第2話 こんなので来るのかな。
『まぁ、こんなのフツーのやつはメッセくれないよな』
俺は、期待せずにスマホを閉じる。
先輩が教えてくれたアプリは、真剣な出会いをメインとしつつ、非合法でなければなんでもあり。多様な出会いを提供しているのがウリらしい。
男性が登録したデータをAIがマッチングして相手の女性に送ってくれ、それに女性がOKすれば、男性に通知が来るという仕組みだ。
俺は初めてなのでわからないのだが、こういうアプリでは女性側に何百人もの男性からアプローチがあることが普通らしく、AIが最小人数だけを見繕ってくれるこのアプリは、存外、女性には好評ということだった。
そんなことを考えていると、課長に声をかけられた。
「おい、高咲。この前の案件なんだが……」
俺は席を立った。
会社は繁忙期で、毎日が慌ただしく過ぎていく。
アプリのことなんて、すっかり忘れていた。
仕事が終わって家で缶ビールを飲んでいると、急にアプリのことを思い出した。
『あ、アレどうなってるんだっけ』
俺は、期待せずにアプリを開く。
すると、そこにあったのは「1人の女性があなたに関心を持っています。マッチングしますか?」という通知だった。
早速、相手の女性の登録情報を見てみる。
名前は「まひる」。
俺より一つ下か。出身は東京の◯◯区。
……前に住んでいたところじゃん。埼玉って書いておいてよかったぁ。
なになに。
趣味とかは結構近いかも。
写真はないけれど、SNSがリンクしてるや。
最近の子って、こういうの怖くないのかね?
リンクを覗いてみると、お気に入りのカフェや遊びに行った場所など。
大きなクレープの写真もあった。
いかにも今時の子って感じだ。
なんだか大学みたいな建物も写ってるぞ。
大学生かな?
おいおい、警戒心なさすぎだろう。
何枚かは手とかが写り込んでいた。ネイルもちゃんと入ってるし、太ってもいなそうだ。オシャレっぽかった。
通知の最後には「わたしも色々あって、そういう関係の人を探しています。良ければ、やりとりしませんか?」というメッセージが添えてあった。
俺は半信半疑で返信することにした。
「ぜひ、お願いします。リンク見ました。クレープ美味しそうですね! それと、SNSのリンクはやめた方がいいと思いますよ。個人情報とか危ないっていうか。クレープの写真見たくせにすみません!!」
すると、すぐに返信がくる。
「っw。SNSのこと、教えてくれてありがとうございます。わたしもうなぎさんのプロフィール見ました。映画とかアニメとかわたしも好きです。良ければ、メッセンジャーでやりとりしませんか?」
「ぜひ、お願いします。俺の番号はxxx-xxxx-xxxx。そっちから登録お願いします。あと言いにくいんだけれど、後からも気まずいので確認しとくね。これ、いわゆるセフレの募集です。もちろん、金銭等の授受は一切無し。ご飯行ったりもOKですが、基本、ホテルで会うだけになるかな」
すると、少し間をおいて返信がきた。
「さっそく、登録しました。まひるという名前で通知きたらOKしてください。それと、確認のこと、わかりました。はっきり言ってもらえて、わたしもそっちの方がいいです」
こうして、まひるとのやりとりが始まった。




