壱万円札 こんにちは 臨場編
紙幣番号Y193616B、クロというあだ名がつけられた1万円札がいる。クロの持ち主は139番目、まだ新人だ。
現在の持ち主は29歳の女の尻ばっかり追っているだらしない男、秀人。
「よしゃ~明日は莉子とデートだあ、なんの服で行こうかな~」
「よっしゃ~やっとこの家から出られる~ ゲホッ ゲホッ」
と喜んでいる。秀人の財布はルイ・べトンの高級財布で居心地がよいがなにしろ部屋が汚く空気がほんっとうに臭いのだ。
「ああ、きっと相手が莉子さんだからたくさん奢ってあげるだろうな、この馬鹿は ゲホッ ゲホッ」
このおじさんは先輩1000円札の治郎さん。この業界では上下関係は金額ではなく製造年で決まるのだがクロはこの関係性に納得していない。ただ治郎さんはクロにとって特別だった。
「ん?あ~どこだ?はっ!ここはお店の中」
「お、起きたか 見ろこの服の多さ全部奢る気だろう馬鹿が」
「え~この服良いな~欲しいな~」
「ふっ買ってやるよ」
「お会計52349円です。ポイントカードはお持ちですか?」
「えっと~現金で」
「あ、あ~じゃあまた治郎さ~ん」
クロは大号泣した。
「おら、このお札濡れてる。」
「またな」
クロは治郎と別れレジの中へ入っていった。
「治郎さーーーーん」
「とりあえず空気はおいしいや え?え~」
と落ち着いていたらクロはお財布の中に入っていった。その財布の持ち主は秀人だった。
「1万円と245円のお返しです。」
「ごめんね~二度手間になって」
「お、お前だったのか」
「治郎さーーん」
「ただ今日中にはお別れだろうな」
「絶対にまた会いましょうね」
そして1時間後飲食店で2札は別れた。
続く




