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死神の後継者  作者: むえ
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零極の観測地③

長めの話です。

「ダンジョンボスって何がでてくるんだ?」

「特に決まりはないです。ただこのダンジョンに出てくる魔物の変異種ではありません。」


ダンジョンボスとはそのダンジョンにて最も強く階層ボスの倍の強さはあるらしい。どんな魔物かは入るまで不明で、基本的にはそのダンジョンの環境に適したものが出るらしい。つまりこのダンジョンの場合は氷属性の魔物が出る確率が高い。


「何か対策できることはあるのか?」

「ありませんね。入ってみるしかありません。入ると出られなくなりますが、事前にできることはありませんから。」


俺はライラの意見でまよわずに扉を開けた。扉を開けると中は雪が薄くつもった雪原になっていた。扉は閉まると見えなくなり戻れなくなったことを確認した。そして雪原は扉があった位置よりも後ろに行けるようになっていた。つまり広さに限度がないということだろう。上には太陽のようなものがあるが動いていないので偽物だろう。


「綺麗な雪原だな。ここで戦うのか。」

「トウカ様、出て来ますよ。」


俺が景色を堪能しているとライラに現実に引き戻された。あたりを見渡してみると、ある一点に光が集まり魔物の身体を構成していた。できた魔物はふたつの大きな翼を持ち、大きな水色の身体の表面は鱗で守られており、太い二本の足で支えていた。俺が知る限りどう見てもドラゴンだった。


「ギャアアアア!」

「アイスドラゴン!?伝説上の魔物じゃないですか!どうしてこんなところに!」

「落ち着けライラ。おまえの知識が頼りなんだからしっかりしてくれよ。」

「ドラゴン自体が伝説上の魔物ですよ?戦ったことあるわけないじゃないですか!」


どうやら自分たちで攻略法を見つけるしかないようだ。


「あの大きさでは魔物の魔石を狙うのは得策ではありません。魔石の位置も分かりませんし、左右から攻撃を仕掛けてみましょう。攻撃を当てて弱点を探しましょう。」

「了解した。」


俺は右、ライラは左に展開して攻撃を始めた。左右に展開し終えるとドラゴンは俺を追いかけ、結局ドラゴンの前後に分かれてしまった。ドラゴンはでかい身体のわりに動きが早かった。


「トウカ様、こうなっては仕方がありません。私は飛んで上から攻撃してみます。トウカ様は魔法が刺さりそうなところを攻撃してみてください。」


ライラの指示通り鱗のないところを何度かアイスランスで攻撃してみたが、全て腕の鱗と爪で防がれてしまった。これでは攻撃のしようがない。そう思っているとライラが風魔法で上空から攻撃し、注意を引きつけてくれた。


「よし今だ!『アイスランス』!」


攻撃がドラゴンに刺さるとドラゴンは翼を羽ばたかせ、積もっていた雪が煙のように宙を舞った。俺の目にはドラゴンの曖昧なシルエットしかわからなくなってしまった。舞った雪がおさまり始め、周りをみるとドラゴンは腕を持ち上げライラを攻撃しようとしていた。どうやら雪が舞った時に下におりてきたようだ。しかしライラはまだ気づいていないようだった。


「ライラ!前だ!」


大きな声で名前を呼ぶとようやく攻撃に気づいた。だが遅かった。ライラはドラゴンの爪で背中を切られ、ぐったりと倒れてしまった。


「大丈夫か!返事をしてくれ!」


離れたところからライラに声をかけても返事がなく微動だにしない。死んでしまったのだろうか。俺はこの状況に怒りの感情を抑えられなかった。


「てめえよくもライラを!『アイスランス』!」


感情がたかぶっているせいか威力が増していて、アイスランスはドラゴンに深く刺さった。その攻撃に怒ったのか、ドラゴンは空を飛び勢いよく突進して来た。


「避けられない!」


俺は回避行動を取ったがドラゴンの爪が肩に直撃し右腕を持っていかれた。


「クソッ!よくもやったなぁ!」


俺は出血量がひどく、意識が朦朧としてきた。怒りのせいで何も考えずに無策で魔法を使わずドラゴンに向かって突っ込んだ。

そんな時、また時間が止まった。


『ダメじゃないか。そんなのではすぐに死んでしまうよ?』

「なんの声だ!?おまえは誰だ!」

『そう焦らないで。君は武器もなくどうやってあいつに勝とうと言うんだい?今のままでは無駄死にだよ。』


そんなことは分かっていた。でも今の俺にできることはなかった。身体全身の痛みや出血によるだるさが集中の邪魔をした。集中力を必要とする魔法をこのままで打つのは難しい。それでも俺はドラゴンを一発殴ってやりたかった。


『私からヒントをあげようか。君は何度もその力を使っているだろう?そして君は今もその力を使っている。どんな時も冷静に考えるんだ。氷とは全てを凍らせられるものだろう?』


『どんな時も冷静に』、この言葉が一番心に刺さった。この謎の声は俺に冷静さを取り戻させた。


「俺の持ってる力。氷魔法は全てを凍らせられる。そういうことか!この時間が止まっているのは氷魔法の力か!でも俺は無意識に使っているだけで自分では使えない。つまり次の攻撃でしとめないと。」


俺はとにかく考えた。時間が止まっているおかげで傷の痛みは感じなかった。そして今までこの状況になった時、攻撃を当てると時間は元に戻った。つまり一撃でドラゴンを仕留める方法を考えなければならない。


(普通なら弱点は脳と心臓か?だが細かい位置はわからないか。正面から魔法で脳を貫けるか?ドラゴンの体は硬いからな。でも方法はこれしかないか。)


俺はなるべく大きく鋭いアイスランスを生成し始めた。


「もっと大きく、鋭く。もっともっと。」


俺は魔力をできる限り注ぎ込んだ。魔力量が少なくなり意識が飛びそうだった。


「これで最後だ!『アイスランス』!」


俺は深く刺さるようにドリルのように回転をかけ魔法を放った。魔法の先端がドラゴンに触れると止まっていた時間はもとに戻った。


「ギャアアアア!」

「いけえええぇぇぇぇぇ!!!」


そして俺の魔法はドラゴンの頭を貫通した。魔法を当てられ暴れ回っていたドラゴンの動きは止まり地面に落ちて動かなくなった。


『そう!それでいいんだよ。じゃあ私は先でまっているよ。』

「一体なんだったんだ?そういえばどこかで聞いたような声だったな。」


その後ドラゴンは光の粒子になって消えた。その粒子は空から降り注ぐ雪のように降っていた。とても心地よかった。


「終わった。これで外に出られる。ライラを連れて行ってやらないとな。」


俺はライラに近寄ろうとしたところで意識が途絶えた。




「トウカ様!目が覚めたんですね!よかったぁ。」

「あれ?ライラ、俺たちは死んだのか?」


俺が目が覚めるとライラが膝枕をして待っていた。だがライラはドラゴンにやられて死んだはずだ。ということは俺は死んだのだろう。


「たぶんですが生きてますよ。心臓も動いているし、向こうに転移魔法陣が出ています。トウカ様が倒したんですよね。さすがです!」


たしかに魔法陣が見える。俺がドラゴンを倒したからだろう。だが俺もライラも何一つ傷がみあたらなかった。なくなった右腕も元に戻っていた。だがそんなことよりも、


「ライラが…生きてる。よかった…。」

「うわっ!?もう、びっくりするじゃないですか。私も嬉しいですよ。一緒にここを出られるのですから。」


俺は嬉しくて涙が出てしまっていた。そしてライラが生きているのが嬉しくて、勢いよく抱きついてしまった。


「もう絶対に危険な目には合わせない。強くなって守れるようにするよ。」

「プロポーズみたいになってますよ。でも私もトウカ様を守れるように頑張りますよ。」


俺たちは魔法陣に向けて歩き始めた。


「さあ行こうか。外の世界へ。」

「お供しますよ。いつまでも、どこまでも。」


俺たちは魔法陣に乗り光に包まれ、ボス部屋を後にした。

機器トラブルにより先週は投稿できませんでした。すみません。

重ね重ね申し訳ないのですが1月末まで不定期投稿になります。

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