三話 覚醒、『ラフ・メーカー』!
「あっははははははは!」
「いや、マジなんだってオッカスさん! マジでアメッコが俺に乳を出すように指示したんだって!」
「してません! 馬鹿です! 幸人さんは馬鹿過ぎます! どうして人質作戦がそう湾曲して伝わるのですか!」
「直前でおっぱいの話ししたから、つい引っ張られた」
オッカスに先導され、俺たちは魔王城へと到着した。
案内された部屋でこれまでの経緯を説明していたのだが……。
「それにアメッコも、俺が男の乳ってどうなのって聴いたときに否定しないから誤解に拍車がかかることに……!」
「お父さんお母さんの父だと思ったからです!」
「あの状況でそんなこと聴くか!?」
「だから私も急に何言っていると言ったではないですか!?」
「あはははははははは!」
説明の途中、さっきの俺の謎の脱衣は何だったのかという話になった。
どうやらアメッコは、自分が人質の振りをしてオッカスを欺こうと作戦を伝えてきていたらしい。
あの時は余裕がなく通常の思考回路で物を考えられなかったので、変な解釈した俺も悪いっちゃ悪いが、アメッコももう少し補足してくれればよかったのにと思う。
そしてその話を大笑いして聞いているオッカス。
「はははは……あぁおかしい。あんな所でちちくり合っている男女が、まさか神託に聞いた魔王と女神だとは、夢にも思うまい」
「ちちはもういいです!」
「ていうか、そこから見られてたのか……」
聴くところによると、アメッコは以前から魔王軍の生き残りであるオッカスに神託という形で事前情報を渡していたらしい。
内容は詳しく聴かなかったが、おかげで俺の様な一般人が魔王だと紹介されても、そういうことにしておいてくれている。
「さて、改めて名乗らせて頂く。私はオッカス・パラライガ・イグソード。魔王軍を再建は私としても望むところだ。微力ながら助力しよう」
「女神アメッコ・ニラメッコです。そしてこちらがーー」
「御弓 幸人です。よろしくお願い致します」
邂逅した直後に比べて、かなり友好的で一安心する。
「ああ、よろしく頼むーーと、言いたいところだが……幸人、すまないが私をまだ君を魔王とは認めていない。女神のお墨付きといえな」
その瞬間、俺はこの後の展開を察した。
何とか回避出来ないものかと、オッカスの異議にあやをつけてみる。
「アメッコ、オッカスさんが女神様の決定に逆らうみたいですよ」
「まあ当然です。ぽっと出の人間がいきなり新しい魔王だと私が言っても、普通は納得しないでしょう」
「そういう事だ。幸人、君の力を拝見させて貰う。闘技場があるから着いてこい」
「く……マジか」
しかしとんとん拍子に話は進む。
魔王軍四天王との不可避の戦闘イベントの始まりだ。
⭐︎
「さて幸人さん。この戦い、超重要です。ここがターニングポイントと言っても過言ではありません。大怪我してでも絶対に勝って下さい」
「え? そうなの?」
唐突に激重のプレッシャーをかけてくるアメッコ。
「そうです。私たちの目的において、彼女の協力は必要不可欠です。ですが幸人さんが負ければ魔王と認めて貰えず、協力を得る事は出来ないでしょう」
「で、でもオッカスさんも魔王軍を再興したいなら、女神と魔王の存在は必要だろ? なら俺が負けてもそれは変わらないだろ」
「色々事情があって詳しくは一旦あとにしますが、彼女は自ら魔王となって魔王軍を再建するつもりだったのです。その前に私が魔王を誕生させて軍を作るから四天王として協力して欲しいと話したのです」
……今なんか聞き捨てならないことを言われた気がする。
「オッカスさんが魔王やるつもりなら俺はいらないのでは?」
「ですから、色々あるのです。彼女では本当の魔王にはなれません」
よく分からないが難しい事情があるようだ。
正直あんまり知りたくもないところではあるが……。
「兎に角、彼女の性格では自分より弱い相手には絶対に付き従いません。ここで負けたらバットエンドになると認識して下さい」
「そんなゲームみたいな……分かりやすいけど」
とりあえずアメッコが必死に訴えてくる分、何となく事の重大さは飲み込めた。
「でも実際問題、俺が戦ってオッカスさんに勝つなんて可能なのか?」
「普通に戦えば天地がひっくり返っても無理です」
じゃあバットエンド直行だよ。
「お忘れですか。幸人さんには既に私が授けたチート『ラフ・メーカー』があります。それさえ使えば必ず勝てます」
いつの間に……。
「『ラフ・メーカー』って、相手を強制的に笑わせるってやつか。それでどうやって勝つんだ? 笑いながら攻撃されたらそれでお終いだ」
「大丈夫です。『ラフ・メーカー』を受けた相手はそんな余裕はありません。決まりさえすれば勝ち確です」
自信満々にアメッコは言い切った。
微妙に決まった時のイメージが出来ないが、他に手はないし、ここはアメッコを信じるしかない。
「そこまで言うなら信じるけど、肝心の『ラフ・メーカー』はどうやって使うんだ?」
既に俺の中にある様な言い方をしていたが、全然そんな感じはしない。
「幸人さん……本当に、本当に分かりませんか? 今一度、考え馳せて下さい。思い尽くして下さい。貴方の力、その名は『ラフ・メーカー』。相手を強制的に笑わせる能力です」
アメッコが俺の目を見つめ、語りかける。
催眠術でもかけてくるのかと思ったが、その時、不思議な事が起こった。
俺は『ラフ・メーカー』を知っている。
逆に何で今まで忘れていたのだろう。
と、そんな感覚を味わった。
「……大丈夫ですね?」
「だ、大丈夫。凄えな、今使い方を理解出来た」
今の俺なら『ラフ・メーカー』を使いこなせる。
「では……どうか、よろしくお願いします」
「無事を祈っててくれ」
こうして、笑いを司る女神から授かったチート能力『ラフ・メーカー』が覚醒した。
俺の異世界での第二の人生はこの力にかかっていると予感しながら、まずは最初のボスと対峙すべく重い足取りを運ばせる。
しかし、裏腹に『ラフ・メーカー』の試し撃ちを楽しみする自分もいた。
「さあ……笑わせてやる、おっぱいさんよ〜!」




