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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シガーデス

作者: 雪野鈴竜

前夢で見た内容を、少し改変して小説にしました。

 親戚に会いに来たその忍びの村は、少し異常だった。私達外の人間からしたら異次元に近かった。普段着は着物、今時電化製品、テレビゲームもスマートフォンも無かった。子供達の遊びはお手玉やけん玉、外との交流は唐傘を作り売る事。そんな村では唯一、村の真ん中にブラウン管テレビだけが一つあるのだ。

「うわぁ、自然がいっぱいな村だな……」

 私は思い切り空気を吸い込む──とても美味しい空気だが、小さな虫達が周りにいるのが気になった。目の中にでも入りはしないだろうか。

「……ん?」

 坂を降りた先の広間で、大人達が男女問わずペアになって、タバコを斜めに切り何やら火を付けて──あれは、シガーキスのような仕草をしていた。あくまで“仕草”であって、付ける寸前でパッと離している。

「他所様、気になるかい?」

「はぁ……わぁ?!」

 ギョッとし隣を見ると、いつの間にやらそこそこ顔の整った忍びの男が立って、私と同じように広間の様子を眺めていた。冒頭でも説明した通り、この忍びの村は少し“異常”だった。まず何が異常かって……私達外の世界では殺しは犯罪だが、この村では“殺しが合法”なのだ。寧ろ、私達外の人間……特にお偉いがたは“消したい人物”を、この村にやってきては大金と引き換えに依頼もする。

──つまりこの村は、外との繋がりのある隔離された裏社会なのだ。外の世界の物、テレビゲームやテレビやスマートフォン等が無いのは、外の知識を子供が持ち、常識を植え付けないためだった。外の世界では殺しは罪、なのにこの村では合法……その事に疑問点を抱かないためだった。

 幼い頃から殺しに慣れておく、道端の虫も暇潰しに殺して楽しむようにと頭に植え付けられているような村だった。……けれど、外の私達からすれば、それを見て“可哀想”と思うかもしれないが、この村では至って“普通の常識”なのだろう。

……話を戻すが、この顔の整った男はよく見ると、殺しの任務を終えたのか返り血だらけだった。けれど私は自分の身が大事なため、その事には深くは聞かなかった。私は、「何故、寸前でみんなやめちゃうんです?」と聞く、すると男はこう答えた。

「決まってるよ、どちらかが“斬首”しなきゃならないんだから。」

「──ぇ?」

 私はもう一度聞き返す、“ぇ?”と……。男は広間の真ん中に、この村唯一存在するテレビに指さした。男は「ほれ、もうじき始まる。」と続けて話した。私は電源がまだ着くいていないブラウン管テレビを見つめていた……数秒後、テレビは起動し、画面が映される。 画面には、大昔の絵巻のような作画の男性と男性が、斜めに切られた木の棒を咥えていた。テレビからはナレーションがこんな説明をする。

『一七九七年、七月九日。この泣苦無(なくな)村では、とある一人の罪人が命乞いをした。そして、条件を出されたのだ。』

……その条件とは、この斜めに切られた木の棒を両者口に加え、ピッタリと、僅かでもズレずに合わせられれば無罪……との難解なものだった。勿論、一度くっ付けて調整なんて行為も禁止。

「──ぃや無理でしょ!?」

「しーしー、ほらっ! 皆見てる!」

 男が口元に人差し指を持っていきそう言ってくると、私は慌てて広間に目をやる。すると、広間にいる者達はなんだなんだとこちらを見てきていた……男は私の肩に手を置き、“場所を変えようと”移動し始める。背を向けた私達に対し、茶化すように男の一人が、「お、“もく”ゥ〜、めんこい子見つけてこれから子作りかいっ」と言ってきた。成程、この顔の整った男“もく”というらしい……。

 後、どうやらこの村では性行為に対しても恥じらいという常識もないみたいだ。先程道端を歩いている時、カップルらしき女が壁に手をついて、獣のように男が背後から女と交わっていたのはそういう訳か、私に気が付いても続けていたのだから、ここは縄文時代かと疑いたくなった。

 “もく”に聞けば、「この村じゃ殺しも合法だからね。人なんて減るのは日常茶飯事だから、子作りして、命を繋げる必要あるからね。」と言っているのだから、乱交が当たり前な縄文時代というのはある意味合っていた。怖い。

「あぁそうだ、ちなみに僕の名前は“目”という漢字を書いて“(もく)”だから!」

 聞いていないけど、わかった。


……茂みの方に移動し、モクが続きを話してくれた。

「さっきのテレビでは、歌が流れてたでしょ。」

「うん。」

 あまり覚えていないが、確かに何か流れていた。モクが言うには、あれはこの村の祭りの歌らしい。

「一つ……この村で起きた話をしよう。」

──とある父親と息子が、あの遊びをして父親が息子によって斬首された。この村では別に珍しい事ではない。だが、息子はなんとも言えない気持ちだった。

 この遊びの大体は寸前まで持っていき引っ込める……だが、本格的に“くっついていれば”、ズレていなければ生き残れる危険性の高い遊びなのだ。ある一家は、他の家庭と違い、両親は“外の常識”を内心リスペクトしていたため、息子にもこの村の常識ではなく、外の常識……命の大切さを教えていた。

 一家はそこそこ幸せに暮らしていた。特に妻は、心から旦那と息子を愛していた……だが、その幸せは長くは続かなかった。

『アナタ!! 何故……何故“鼻歌”なんて歌ったの!?』

 鼻歌そのものが問題ではなかった。問題は鼻歌を歌ったその“内容”だったのだ。

『すまない……すまないッ』

 あの儀式の“歌”だった──なんでも親の真似をする子供は、真似してしまったのだ。つまり、“あの儀式”も興味を持ってしまう。旦那はつい、無意識に鼻歌を歌ってしまったのだ。……結果、息子は両親に、ブラウン管テレビで見たあのシガーキスをしてと頼み。……妻は夫に斬首された。息子はまさか母親が殺されなきゃいけないと分からず悲しんだが、まだ幼かった故に完全には死を理解はしていなかったのだ。

「もしかして……」

「そ、今度は息子が父親を斬首した。」

「ぅゎ、」

「ちなみにそれ僕ね」

 モクはまだ、よくわからないらしい。ただ、父親を自分の手で斬首し、首を抱き締めて初めて、あの日より悲しさが増したのだという。あの日も、父親は母親の首を少し寂しそうに、愛おしそうに抱き締めていた。あの日二人は、この遊びをする寸前、母親はモクを少し寂しそうに微笑んで見たのだという。本当は、もっとモクの成長を見届けたかったのかもしれない。

「そうだ! ……ねぇ君、僕と結婚して、毎日命の営みしない? 家族を作ろう! 命のありがたみを知りたいんだ!」

「結構です。」

 こんな村、絶対住みたくないもん。命がいくつあっても足りないし、体が持たん。

お楽しみ頂けたら幸いです。

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