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四話 『人類の象徴』

 俺はコソコソと闘技場に着くと、木剣を素振りして俺の到着を待っていたオッカスに有無を言わさず『ラフ・メーカー』を発動した。

 向いあって戦うと思ったなら大間違いだ。


「っ!? ーーあ、ははは……あっはははははははは! ふふふ、あははははは! 待って、何これぅわはははははははははははっ!!」


「イエェスッ! 見事に決まった! どうだアメッコ、これで勝ち確なんだろ!」


「不意打ちは駄目というルールはないのでそうですね。幸人さんの勝利は約束されました」


「ぐっ、ううぅ……ぷ、あははははははははは! あは、あはははは! ふ、ふざけ、ぶぁはははははは!」


 地面にうずくまって大笑いするオッカス。

 木剣を杖に何とか立ちあがろうとしているが、笑いすぎて力が入らないのかすぐにダウンしてしまう。


「ですがまだ終わりではありません。降参するか意識を失ったら負けの取り決めでしたので」


「そう言えばそうだった。じゃあオッカスさん、早く降参するんだ」


「だ、だぁぁれが降参なんてぁぶあははははははははは! はあ、あっはっはっはっはっは! くっはははははははは!」


 一瞬、オッカスは頑張って立ち上がったが、吹き出すのと同時に膝から崩れ落ち、あとは壊れた笑い袋みたいに笑いまくりであった。


「あはははははははははははははは……!」



 十分後。



「私、オッカス・パラライガ・イグソードは、御弓 幸人殿を新しい魔王と認め、新生魔王軍の四天王が一角として尽力することを女神様へ誓います」


()()()()()ですオッカスさん。その誓い、ゆめゆめお忘れなきよう」


「大丈夫? 俺、背後から刺されたりしないかな?」


 半ば死んだ様な目でアメッコに誓いを立てさせられているオッカス。

 だいぶ粘ったが、結局根を上げ白旗を振ったのだ。

 汗や涙や涎で無惨な顔で俺に寄りすがってきた時には、流石に申し訳ない気持ちが溢れてきたというもの。

 酷い目に遭わせた俺を恨んでいるだろう。


「大丈夫です。オッカスさんは一度誓った事を反故にするような人ではありません。反旗を翻すなんて以ての外……ですよね?」


「め……女神様の仰る通りです。どうかお任せ下さい魔王様。私は貴方の剣となり、盾となりましょう。武具が主人を刺すなどあり得ませぬ故」


「お、おう、あんまり無理しなくていいからな? それに魔王様なんて堅苦しいから幸人でいいからな?」


「私のことも女神様でなく、アメッコでいいですよ」


 俺は跪きこうべを垂れるオッカスに寄る。

 別にそんなことしなくてもと思ったのだが……。


「ひっ……」


「え」


 短い悲鳴を上げ、オッカスは距離を取った。

 どうやらとんでもないトラウマを植え付けてしまったらしい……。


             ⭐︎


「我々が魔王軍を名乗る以上、『人類の象徴(アーク・シンボル)』との接触は避けられません。対抗する為にも、四天王の再構築が急務となる訳です」


「何だ、そのアークシンボルってのは?」


 闘技場を後にし、部屋に戻ってきた俺たち。

 これからの方針についてアメッコから話しがあると言われたが、早速知らないワードが出てきた。


「魔王様を、そして魔王軍を打ち滅ぼした勇者たちのことだ、幸人」


「ああ、そういう感じか」


 オッカスの説明で秒速理解した。

 勇者とか英雄は色々呼ばれ方があると思うが、この世界での呼称は『人類の象徴(アーク・シンボル)』という訳だ。


「『人類の象徴(アーク・シンボル)』は複数人存在し、種類があります。例えばですがーー」


 アメッコが教えてくれたのは、

 『騎士の人類の象徴(アーク・シンボル)』。

 『剣聖の人類の象徴(アーク・シンボル)』。

 『聖女の人類の象徴(アーク・シンボル)』。

 『賢者の人類の象徴(アーク・シンボル)』。

 『戦士の人類の象徴(アーク・シンボル)』、といったラインナップ。

 そして取り分けやばいのが、

 『勇者の人類の象徴(アーク・シンボル)』と『英雄の人類の象徴(アーク・シンボル)』の二人らしい。

 他にもいるらしいが、有名どころはこの辺りとのこと。


「敵、多くない? 四天王、四人じゃ全然足りないだろ」


「まあ、四天王が四人までというルールは無いので、良い人材が居れば五人でも六人でも増やしていきましょう」


「それなら、五天王や六天王になるな。もういっそ魔王も一人じゃなくて何人も作ればいいんじゃないか? オッカスさんも魔王をやるつもりだったんだろ? その場合、魔王軍じゃなくて魔王()になるがな、はははははは」



 …………………………。



「どうしたオッカスさん? 今のは笑う所だぜ? 笑えよ」


「ぷっ、あははははははははははは! ごめんなさいごめんなさい! あはははははは!」


 何故か笑わないので『ラフ・メーカー』でオッカスを笑わせる俺。

 手間のかかることだ。


「危うく俺が、スベったみたいになる所だった」


「掛け値なしで、ダダスベりしてましたよ? あと、私には『ラフ・メーカー』は効きませんからね」


「う……やっぱりそうなのか」


 今、アメッコも一緒に笑わせるつもりが、笑ったのはオッカスだけだった。

 流石に笑いを司る女神、本人には通用しないのか。


「さて、話を戻しましょう。もう一度言いますが、目下の目標は魔王軍の基盤となる四天王の構築です。オッカスさんが記念すべき一人目となりますが、あと三人は何とか人材を見つけて勧誘しなければなりません」


「そうは言われてもなぁ。この世界に来て何時間もしない俺に当てなんか無いしなぁ。アメッコは他にコンタクトとってる現地の人はいないのか?」


 ちな、俺の体感時間では火だるまになって死んでから多分、三時間位しか経っていない。

 数時間で人生変わり過ぎだ。


「もう一人いるにはいるのですが、正直当てにはなりませんね」


「そうか……となると、何とか一天王でやるしかないのか……」


 そう言う俺にアメッコが、まだ馬鹿言ってると言うが、俺は実は真面目だったりする。

 と、その時。


「心当たりならある。もしかすれば彼女なら魔王軍に加担してくれるかもしれない」


 『ラフ・メーカー』から解放され、呼吸を調えたオッカスが言った。


「魔女王の庭……そこを根城にする魔女王アルカナ・マギナだ」

 

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