ヲタッキーズ103 3人はプリキャラ!
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第103話"3人はプリキャラ"。さて、今回はコスプレ革命家集団が秋葉原を襲撃?
次々仲間を失いながらも最後のターゲットに迫る革命軍、追うヲタッキーズは東秋葉原で彼女達の野望と直面…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 強制捜査
神田リバー沿いにある、フェンスで囲まれた古い倉庫。
「ほら、お腹いっぱい食べて。警察のオゴリょ」
忍び寄るSWATを見て飛んで来たドーベルマンに睡眠薬入りの肉を投げ、チェーンで巻かれた鍵を特殊なバールで切断!
「GO!GO!GO!」
待機していた黒いSUVが次々とゲートを突破!急停車スルや短機関銃や拳銃を構えたSWATが次々と飛び出して逝く!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「みんな。コレは今日1日で1番大切なコトょ。他のコトは忘れても、コレだけは覚えておいて。教育とは…カリスマなの」
「カリスマ?」
「YES。悩める学徒をいかに啓発し、独立した自律へと導くか。しかし、高みへ至る道は、私だけが知っている。つまり、自分自身がカリスマであるコトが、何より重要なの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SWATが飛び込むと中は、まるで化学薬品工場だ。熱せられるビーカーや漏斗を突っ込んだ三角フラスコ。ラーメン屋の寸胴みたいな容器がズラリと並び、白衣の男達がウロつくw
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「全員、手を上げて!早くして!」
「おい!手は頭の上だ。早くしろ!お前もだ。跪け!」
ラギィ警部の下、白衣の男達は次々と検挙されて逝くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「己がカリスマだと悟る時、誰もが最初は怖気付く。冷静さを失い、どーして良いのかわからなくなるわ」
「でも、大丈夫。そのサポートのために私達がいる」
「教育においては、カリスマの直感が役立つ時が多々ある。先ず自分の内なる声に耳を傾け、理解するコトから始めて欲しいな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「待って。あの黄色いフリルやリボンのついた服に、染めたてでメッチャ金髪という全力投球で怪しい女は?今まさにSUVに乗って走り去ろうとしてるけど」
「さっき職質しました。特に不審な点ナシです」
「ホント?連れ戻して」
ラギィ警部は、怪しいコスプレ?女を指差す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「良きカリスマには信念がアル。周囲からの信頼も厚く、常に正しさを追求スル姿勢を崩さない。さ、今日はココまでょ。何か質問は?」
質問は皆無。ルイナとスピアは思わズ顔を見合わす。
「何なのアレ?ウルトラ変だったわね。文科省お墨付きの奨学生が12人もいて誰も質問して来ないナンて」
「記憶に残るオリエンテーションだわ」←
「世界に冠たるアキバ工科大学の奨学金リモート説明会ってこんなモンだったのね。決まりきった仕事にも驚きってアルのね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「君、ちょっと待って」
警官の声かけにコスプレ女?は猛然とダッシュし逃げ出すw
「不審人物が逃走!東秋葉原6番通りを東へ!30才前後、黄色いリボンやフリル満載のコスプレ系コスチューム、恐らく染めたてと思われるメッチャ金髪…」
無線の途中で、警官のタックルで女は路面に叩きつけられ、その上にたちまち何人もの制服警官が覆いかぶさって逝くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「逃げるワケです。コスプレ女のSUVからは突撃銃タイプの音波銃。ガムテープとプチプチ…」
「え。プチプチって何?ゲームの新キャラ?」
「違います。ホラ、あのビニール製の気泡緩衝材でプチプチと潰し出すと半日止まらなくなる奴」
あぁアレか。みんな納得←
「あと導爆線。雷管…フリーランスのコスプレ戦闘工兵って奴ですかね」
「しかし、警部。なぜ彼女が怪しいと?」
「何となく勘?…ってかメッチャ怪しいでしょ彼女。腐女子がスーパーヒロインに覚醒した気分を味わう"覚醒剤"の密造所にいて、車には武装誘拐犯の御用達が一式。必ず仲間がいて悪事を働くわ。彼女は氷山の一角」
ラギィ警部と一緒に取調室に入って逝くメイド2人は、ヲタッキーズだ。妖精担当のエアリとロケットガールのマリレ。
「アンタ。戦争でも始めるつもり?ホント迷惑だわ。他所でやってょ」
「全部、御徒町のホームセンターで購入したモノばかりょ。安売りだったけど領収証もアルわ」
「音波銃を12丁も?モデルガンじゃないのょ?」
「全て合法的に入手したモノばかり。許可証を提示しようか?ってかプチプチ買うのに許可が要るの?」
見かけに反してヤタラ落ち着き払った女の受け答え。
「何で"覚醒剤"密造所への寂しい道に入り込んだワケ?」
「不案内だった。首都高への道を尋ねていたトコロょ」
「そ。で、なぜ逃げたのかしら?」
「2022年の最高裁判決に拠ると、警察には逃げる者を止める権限はあるが、ソレだけで逮捕スル事は認めてないわ」
メイド服のエアリが前に出る。
「私達は警察じゃなくてヲタッキーズ。答えなければ面倒にナルだけょ。いくら屁理屈を並べても無駄。なぜアソコに密造所がアルと知ってたの?警官の職務質問には平然と答えておいて、いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ逃げ出したのはナゼ?見られては困るモノがSUVにあったからでしょ?」
「導爆線や手錠がわりのバンドとかね。メイドとSMプレイでも楽しむつもりだった?古来よりメイド服は"従属"のシンボルだモンね」
「何を証拠に」
ラギィ警部が引き取る。
「そーやって強がってても、いずれ過去のドジから必ずボロが出る。証拠はすぐ出るわ。ウソがバレた時、釈放どころかアンタは司法取引のチャンスも消え、そのママ蔵前橋(の重刑務所w)行き。次に娑婆の空気を吸うのは後期高齢者になってからょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ラギィ警部。拘束したコスプレ女、ルカヒ・ルミナは、5ヶ月前に秋葉原D.A.に免許を切り替えてます」
「逮捕歴は?」
「ありません。だから、音波銃や弾薬をシコタマ買えたのです」
ラギィは少し呆れ顔だ。
「でも、逮捕歴がナイだけで15丁の突撃銃って何なの?とりあえず、音波銃の登録確認と仲間を探して」
「わかりました。中には既に押収した音波銃も混ざっているようです」
「密造所の襲撃なら、もっと戦力や仲間が必要なハズ。残りの武器は見つかった?」
別班と行動を共にしたヲタッキーズのエアリが報告。
「ルカヒの家を捜索したけど音波銃は無く、彼女の姿自体、数週間も管理人には目撃されてないみたい」
「でもエアリ、ソコは彼女達のアジトなんでしょ?」
「ううん。アジトは別カモ。きっと他に隠れ家がアルわ」
ソコへ警視庁から情報が入る。
「警部。ルカヒは"ニュー秋葉原フロント"と呼ばれる反政府団体のシンパのようです。去年、NAFは第12次コロナワクチン騒動に紛れて、霞ヶ関の国税庁タワーの爆破を計画、リーダーが逮捕されて組織は離散。今回の襲撃は、再結集のための資金集めの可能性アリとのコト」
「テロリストだったのwじゃルカヒはテロ容疑で逮捕しましょ。仲間に連絡を取られちゃマズいわ」
「え。警部、逮捕は手続き上、問題アリます。未だ推測と状況証拠しかありません」
本部全員がラギィを凝視。しかし、ラギィは引かない。
「必要ナンだから仕方ないわ」
「…ルカヒの車に携帯用のGPSがあったの。GPSの立ち寄り先は秋葉原のレストランやバーだった。仲間は、ルカヒが"逮捕"されたとは知らないから、彼女のコトを探すわ。東秋葉原の執事カフェの前にでもルカヒのSUVを止めておけば、仲間がひっかかるカモ」
「わかった。ソレはヲタッキーズにお願いスルわ。コスプレイヤーの御相手はオハコでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
GPSのデータがルイナのラボに持ち込まれる。
「1番ベーシックなGPSで、時間やルートのデータが無いタイプ。登録された目的地は10カ所。"覚醒剤"の密造所を含めると11カ所。この11地点から何かワカルかしら?…例えば、アジトとか?」
「レイカ司令官、いくら何でもソレ無理。コレじゃ何を推定スルにもデータ不足だわ…とりあえず、フロイドワーシャル法かしら」
「目的地間のあらゆるルートを全て洗い出して比較検討スル総当たり方式ね?少し大技過ぎるカモ」
レイカは"リアルの裂け目"から降臨スル脅威に対抗スル首相官邸直属の防衛組織の司令官だ。
アキバで起こる"裂け目"やスーパーヒロインが絡む案件は、大抵万世橋との合同捜査となる。
「GPSに登録した順番がわかっているのなら、ディリクレ分割の時系列的重なりの分析が使えるカモ」
「え。スピア、スゴいわ。冴えてる!」
「11地点をGPSで探したと言うコトは、その周辺地域も不案内って想像出来る。凍った池に釘を撃ち込むと亀裂が走るけど、撃ち込む釘が増えれば、亀裂も増えてパターンが見えて来るって感じ」
同席のスピアは、ストリート育ちのハッカーで、史上最年少で首相官邸のアドバイザーを務めるルイナの唯一の相棒だ。
「見えて来るのは、どんなパターン?パターンの先には何がアルの?」
「ソレが何かは今はワカラナイ」
「やれやれ。どーやら論文が1つ描けそうな大分析になりそうね。もちろん、スピアにも手伝ってもらうわ。あとレイカ司令官、ラボにホワイトボードを何枚か搬入してもらえるかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷をスチームパンク風に改装したら居心地良くなって、僕を含む常連が長居スルようになって客単価が落ち大失敗w
「え。テリィ様なら、まだ宇宙だけど」
「ミユリ姉様、何か探し物?」
「いいえ片付けてるのw今まで2回延期になったリシィ叔母さんが、やっとアキバに来るの」
僕の推しミユリさんは平時はココでメイド長をやっている。
ルイナがオンライン飲みでアプリを開くと、何と大掃除中←
あ、ソレから僕は第3新東京電力のサラリーマン。会社初の宇宙発電所"TEPCO-3"の所長として単身赴任中なのだ。
「リシィ叔母さんとは、前に会ってから1年経ってるの。来る度に必ずスルのが東秋葉原の和泉パークを歩いて関西風お好み焼きを食べる」
「関西風お好み焼き?」
「そう関西風お好み焼きょ。小さい頃、私が好物のリストに描いたの。そしたら、親戚の間で唯一の共通の好物になった。叔母さんは、私が関西風お好み焼きを好きなの知ってて描いたワケ。あ、失礼。リシィ叔母さんからメールが来たわ。きっと地下鉄新幹線の到着時刻を教えてくれルンだわ」
メールをチェックしたミユリさんの顔色が曇る。
「姉様、どうしたの?」
「また延期になっちゃった。今年は南極の氷が厚いからって…いつもこーなの」
明らかにガッカリ顔のミユリさんはスマホを置く。
「きっと叔母さんも姉様同様に残念がってるわ」
慌てて慰めるルイナ。ため息をつくミユリさん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の路上。エアリとマリレはメイド服でビラ配りw
「犬の話しはしたっけ?」
「ジョギングしてたらついて来て、飼い主から訴えられた話でしょ?管理人に犬を盗んだと思われたのょね。2時間前に聞いたわ」
「そうだっけ」
2人は、ビラを配りながら実は張り込みにウンザリしてる。
「そうそう。音信不通だった御主人様から、この前、コメがついたの。私のTwipperに」
「ソレも聞いたわ」
「そもそも店外交友は禁止だしw」
出るのは溜め息ばかりw
「どうやら、お互いネタが出尽くしたみたいね」
「じゃ今夜、何かある方に賭け…あら。やっとお客さんだわ」
「遅いのょ全く!」
黒いセダンがルカヒのSUVの前に停車。
「あの車が一味の車である方に賭けない?夜中までに当たりが出たら…」
「あんなの一味に決まってるでしょ?賭けは〆切。ソレよりアッチのスポーツカーに倍掛け」
「儲け損ねたわ」
セダンから…やや?またまたリボンやフリルをつけまくったコスプレ女子が2人が出て来てSUVの中を覗き頭をヒネるw
あの2人は…黒と白?2人はプリキャラw
「ルカヒが車の中で酔い潰れてるとでも思ったのかしら?」
「誰も乗ってナイから、何か変だと思ってる」
「あ!」
白と黒のプリキャラ2名がSUVの窓ガラスを叩き割るw
「ウソでしょ!私達の目の前で?車上荒らし?」
「さすが、治安の悪い東秋葉原。通行人は何とも思わないのねw日常茶飯って奴かしら?」
「SUVの中には、プチプチはじめ欲しいモノはあっても、音波銃だけがナイわ。さ、どースルかしら」
何処か愉快そうなエアリ。
「きっとルカヒが買い物の途中で執事カフェに寄り道して御帰宅、ナンバークラスと店外交友を疑ってるって線だと思うわ」
「秋葉原が萌え出した頃じゃあるまいし。そんな都合の良い執事さんナンて絶滅危惧種。いたら、私があやかりたいぐらいょ」
「マリレは、理想が高過ぎるの。アーリア人限定ナンて諦めなさい」
黒いセダンが発車。ヲタッキーズの2人はビラ配りをヤメて空から追う。エアリは飛行呪文。マリレはロケットガール。
2ブロック先の古い雑居ビルの前でセダンは停車。
白黒プリキャラの2人は盗品を持ってビルの中へ。
「こんな目と鼻の先?」
「NAFのアジトがアッサリ割れたわね」
「じゃ潜入方法でも考えましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃…
狭い部屋でテロリスト達は夢を描く。
いつか、このアキバは目を覚ますと。
第2章 革命前夜
向かいの空き家。ライトをかざし、暗い室内を進むエアリとマリレ。軋む階段を登り2Fから向かいの雑居ビルを臨む。
「不動産不況のお陰で空き家とは好都合だわ」
「物価高騰の余波?で、どう?」
「バッチリょ」
張り込み陣地を構築。三脚を立てカメラと集音マイクをセット。PCを開けてネットワークを開く。ヘッドホンからは…
"ねぇタバコ、頂戴"
"あぁ禁煙って辛いわ"
"火を貸して"
1仕事終えた黒プリキャラと白プリキャラが雑居ビルの前に出て来て喫煙を始める。愛の戦士が煙草吸っちゃダメだなw
「ん?今、黒プリキャラが何だって?」
「今夜は1時30分とか言ったわ。録音してある」
「何のコトかしら」
早速、静止画像で黒白プリキャラの顔画像をプリントし万世橋とSATO司令部に転送。喫煙時の会話を録音し分析開始。
"しかし、でも、リカヒは何処に消えたのかしら?"
"今頃、イケメン執事と店外交友でニャンニャンしてるわ。私達みたいなテロリストになりたいとか言ってたクセに。やっぱりヲタクはバカね」
"忘れましょ。どーせ途中戦士は使い捨て。消耗品ょ"
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
オンライン飲み会は継続中w
「氷の下に広がる超古代文明の顧問をやってルンだもの。でも、姉様が怒るなら私も怒ります。その方が後で困らないし」
「ルイナ。私は、怒ってルンじゃないの。ただ…長いコト、親戚に会えない気持ち、貴女わかる?」
「私には、無縁な問題だわ」
力なく笑うミユリさん。
「どーかしら。最近親戚の声を聞いてないから、一族の絆が切れた気がして。自分自身が何かというコトまでボンヤリし始めてるの」
「でも、決して切れてないさ。きっと叔母さんは来てくれる…おっと。井戸端会議のお邪魔だったかな?ミユリさん、次の休暇は、僕と南極のムーに出掛けないか?」
「テリィ様?!」
僕は、ミユリさんの肩に手を置く。
「いつお帰りに?てっきり明日かと…」
「ドッキングしてたSATOの"死海4"で、さっき神田リバーに着水したばかり。ただいま、ミユリさん。ルイナも」
「コーヒーでも?」
ミユリさんは、僕専用のパーコレーターでイソイソ準備。
「あ、お構いなく。この後2,3時間寝たいんだ。ルイナ、既にNAFのアジトの計算に入ってる?」
「YES。分析中ょ。少しパターンが見えて来た」
「衛星軌道の"TEPCO-3"からアキバを見てて思ったンだけど、犯人達は3台の車を使ってるね。囮のSUVとエアリ達が尾行したセダン。後"3人目"が1台乗り回してる。ルイナの分析条件は1台だけで他の2台は入ってないだろ?何をしてるか知らないが3台だと変数が変わルンじゃナイか?」
モニター越しに顔を見合わせるルイナとミユリさんw
「スゴい。数学者みたいね、テリィたん」
「話し方までルイナに似て来ました。テリィ様」
「そ、そーか?エヘヘ」
少し得意げな顔の僕。ミユリさんは、顔をしかめる←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の捜査本部。
「本庁の顔認識データベースで黒プリキャラが95%一致。白プリキャラは93%一致です」
「誰だったの?」
「黒プリキャラは、サギナ・ミズミ。暴行、武器不法所持、脱税で逮捕歴アリ。白プリキャラは、カノホ・ユキシ。暴行、武器不法所持だけです」
いやいや、そうそうたる前科だょw
「2人はプリキャラ、じゃなかった、2人はNAFのメンバーね?」
「YES。アジトの雑居ビルはルカヒの名義。3台の車も彼女が登録しています」
「NAFは、次にどう出るかしら」
万世橋のプロファイラーが前に出る。
「NAFの組織的背景を調べました。一言で言うと、連中は、ヲタク蔑視、一般人至上主義者の集まりです」
「パンピー至上主義が、今回の武装テロと何か関連がアルの?」
「もしかしたらコレはブラックスワンかもしれないわ」
ルイナが、会議アプリでラボから割り込む。
「ヨーロッパでは、長い間、白鳥は白いと信じられてきた。当時は未だ白い白鳥しか見つかっていなかったから。でも、オーストラリアが発見されると、ソコで黒い白鳥が発見され、ヨーロッパの常識は覆された。ナシム・ニコラス・タレブが、予想外の領域で起こる出来事として定義してる」
「あら。別件でつながる強制捜査みたいなモノかしら」
「ソレもアル。私達は過去の経験から因果関係を探ろうとスルけど、壊滅的な結果の大事件って、たいてい経験のナイ事象だから、そもそも予測は不可能なの。9.11の同時多発テロや3.11の東日本震災はその典型ね」
ルイナの説明にうなずくラギィ。
「私達、テロがらみに集中すべきカモ」
「まぁ良かったわ。私達ラッキーね。テロ容疑に向けて集中出来そうょ」
「え。ルイナ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査会議を終え、アプリを切ってからラギィに聞く。
「ラギィ、ルイナのアレ、どういうコト?」
「どーやら違法ギリギリの捜査にSATOは反対らしいの」
「でも、必要な捜査ナンだょね?」
ソレには直接応えズ、僕を見詰めるラギィ。
「私、もうチマチマ調べて捜査が後手に回るコトにはウンザリょ。今回は、手遅れになる前にブラックスワンを食い止めたい」
「そっか。ただ、やり方が変わったなと感じるな」
「テリィたんこそ。美人の心理作戦部長のセラピー、未だ受けてるの?」
僕は苦笑い。
「誰かの言葉だけど…"口先だけに惑わされるな。真実の瞬間を待て"だ」
ラギィは、僕を見詰めたママ、少し唇を噛む。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いてSATO司令部に出掛けると、ルイナがギャレーでコーヒーカップを前にボンヤリしてるw僕に気づき顔を上げる。
「おかえり、テリィたん」
「表情でわかるよ。朝食デートどころじゃ無さそうだ。何か出た?」
「ソレが…グラフエントロピーもユニバーサリティクラスもダメだった。こんな時に捜査と科学の違いを思い知らされるナンて…でも、ココは忍耐だわ…実は、さっきもラギィと衝突しちゃって」
僕は、ルイナの瞳を覗き込む。
「意見して良いなら…」
「お願い」
「ルイナは、存在自体が国家的資産の超天才だからな。引くてアマタだ」
「え。…テリィたん、まさか私に秋葉原を出て行けと言ってるの?そんなの嫌ょ!」
「いや、提案してルンだ。アキバに居続ける意義や気持ちに何か疑問を感じるなら、新たな良い選択肢を探す、つまり別の街に移るって選択肢もアルってコトさ」
ルイナは、黙って僕の瞳を見つめ返す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ルカヒの奴、今頃お楽しみかしら"
"全く、アイツはアタシ達のプリキャラのコスプレに夢中だと思ったのにね"
"せっかく、途中戦士にしてあげたのに"
雑居ビルの外のタバコタイムを画像で確認するエアリ。
マリレは、ブラインドの影から双眼鏡で目視確認中だ。
"今頃は乙女ロードでデート?"
"結局、私達はヲカズにされただけなのょ"
"ところで'ロックンロールショー'は?計画通り?"
リアルタイムで盗聴中のラギィから無線通話。
「エアリ、マリレ、今の"ロックンロールショー"って何かしら?」
「わからないわ…ラギィ、彼女達はルカヒが捕まったとは思ってない。面倒臭いし…踏み込んじゃえば?」
「上手い令状がナイわ。銃の不法所持じゃパンチないし。他の仲間も捕まえたい。計画の全貌もワカラナイし」
ラギィは、捜査本部で溜め息をつく。
「で、ソッチはどーなの?」
「プリキャラは、黒も白も一服する時はビルから1mも離れナイ。一方、買い出しは2人では絶対出掛けない。あのビルに近づくのは忍者部隊"結構"でもなければムリ」
「そうかしら?」
ラギィは、決断スル。
「どーやらブラックスワンの出番ね」
第3章 黒鳥は舞い降りた
真夜中、僕は黒いセダンのオカマを掘るw
「わーどーしょー?メールを打ちながら運転ナンかするンじゃなかった!」
「ちょっとアンちゃん!ウソでしょ?何考えてんの?」
「完全に僕の責任だ!ちゃんと保険には入ってる!」
飛び出して来たプリキャラに平謝り、天を仰いで、自分の過失を嘆く僕は、ナゼか髪に100均ヘアカーラーを巻いてるw
「当たり前ょ!全部、アンちゃんの責任だから!」
「モチロンだ!今、保険の査定員を呼ぶ。だって、全て僕の責任だから!どーしよー?とりあえず、万世橋警察署の警部さんは新橋時代からの親友ナンだ。来てもらおう!」
「げ。アンちゃん"鮫"の知り合いなの?マジかょヤベェ」
僕が、表で思い切りパーティしてる間に、ビルの裏から忍び寄るメイド服は、エアリとマリレ。2Fの窓から中へ侵入w
あ。ラギィは、秋葉原の前は新橋界隈で"新橋鮫"とか呼ばれて恐れられてた…が、その頃のラギィに僕は貸しがアル←
「良く見たらアンちゃんの車の方がヒドい。私達のコトは気にしないでOKだから、もう帰って!」
「そーは行かないょ神田明神に誓って僕の責任ナンだ!」
「わかった。わかったから。でも、ホントに大丈夫。行ってょ。なんなの?この人w」
雑居ビルの2Fに忍び込むヲタッキーズ。部屋の中には配線やスイッチ類が雑然と転がる。素早く盗聴器類を仕掛ける。
コツコツコツ…
誰かが階段を登って来る。音波銃を抜くエアリとマリレ。
足音は階段の途中で止まり、何やら上を伺ってる気配だ。
エアリが拳を振って合図。マリレは息を潜め音波銃を抜く。
コツコツコツ…
階段を降りる足音。2人は2Fの窓から夜空へと撤収スル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。万世橋の捜査本部。
「どんな感じ?」
「あ、警部。NAFの内調の事件記録を徹底的に読み込みましたが、今のトコロ、手がかりは何もありません。ルカヒの方は何か歌いましたか?」
「ソレが…手を焼いてるわw」
ラギィは、部下の前だが、潔くお手上げポーズw
「ヲタッキーズの姉さん達が38時間張ってますが、3人目は姿を見せません。赤外線探知機に影が出てるので、いるのは確かナンですが。一体、中で何をしてるヤラ」
「ヲタッキーズが仕掛けた盗聴器は?」
「どーやら2階は物置き以外に使ってる気配は無さそうです。3人目はガレージでの作業が多いし」
ラギィ警部は、フト考え込む。
「ガムテープとプチプチは何に使うのかしら」
「アジト全体を防音壁で覆っている可能性もあります…ねぇ警部。いったい、いつ踏み込むんです?」
「まだね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
張り込みポイントにスク水のお客さんだ。
「コレが張り込みなのね!」
「スピア?退屈だわー。何か進展は?」
「何も」
スク水ハッカーのスピアは、車椅子の超天才ルイナの唯一の相棒だ。外出が不自由なルイナに代わって現場に良く出没w
「現場なら面白い変数が見つかるって言うのがルイナの口癖。で、ルカヒの行動経路だけど、未だワカラナイ。裏に潜む何かが全然見えて来ないの。エアリ、何読んでるの?」
「エリントンの記事だけど」
「え。swing jazz?」
エアリは雑誌から顔を上げる。
「テリィたんが読めって。スピア、ファンなの?」
「モチロンょ。swing しなきゃ意味ナイわ」
「だょねー」
このタイミングで僕が"御帰宅"。
「おーい"マチガイダ・サンドウィッチズ"のチリドッグを買って来たぞー。ランチにしよう…あれ、スピア来てたの(スピアの分、買ってナイょ半分コか?)」
「テリィたんは、same old jazz が好きなのね?」
「classic と呼んでくれ。あの頃、流行ったTVゲームを思い出すのさ」
どーやら楽しいランチになりそうだ←
「そのTVゲームって"ミサイルコマンド"?」
「そうだょスピアも好きなのか?大学生協にマシンがあったんだ。スペースインベーダーとかも。大学2年の時にハマった。コインランドリーに逝く小銭まで無くした。お陰で第305面までは、目を瞑ってでも出来るようになった。ボーナスシティが余って困ったモンさ。わっはっは」←
「ソレだわ!」
突然、立ち上がるスピア。
「"ミサイルコマンド"?」
「何ゴトにもトロいテリィたんが、ゲーセンでエースになれたのは、暗記出来るホド遊んだからょ!その時、テリィたんは廃人の1歩手前だったに違いナイ(だから何だ?)!私達、ルカヒが知らない道を探るより、知ってる道を分析スルべきだったんだわ!そうすれば…」
自分のPCを持ち、ガバッと立ち上がるスピア。
「ルイナとアルゴリズムを修正スル!」
「スピア、帰りは裏口から出て行ってくれ(やったチリドッグ1本丸々食べられるw)」
「ROG、テリィたん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部に顔を出す。
「ミユリさんがラギィに挨拶して来いって」
「おはよーテリィたん」
「未だルイナは独自のパターンを捜索中?」
ラギィとは、彼女が新橋署勤務だった頃からのつきあい。
僕の勤務先、第3新東京電力の本社が新橋にアルからねw
「ルカヒと密造所の因果関係を探ってルンだ」
「…その方向で良いと思う?」
「うーん偶然にしては不自然だょね。簡単過ぎる。既に2人の有能な捜査官が、その違和感に気づいてる。密造所でルカヒに出くわした事実が何より重要カモしれない」
ラギィは話に乗って来る。
「ブラックスワンかしら」
「ブラックスワンは、偶然の一致と同義じゃない。正確には、大いなる因果関係の中の予期せぬ出来事で、壊滅的な結果を伴う。こうは考えられないか?ルカヒにとってブラックスワンは僕達だと」
「私達の強制捜査の方が偶然だと言うの?」
「だから、大いなる因果関係の中の出来事って意味」
ラギィはフト遠い目になる。理解出来てない証拠だw
「ところで、あのプリキャラは喫煙が必ず外ね」
「3人目が生徒会長タイプで、いつも家の中をヤニ臭くするなと怒ってるとか?」
「ううん。爆発の危険性を避けるためょ!」
突然ラギィはヒラメく!さすが"新橋鮫"w
「腐女子がスーパーヒロインに覚醒した気分になれる"覚醒剤"の密造所には、いくらでも爆発物質がアルわ」
「メタンフェタミンの原材料は爆発物だモンな。そっか。ルカヒは、爆弾の原材料を仕入れるタメに密造所に通ってたンだ。密造所の画像、出ますか?…ほら、アセトンに硫黄、過酸化物。確かに"覚醒剤"の精製にも必要だけど、燃焼性の高い爆弾の原材料になるモノばかりだ」
「こんなモノを人目を引かズに大量購入するのは不可能ょ。ソレでルカヒは闇ルートとして密造所からの仕入れを考えた。彼女が捕まってから、黒白プリキャラが、交代で薬局や食料雑貨店へ何度もパシリしてる!」
あらゆる謎がスッと溶けて逝く"真実の瞬間"だ!
「NAFは、以前に霞ヶ関の国税庁タワーの爆破を計画してたわ。ビルが崩壊スルほどの大型爆弾か…」
「大量の小型爆弾の線もヨロピンク」
「SWATと爆弾処理班に出動命令!SATOにも対スーパーヒロイン装備で来てもらって!周辺には避難指示!」
ラギィ以下全員が捜査本部を飛び出す。
「スゴい展開だ…で、僕は逝かなくて良いの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズの張り込みポイント。
"突撃銃タイプの音波銃と拳銃。私はショットガンとロケットランチャーを置いて逝くわ。あと集束手榴弾も"
"手錠は?"
"人質の拘束用ょ。ソッチが持って行って!"
向かいの雑居ビルに向けた集音マイクからトンでもナイ会話が飛び込んで来る。
カメラやマイクにリンクしたPCにデータを溜めながらマリレから重大報告←
「…了解。エアリ、どーやらアジトは爆弾製造所らしいわょ。ラギィがSWATと急行中」
「え。覚醒剤の精製工場じゃなかったの?火気厳禁の標識が出てナイけど」
「マズい。プリキャラさん達、お出掛けだわ!時間を稼がなくちゃ!」
2Fの窓から飛び出すメイド服のヲタッキーズ。
エアリは飛行呪文、マリレはロケットガールw
「何?空飛ぶメイド?」
「ヲタッキーズょ!黒白プリキャラ、2人共動くな!手を挙げて!」
「やっちまえ!」
白プリキャラが手にした長い布を捨てると中は突撃銃w
空に向け乱射、ヲタッキーズを地上に引き摺り下ろす←
「サギナ!ココは私が引き受ける!行って!」
「ごめん、カノホ。天国で逢いましょう!」
「あ、待て!」
突撃銃を腰ダメで乱射しながら、にじり寄る白プリキャラ。
ヲタッキーズが身を隠す廃車を蜂の巣にスルが射殺されるw
「こちらエコーベース!アジト前で音波銃による銃撃戦。犯人1名を射殺。もう1人はブルーのピックアップトラックで逃走。車両番号は…」
白いコスプレを鮮血で染めた死体を確認中のマリレが叫ぶ!
「エアリ、危ない!」
黒のハイレグカットにシルクハットの手品師系戦士が飛び出して来てショットガンを発射。素早くビルの中に引っ込むw
「どうする?エアリ」
「恐らくビルの中には爆弾ね」
「だから、聞いてるのょ!」
大きく溜め息をつくエアリ。
「やっちゃおうか」
「ヤッパそーゆーと思った」
「神田明神の御加護あれ!」
銃口がラッパ型に開いた音波銃を構えて2人は飛び込む!
「出て来て!もうゲームセットょ!」
「逃げ道は無いわ。貴女は、もうお終い!」
「non!non!non!」
目の前にハイレグカットにシルクハットの生徒会長が現れ、ヤタラ日本語風発音で投降拒否、さらにショットガン発砲!
「ソコは爆弾の製造所でしょ?途中戦士が全部吐いたわ」
「歯科衛生士…じゃなかった、死か栄光か!」
「ふせて!」
人生最後のギャグを飛ばし逃げ込んだガレージごと吹っ飛ぶ生徒会長プリキャラ。激しい爆風に身を隠すヲタッキーズ。
「最後まで、わかってなかったのね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
3分後、現場にSWATを率いるラギィ警部が到着。
「3ブロック先に逃走車が乗り捨てられてた。サギナは、恐らく違う車に乗り換えて逃走中」
「下り坂のロックスターがグルービーをまく時に使う手ね。ガレージには切断したパイプがゴロゴロ転がってる」
「え。パイプ爆弾だったの?レトロだわー。中性子爆弾か、せめて放射性物質拡散爆弾かと…コレでNAFは壊滅的な打撃を被ったわね」
マリレの楽観を砕くラギィ。
「逆ょ。コロナ前から地下に潜り準備してた計画が、崩壊寸前まで追い詰められた。白プリキャラだけじゃなく、途中戦士まで殺されたと思ってる。黒プリキャラは、ホンキで反撃して来るわ」
第4章 自爆へのカウントダウン
万世橋の取調室。
「さぁ何もかも吐いてもらうわょ。覚悟して」
「弁護士に連絡させてょ」
「カノホ・ユキシは死んだ。生徒会長も粉々に吹っ飛んだ。パイプ爆弾の材料は、全て押収した。もうNAFはお終いょ」
しかし、途中戦士はシタタカだ。
「お終いなら、わざわざ私を呼び出さないわ」
「立場がわかってナイのね。今なら、未だテロの共謀罪で上手くいけば、OK?あくまで上手くいけばの話ょ?一生を心安らかに蔵前橋(の重刑務所w)で暮らせるカモしれない。でも、もしサギナ・ミズミが爆弾を爆発させたら即、死刑だから」
「大義の為なら仕方がナイわ」
鼻で笑うラギィw
「大義?脱税が貴女の大義なの?」
「ヲタクには、偽善的な一般人に抵抗し、反撃を加える義務がアル。アンタ達ケーサツは、私の自由を奪い、不当な司法取引を持ちかける…そんなアンタ達と取引スルとして、信用出来る証拠は?」
思いがけない最後の一言。驚くラギィ。
「OK。貴女は、政治的な主張をしたいのね?」
「思想を伝えたい。公判で話を聞いてもらいたいの」
「だったら、サギナを止めなきゃ。爆弾が爆発すれば、貴女の主張は、罪もなく死んでいった者達や残された家族の声にかき消される。誰にも何も伝わらない」
途中戦士ルカヒ・ルミナは、首を横に振る。
「革命に犠牲は出ない。夜間、警備員や清掃員を建物の外に追い出した後で…」
「サギナ・ミズミは、その作戦から逸脱スル気ょ」
「ソレは、パンピーのせいょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボでは、ルイナの分析が大詰めを迎える。
「スピア、半径の経時変化は?時間が限られてるから、周辺は無視すべきカモね」
「ちょっと待って、ルイナ」
「あ、テリィたん。ムーンライトセレナーダーも。何か新しい情報とか?」
ミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーは、メイド服に下はバニーガールという作者の妄想満載のコスプレだw
「どーやらターゲットはオフィスビル。ソレも清掃員や警備員のいるビルみたい」
「おっとソレは分析済みょエッヘン」
「見晴らしがきくのは、東秋葉原のダウンタウンかな」
僕の合理的推論は超天才に否定されるw
「テリィたん、その発想は飛躍し過ぎだわ。さっきまではサエてたのに、やっぱり姉様が変身スルと鼻の下が伸びてダメになるのね」
そ、そーかな?
「NAFのリーダーは、国税庁を狙って投獄されたンだっけ?やっぱり中央官庁狙いなのかな」
「そーだったわ。スピア、じゃコレを入力してみて」
「OK」
相棒から渡されたデータを入れるスク水ハッカー。
「モニターを見て。赤い線がGPSナシでルカヒが走ってたルート。コレに"シドレ"の衛星画像を重ね合わせて」
"シドレ"はアキバ上空3万6000kmの軌道を回るSATOの量子コンピューター衛星だ。この"シドレ"が"リアルの裂け目"を発見スルと、直ちにSATO全ステーションに急報。
「このうち、マネーロンダリングに関係しそうな建物はアル?NAFの計画は、国税庁へのSARに対する報復だと思うの」
「SAR?何ソレ。美味しいの?」
「"疑惑行為報告書"のコトょ。秋葉原に"リアルの裂け目"が開いて以来、異なる次元を経由したマネーロンダリングが頻繁に行われるようになった。SARは、金融機関で資金洗浄があった場合の届出のコトで、問題のSARは、バナナ中央銀行の東秋葉原支店から発行された」
スク水ハッカーが、衛星画像の一角を点滅させる。
「バナナ中央銀行の東秋葉原支店ってココだけど?」
「ブラックマネーの巣窟、東秋葉原のど真ん中じゃナイの」
「NAFの次のターゲットはソコょ!全力出撃!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
バナナ中央銀行の東秋葉原支店。
知る人ぞ知るマネーロンダリングのメッカに、見るからに怪しい黒フリルに黒リボンの黒プリキャラが入って来る。
何も知らない客達は窓口で談笑し、ガードマンはホールに目を光らせてるが、ナゼか黒プリキャラを気に留めないw
駆けつけたラギィ警部が叫ぶ!
「あの黒いプリキャラよっ!抑えて!Movin'!」
すると、黒プリキャラのサギナは、肩のメッセンジャーバッグからパイプ爆弾を1本取り出しホール中央で高く掲げる。
「動くな!私達は"ニュー秋葉原フロント"よっ!我々は、ヲタク経済の中心部を占拠した!警察は直ちに退去せよっ!」
悲鳴が上がり、客達はパニックになって一斉避難を開始!
「爆弾だ!爆発するぞ」
「大変だ。逃げろ!」
「神田明神も照覧あれ!」
ホール中央で爆弾を掲げる黒プリキャラを中心に、蜘蛛の子を散らすような大混乱の波が去ると彼女は包囲されているw
わかった落ち着け。兄
ふざけるな。クリグリー
2階バルコニーに白人黒人捜査官。拳銃を抜いている。
「サギナ・ミズミ!先ずは、話し合いょ!」
「お断り!爆弾は7本アルの。ボタン1つで全員が木っ端微塵のズタズタょ!警官は全員、外に出て!」
「わ、わかったわ。万世橋警察署は下がるわね」
え。気がつくと僕とムーンライトセレナーダーだけだw
「どーゆーつもりだ!僕達と死にたいのか?」
「違うわ!テリィたんは?」
「僕は、君を助けたい。どーして欲しい?」
握りしめたパイプ爆弾を高く掲げたままサギナは慟哭。
「ココから出てと言ったハズょ!その後で…自爆スル!」
「あのさ。僕達が去った瞬間に、スナイパーが君の頭をブチ抜く。君は、爆弾を爆発させられない。ホントだ。僕達がいるから君は狙撃されないだけナンだ」
「ナンでソンなコトを教えてくれるの?」
え。ナンでダロー?笑
「無意味だからさ。黒プリキャラが爆死しても、明日にはココはキレイに掃除され、まるで何事もなかったかのように、営業再開スルだけだ。まるで、最終回の翌週から、新しいプリキャラシリーズが始まるみたいに」
「そ、そーなの?」
「君の流した血は拭き取られるだけだ。今まで、たくさん見て来た。僕は(コスプ)レイヤーには無駄に命を落として欲しくないンだ」
黒プリキャラことサギナ・ミズミは、突然ガクガクと震え出す。ボタン付きのパイプ爆弾を握り締めたまま唇が震える。
何か言葉にしようとスルが声にならない。
「そっか。わかった。じゃ僕達は引き上げる。ミユリさん、逝こう。Ciao」
ムーンライトセレナーダーは、必殺技"雷キネシス"のポーズをキメたママうなずくと、僕の盾になりながら後ずさる。
すると…
「待て。待って!テリィたん!」
パイプ爆弾をフロアに置き、ひざまずくw
「そのママ、両手を頭にのせて!動くな!」
両手を頭の後ろに組んで投降した黒プリキャラに、警官隊が殺到し手錠。爆弾を押収。何だょ誰も避難してなかったの?
「いやぁ予想もしない展開だったわ、テリィたん」←
「でも、素敵な交渉テクでした。もぅテリィ様にはホレボレです」←←
「あぁでも逝わないと、またミユリさんが黒焦げにしちゃうからさ。彼女のコト」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"では、常連達やみんなが、大笑いをしながらカウンター席に並んでいる。
「知らない方が幸せな武勇伝ってあるモンだな。テリィたんがソンなカードでポーカーするなんて。ソレ、警察の仕事だょね?」
「いいえ。SATOとの合同捜査だもの。でも、大丈夫。もうテリィたんは現場に出さないから」
「でも、今回はムーンライトセレナーダーは"雷キネシス"を出さなかったンだね?何話か、テリィたんの浮気相手を黒焦げにして終わる話が続いたけど…」
大爆笑。カウンターの中で真っ赤になるメイド長。
「テリィ様、どんな感じですか?」
「ミユリさん!待ってくれあと少しだ!」
「え。テリィたんがキッチン?まさかダッジオーブン?」
1部の常連がドン引き←
「ソレって悪いコトなの?」
「え。いや、あの。うーん微妙かな…」
「今宵のメニューは?」
僕がダッジオーブンを手にキッチンから出たのは、このタイミングだ。山盛りの関西風お好み焼きを大皿に盛って登場w
ドヨメキが起こる←
「和泉パークに出る屋台の秘密のレシピを僕なりに分析した結果さ。似せるのに苦労した。まぁルイナ的には近似値ってコトで勘弁な。ね?味もなかなかだろ?」
「え。お好み焼き?夕食でしょ?」
「しかも、関西風の夕食って…何か意味がアルの?」
カウンターの中で目を潤ませてるミユリさんが説明スル。
「ダッジオーブンを一緒に食べたい相手が、テリィ様の家族ってコトかしら。なんて優しいお好み焼き。テリィ様、大好き」
カウンターの中から手が伸びて、僕を引き寄せたミユリさんとカウンターを挟んでキスをする。マズ!髭を剃ってなひw
いつも"TEPCO-3"滞在中は髭は剃らないンだ←
「お好み焼き、大好き!ヲタクソース、じゃなかった、ヲタフクソースをかけると、さらに美味しいわ!」
「あれ?カリカリベーコンやチキンが入ってる!こりゃウマい!おかわり!」
「ピザやナンに代わる、秋葉原の国民食だ!」
常連達が笑いながら、お好み焼きを取り分ける。僕とミユリさんはカウンターの上で手をつなぎ、もう1度キスをスル。
みんなが談笑スル中を、山盛りのお好み焼きを盛った大皿がみんなの周りを何度も何度もグルグル回る。誰かがボヤく。
「マジでお好み焼きだけ?ホントにコレだけなのか?」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"自爆テロ"をテーマに、黒プリキャラ、白プリキャラ、途中戦士、生徒会長タイプの戦士、彼女達を追う超天才やスク水ハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。
さらに、ヒロインの寂しさを紛らす主人公などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、歴史的円安でインバウンドが急速に戻りつつある秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。