七話 騒いで笑って深まって
「あっははははははははっ!? フフフフフフ、はははははは! なんでなんで、どうしてあははははははははは!」
どうしても何も、『ラフ・メーカー』の発動に魔力は必要ない。
だからここが魔力がマギナの制御下で使えなかろうと、問題ないのだ。
笑い転け、もはや戦闘不能といったマギナを尻目に、俺とアメッコは拘束が解けたオッカスへと詰め寄っていた。
「さて、四天王参入にマギナさんを推薦し、ここに案内してくれたのはオッカスさんだったな」
「そ、その通りだが」
「嵌めたな? 危うく痛い目に遭い、奴隷にされるところだった。何が貴方の剣と盾だ。舌の根も乾かぬ内に裏切りやがって……!」
俺はマギナが召使いが欲しかったと発言していたのを忘れていない。
オッカスは俺にやられた腹いせも込めて一芝居うって魔女王の庭に誘導したという訳だ。
俺を魔女王へ売る為に……!
「ち、違う! 誤解だ! 私はそんなつもり毛頭ないーー!」
「アメッコ裁判長、判決は?」
「ギルティです」
「わあーー!? ごめんなさいごめんなさい本当に違うんだ許してーー!」
「あははははははははははは! 私も許ひて、ふひゃはははははははははははははは!」
笑いを司る女神様の審判が下った。
十分後。
「ううぅ、オッカスちゃんの意地悪。幸人ちゃんにあんな能力あるなら最初から教えて欲しかったわ」
「だから言ったではないか。やめておけと」
『ラフ・メーカー』から解放され、ヨロヨロになったマギナはオッカスの膝枕され介抱されている。
オッカスについては見逃してやった。
「マギナさん。別に本当に嫌だったら四天王にならなくていいんだからな」
「お優しいのね幸人ちゃん。でもこのアルカナ・マギナ、一端の魔女として一度約束、それも自分から言い出した事は死んでもお守り致しますわ」
「まさに、契約を重んじる魔女の鑑です。何でも協力する仰ってました事を死んでも守ると言うのです」
「な、何でもなんて言ったかしら?」
「言ってたな、そういえば」
「聞きました、しかと」
「マギナ……私も聞いた」
「オッカスちゃんまで〜!」
⭐︎
「え、私でまだ二人目なの?」
「そうです。新・魔王軍二人目です。まずは四天王を構築したいのですが、誰か候補になる方をご存じありませんか?」
アメッコがマギナに現状を説明したところだ。
「前途多難だこと……そうねぇ、四天王となると実力は備えてないとでしょ? そうとなれば……地獄喰いのバブルトラ、なんて面白いんじゃない?」
「あの暴れ竜か? 奴が素直に人の言う事を聴くとは思えんが」
「何だ地獄喰いって? 地獄みたいな食い方するって事?」
「文字通りの意味です。バブルトラは一度死んで地獄に落ちたのですが、血の池地獄を呑み干した事で地獄から追放され、この世に甦ったのです。そこから付いた異名が地獄喰いという訳です」
「そいつはやばいな……」
地獄から甦る。
つまりこの世界には地獄が存在するということか。
もし俺がアメッコに転生させて貰えず地獄に行ってたら同じ地獄だったのだろうか。
その時を考え、ついそんな事を考えてしまう俺。
「ところで何で地獄喰いなんだ? 地獄呑みじゃないか?」
「そこはどっちでもいいです」
確かにどっちでもいいが。
と、俺とアメッコが話していると、オッカスが言う。
「何にせよ、会いに行くなら明日にした方がいい。今日はもう日が暮れる」
「あ、もうそんな時間か」
オッカスに言われハッと気付く。
窓から外を見ると、日がだいぶ落ちてきていて、空が赤く……紫の空と夕焼けが合わさって濃い紫っぽくなっていた。
時間の事を全く考えてなかったが、既にかなり長い時間を過ごした様な気がする。
それだけ転生してから起きた出来事が濃厚過ぎた。
「そうですね。暗くなると魔獣も活発化して余計なリスクが増えます。明日、日が登ってからの方がいいでしょう」
この世界でも夜は危険という認識は一緒らしい。
魔獣やらモンスターは夜行性で夜は力が増すというのは確かによく聞く設定だ。
「ふふ、じゃあそうと決まればーー」
マギナはそう切り出すと、一生分笑ったんじゃないかと思ってたがまだ残ってのかニコニコと笑みで俺に聴いてきた。
「幸人ちゃん、お酒はいける口?」
⭐︎
「えー、では、これからの我々の行く末の勝利と、魔王軍の発展を祈念してーー乾杯っ!」
「「「乾杯ーーっ!」」」
魔王城の広間にて。
マギナの提案で今夜は懇親会を開催する事になったのだ。
「悪いなオッカスさん。こんなご馳走になっちゃって」
「気を使うことはない。魔王城の物資や食糧は前魔王様の遺産だからな。言うなれば今の魔王様の物でもある」
「そうそう。だから遠慮しないでじゃんじゃんやっちゃっていいのよ、アハハ」
そう言ってがばーっとジョッキを開けるマギナ。
俺が言うのも変だが、お前が言うなと言いたいところだ。
「しかし本当に酒は駄目なのか、幸人?」
「駄目っていうか、俺の住んでた国ではお酒は二十歳からって決まってたんだよ」
みんなが酒を飲む中、俺はジュースを貰っていた。
オレンジジュースの見た目なグレープジュースの味がするジュースだ。
「い〜じゃないですか幸人さん。異世界に転生してまで律儀に日本の法律を守らなくたって。誰も咎めやしませんよ」
「女神が言うことかそれが」
アメッコですら酒をガブガブ呑んで、既に酔っている様子。
外見年齢十歳ぐらいだが大丈夫なのだろうか。
「何よその決まりは〜。産まれてから二十年も呑めないなんてあんまりよね〜。ま、私はいま三百歳だから関係ないけど」
「私なんか千歳くらいです、多分」
きゃははははと、何が面白いのか自分の年齢を暴露して大笑いする人外二人。
「ちなみに私は十七だが普通に呑むぞ。幸人も少しやってみたらどうだ? 無理にとは言わないが……」
「そうだな、じゃあせっかくだから少しだけーーえ、オッカスさん、俺と同い年なの?」
完全に歳上だと思っていたのに。
それなら、これからはさん付けはやめるか。
そして数時間後。
「俺はすぐにピンときたんだ! 略しておっぱいだって!」
「あはははははは! よかったじゃないオッカスちゃん! おっぱい無いって嘆いてたけど、ちゃんとあったじゃないの!」
「嘆いてなどいない! マギナがあり過ぎるだけで私にも適度にある! そうだろ幸人!?」
「うぎゃあ!? やめろオッカス! あてるんじゃない! セクハラだぞ!」
「私とオッカスさんの前で裸になった幸人さんがセクハラとか言いますか!」
「あれはアメッコの指示だっただろ!」
「だ〜から違いますって! いや、そうでしたっけ?」
「ちょっと何よ、その聞く前から面白い話!?」
「あはははははは! その話は何度聞いても笑えるぞマギナ!」
ーー結局、この場にシラフの人は居なくなった。
タカが外れまくれ、行くところまで行った馬鹿騒ぎは朝まで続いた。
当然、起きた後にまともに動ける者が居るはずもなく、バブルトラに会いに行く日は変更を余儀なくされたのである。




