岐路での別れ 【月夜譚No.199】
コミュニケーションの取り方は、人によって様々だ。言語は勿論、ジェスチャーやボディタッチ、手話なんかもある。
何をどの時に使うか、その場合で使い分けることもある。
だが、いかに言葉を尽くしても、身体で表現しても、伝わらないものはある。
俺はいつも思うのだ。自分の頭の中にあるものを、感情を、そっくりそのまま取り出して他者に見せたり感じさせたりできたら良いのに、と。
背を向け去っていく相棒の姿を見ていることしかできなくて、俺は強く拳を握った。血が滲むのではないかと思うほど力を入れているのに、どうしてか痛みは感じない。
この気持ちを、悔しさを寸分違わず彼に見せることができたなら、きっとこんな結果にはならなかった。自分にできることはやったのだ。それでも駄目だったのだから、そう思わないと遣る瀬無い。
吹いた風が俺の前髪を揺らして何処かへ行ってしまう。
虚しさと切なさが身体を締めつけるようで、俺はその場に立ったまま暫く動けなかった。