まで救ってくれるのは恵美だと分かっていたから」

ぐったりとした朱音は下を向いたままだった。

「針の穴だった・・私がこれを思いつくのに」

「どう言うこと?」

「私の格好・・ヒロシ君がバス停で私を覗き込んで・・言葉に詰まるの。その瞬間が小さな穴でありヒントだと分かった。」

ヒロシは首を傾げたが笑っていった。

「覚えてはいないけど・・君のその姿見たら急に胸が苦しくなって涙が溢れたんだ。そう言う作戦?」

「そう・・そう言う作戦」そう言い笑った。

が・・しかし、下を向いていた朱音が急に恵美に飛びかかり首を掴み絞めた。

ヒロシは必死に朱音を恵美の首から外そうとしたが、朱音の執念は力強かった。

その時だった・・

「ウフフ・・風間朱音よ!時間切れじゃ!もう人生ごっこは終わりだ。お前の魂を貰うよ!ハハハ・・」

黒い雲から裂け目が現れ、中から裏の住人が現れ朱音を飲み込んだ。

「うわー嫌だ嫌だ!嫌だよ!・・」朱音は叫んだが黒い雲の中に消えた。

恵美はぜいぜいと息をしながら、その光景をヒロシとじっと眺めていた。

「朱音ちゃん・・朱音ちゃん!朱音ちゃん!」

恵美は叫び呼んだが返答はなかった。


このようにして朱音は裏の住人との約束通りに魂を奪われて消えてしまった。

ヒロシも恵美も恐怖事象を目の当たりにして、心に誓った。廻る人生はあってはならない・・特に身近な人たちを巻き込むのはダメだ・・と。

恵美とヒロシは互いに家に戻り自分の心に念じた。

もう私達も人生は決められた人生を歩こう・・歪んだ次元に生きても、誰かが不幸になるだけ・・。


その時だった。2人の前に裂け目の住人がやってきた。

「2人ともやっと分かったようだな・・歪んだ次元は誰かを憎み苦しませ時には死が迫る。これがお前たちは身をもって味わっただろう。」

ヒロシは住人の話を聞き、忘れていた幾度と繰り返した人生を振り返っていた。

恵美も不幸だが人のせいにした人生を後悔していた。2人ともに元の人生に戻されるのだった・・

2人は裂け目の中に吸い込まれ、急激な速度で過ぎる時間を感じた。

・・廻る人生は終わったのだった。


最終回につづく



遂に最後の瞬間がきて3人はそれぞれの道に戻る。

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