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六話 “ラフっと”きますか

「お、お邪魔いたします」


「幸人さん、あんまりビクビクしないで下さい。舐められますよ?」


 魔女王の家ということは、すなわち魔女の家。

 天井とか落ちてこないかおっかなびっくりしながらオッカスとアメッコに続いて入る。

 すると、出迎えてくれたのは、魔女王と聞いて概ね予想していた感じの風貌のブロンズ髪のお姉さんだった。


「いらっしゃ〜いオッカスちゃん、ご無沙汰ね。ドラゴン退治のとき以来かしら、元気してた?」


「息災だ、マギナ。変わらない様子でなによりだ」


 オッカスとマギナは軽くハグし合ってお互いの再会を喜んでいる。

 仲のいいことは良い事だ。


「そう言えば合言葉を変えたばかりで知らせてなかったわ。ごめんなさい。でもよく分かったわね?」


「ああ、それはあちらのーー」


 オッカスが俺の方へ視線向ける。

 マギナもこちらを見るので、俺は軽く会釈をするとーー。


「まあ、まあまあまあ、オッカスちゃん嬉しい! 私が若い男の召使いが欲しいって言ったの覚えていてくれたのね!」


「えぇ!?」


 マギナのまさかの発言にビビる俺。

 俺のことは手土産だと思われているらしい。


「こっちの子も可愛いわね! ねー、お名前何てーの?」


「アメッコ・ニラメッコです」


「アメッコちゃんね! 飴ちゃん食べる?」


「いただきます。ありがとうございます」


「ねぇねぇ、ぎゅうぅってハグしていいかしら?」


「どうぞ」


 そのままなすがまま抱きしめられ、頬擦りされたり、髪をわしゃわしゃされたりするアメッコ。

 ポーカーフェイスだから分かりずらいが、多分、満更でもなさそうだ。


「あー、悪いがマギナ。彼らは違うんだ。この間、手紙を送っただろう。神託があったという女神と魔王のーー」



             ⭐︎



「ふ〜ん、この子たちが(くだん)の女神と魔王ねー。確かに二人とも“(くらい)”を持っているみたいだし……」


 (くらい)……?


「御弓 幸人です。よろしくお願いします」


「女神アメッコ・ニラメッコです」


 謎のワードは一旦スルーするとして。

 オッカスが一通り説明してくれたが、マギナは俺を値踏みするように見つめている。


「私はアルカナ・マギナ。しがない魔女よ。世間じゃ魔女王なんて呼ばれ方をしているけど……ところで、幸人ちゃん」


 ちなみに、俺は森に入る前から悪い予感はしていたのだ。

 そしてそれがもう直ぐ当たる予感がする。


「な、なんでしょうマギナさん」


「ここには私を魔王軍四天王に勧誘する為に来たのでしょう?」


「そうだけど……」


「でも私が首を縦に振る理由は特に無いじゃない?」


「まあ、確かに……」


「だからね……一つ勝負しない?」


 ウインクしながら人差し指をピンと立てて、マギナは言う。


「ま、待てマギナ、変な考えはよすんだーーぐっ!?」


「悪いけどオッカスちゃんはちょーっと大人しくしていてね」


 場が急にやばそうな雰囲気に染まる。

 何やらマギナを止めようとしたオッカスが床を突き破って出てきたデカいに木の根っこに絡まれ拘束された。

 空気が張り詰め重くなる。


「私と幸人ちゃん、一対一で戦うの。幸人ちゃんが勝ったら四天王でも何でも協力してあげる。でも私が勝ったらーーそうね」


「ちょ、あの、別に無理に四天王に入れとは……」


 嫌なら他を探すからここは穏便に済ましたい俺。


「ここまできて釣れないこと言わないの。私が勝ったら奴隷にでもなって貰おうかしら。意味、分かるでしょ? ど・れ・い」


「わ、分かります」


 不思議な色気とプレッシャーに気圧されプルプルと緊張で震えてくる。

 俺が仮に拒否しようと、最後は力ずくでものを言わせにくる、そんな感じだ。


「そうなれば私の言うことには絶対服従。足を舐めろと言われても、首輪を付けろと言われても拒否権はないの。隷従に生涯を使うの」


「ひぇ……」


 まさかの敗北時は奴隷にされるらしい。

 逃げようにも玄関のドアは閉ざされている。

 やはりこういうボスイベント的なのは、大抵逃げられないと相場が決まっているものだ。


「やば過ぎだアメッコ」


「願ってもないチャンスではないですか。ここで勝てば魔女王さんが魔王軍の傘下に入る訳です」


「いや、そうだけどさ……」


 俺には分かる。

 オッカスには実力を見極めて手心を加える様な寛容さがあった。

 でもマギナは相手が格下となれば、執拗に痛ぶってくる様な残虐性がある……と思う。

 俺の前世ので色んなキャラを見たことで得た、人物像鑑定によるとそんな結果だ。

 しかも負けたら奴隷だし。

 最初は召使いと言っていたのに。


「マギナ、悪い事は言わない。やめた方がいい。幸人は私に不意打ちとはいえ一度勝っている男だ」


「あら? オッカスちゃんを倒したの? 『人類の象徴(アーク・シンボル)』でも一筋縄ではいかない程の戦力なのに……見かけに寄らず大したものね」


 しかしそれを踏まえてもマギナの余裕綽々の態度は揺るがない。


「でもね、ここは魔女王の庭……文字通り私の庭よ? 魔法、魔術、魔導……如何なる魔力の力も私の権能の制御下に収まり、自由な使用は許されなくなる」


「さっきオッカスさんは炎の剣を使ってたけど?」


「許可した人はいいのよ」


 話の腰をへし折ったせいか、少しムッとした様子のマギナ。

 まさか今ので怒らせたか?


「兎も角、幸人ちゃん。君に勝ち目は絶無なの。こんな戦いを強いて悪いけど、のこのこ魔女の巣に足を踏み入れた自分を呪いなさい」


 俺が悪いの?


「そんな……あんまりだ。どうしようアメッコ」


「どうしようもこうしようも、幸人さんに出来ることは一つではないですか」


 どうもアメッコはこの状況でも不安を感じていないらしい。

 頼もしい限りだ。

 俺も少し安心した。


「ふふふ、怖がっちゃって、お可愛いことね。まあ、安心して頂戴。今、負けを認めるなら痛い目に遭わずに済ませてあげる。アメッコちゃんも特別に一緒に飼ってあげてもいいわよ」


 圧倒的に自分が優位の立場だと疑わず、にまにまと人を見下している。

 ーーていうか、さっきから俺()のこと舐め腐り過ぎだろ。


「幸人さん。()()()()()()()()()遠慮なく」


「そうだな。()()()()()()()()遠慮なく」


 思いつきだったが、この時からだ。

 『ラフ・メーカー』を使う事をラフっとくと言うようになったのは。

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