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第19話 ネーデルラントとの対立

 一方、南洋會社は|ネーデルラント東インド会社《VOC》と対立を深めるようになっていた。

 貿易競争相手という事もあるが、何よりも問題であったのが、私掠船の存在である。

 私掠船とは、実質的な海賊と同義である。

 ただ、普通の海賊と違っていたのが、政府の許可が下りていたという、あまり違わないようで天と地の差異があった。

 私掠船とは、国家などの統治権力から委任状によって認可を受け、敵と認定された国の船を拿捕する権利が与えられた民間の船のことである。

 海軍の常備というのは莫大な費用がかかる上に、戦争時以外何の役にも立たない金食い虫であるため、そこで、足りない海軍力を補うために民間の船乗りに海賊行為の認可を与えたのが始まりである。

 要するに軍事行動の民間委託という形になる。

 しかし私掠船では敵国の軍艦を倒せることは期待されていなかったわけだが、真の狙いは敵国の通商破壊にあった。

 いくら私掠船と言えども、武装のない、若しくは良くて軽武装の貿易船程度なら拿捕するのは朝飯前であった。

 私掠船は普段は商人や冒険家としての顔を持ちながら、敵国の商船を発見したら略奪を行う二足の草鞋(わらじ)を履く船だったのだ。

 私掠船の収益は国王が20%、海軍が10%、出資者、船長、乗組員が残りの70%を山分けしたと言われている。

 相手国と戦争になると貿易が中断されてしまうため、商船や海運業者の仕事がなくなって生活が苦しくなるから仕方なく私掠船員として働いて生計を立てていたという側面もある。

 

 南洋會社としてもこのまま一方的にやられ続けるのは不服として積極的に造船事業に邁進。

 重巡洋船の開発に着手した。

 だが、その性能はあまりにも攻撃にウェイトを寄せていた。

 通常、砲列船とは、その名称から勘違いされやすいが、武装が強化されたというのは間違いで、重巡洋船と比較して()()()()()()()という認識が正しい。

 積載量が増え、結果として重武装化が進んだだけであり、よくある勘違いとは因果が逆転している。

 時として砲列船は海上戦闘だけでなく、輸送船舶としても重宝されていた。

 つまり砲列船は大砲を搭載することで重武装化、逆に撤去することで輸送船として運用することが可能で、用途に合わせた使用がしやすい柔軟性に優れた船舶であった。

 対して南洋會社が造船したものはと言えば、はっきり言って別物である。

 一応本人たちは砲列船を模倣して作ったようなので、正確に言えば()()()になるかもしれないがそれはさておき、完成した船舶の特徴は以下の通りである。

 まず何と言ってもその特徴は砲門の数だ。

 初期型『陸奥型』こそ60門程度であったが、その砲門数は一気に増大し、3層構造120門艦なんてものもザラに登場するようになった。

 その砲門数を維持するために砲甲板と呼ばれた、艦砲が並べられているフロアを階層構造にしていた(階層構造を持たない戦列艦は巡防艦(フリゲート)と呼ばれた)。

 その戦闘力は他を凌駕するほど一方的であり、この船が1隻参加しただけで海戦は勝ちが確定したと言われるほど、開戦のパワーバランスを激変させた。

 この艦種は後に『戦列艦』と呼ばれた。

 戦列艦に対抗するには戦列艦をぶつける他に対策はなく、戦列艦の数イコール海軍の力が成立するようになった。

 ただ、戦列艦は平時は輸送船舶として利用できた砲列船と比較して、こちらは戦闘一筋なため非常にコストパフォーマンスが悪かった。

 維持費や水兵の給料なども含めると1隻だけでもかなりのランニングコストとなり、常に戦列艦は南洋會社の資金繰りの悩みの種となっていたようで、首脳部は何度も紛糾している。

 その上、戦列艦の登場以降、敵と味方の戦列艦の数が分かっている以上、海戦は戦う以前にその勝負が見えていることが多かった。

 劣性側は戦闘を回避する場合が多く、戦闘特化艦という真価が期待された以上に活躍しなかったのである。

 敵艦船に逃げられないための速力確保であったが、重武装が足を引っ張り、期待以上の速度は出なかった。

 戦略的には制海権を奪取していたためその存在意義はあったものの、当時それを理解できたものはほとんどおらず、「いくら戦列艦が理論上強くとも、速力で負けていればそれは机上の空論でしかない」という意見が多数派を占めていた。

 このような南洋會社の金食い虫を幕府は逆に購入することがあった。

 その性能が認められると、幕府も本格的に導入を開始する。


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