福神さん
怖い笑顔やった
今日は祭り。
神社からは少し離れてるとはいえ、お囃子の音が聞こえてくる。
それでも、例年に比べて暇な今日。
──がちゃり
店の裏手のドアが開く。
横目で視たら、なんか上半身半裸の小太りの爺さんが凄っげえ笑顔で居た。
初めて視る人だが、周りは誰も何も言わない。
見えてない………?
…………いや、まあ明らかに店の関係者じゃないよな。爺さんの格好がおかしかったから分かったけど………まぁ、着物でコスプレじゃねーよな。
周りも何も言わないし。
さてさて、お偉いお客さんだ………。
勝手に開けちゃ駄目だぜ?
やっぱり周りは何も反応しない。
もう一度扉を視ると、扉は閉まっていた。
そこから馬鹿みたいに忙しくなった。
やっとエンジンかかったようだ。
あの爺さんは、エエもんみたいやな。
笹は持って無かったけど…………。
でも…………アレな………笑っててんけど、凄い怖かった………禍禍しい嗤い方つうか、アレ…………いや、とりあえず忘れて仕事しよう。
今度は、今日は休みの人が視える。
あんま 周りに聞いても、変な気にしなるやろうし止めとこ………。
虫の知らせとかじゃありませんように。
ご無事で。
──スイッと、消える。
電車に乗ろうとしたら、降りてくるはずの人影が消える。
また、誰かのビジョンが一瞬視えては消える。
お祭りの日は視えるのが多い。
下車。
夜更けの散歩、暗夜行。
(ぎゃはははははは!!)
イヤホンを外す。
静かな夜に戻る。
イヤホンも当てにならない。
でも今晩は平和な空気を感じる。
人もそこそこ通る。
ジョギングしているおじさんもいれば、サイクリングしてる人も。
こんな時間に皆元気だなぁ………視えてる人じゃねえだろうな………区別つかんからな。
と、思いきや前から変な灯りの自転車。
点灯ランプが、ポッと青い狐火。
載ってる人は………居ない。
自転車だけが通過していった。
流石にこれは分かりやすい。
でもな………?
………正直、福の神の笑顔の方が怖かった。
これまた実話。
虫の知らせでは無かったようで、職場の同僚は無事でした。