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マイナス方向のシャトルラン  作者: 村山優佑
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帰路

 ある夜。バイトの帰路のことである。突然背後から誰かが声をかけてきた。肩にドスンと、勢いよく手を乗せて叩いてくる。妙に馴れ馴れしいな、こいつ。そう思って、わざと嫌そうな顔をして振り向いてみる。小学校時代の友達の藤岡だった。数年ぶりの再会。というのも俺は中学受験をし、私立の中学に入学した。エスカレーター式で高校に入れるというのだから、英語が嫌いな自分としては好都合だった。当時は中学受験は4教科だったからである。然し乍らその所為で、地元で公立の学校に通う岐阜の友達とは疎遠になってしまった。

 そうしたことをフラッシュバックしている内に、自分が未だに嫌そうな顔をしている事に気がついて、慌てて笑顔を作る。

 「すまんすまん、唐突に誰かと思ったからさ。」

 そう言うと彼は笑って

 「いいのいいの。ビビるのも不思議じゃないよね。なんせこんな時間帯だし。不審者かもしれないとでも思ったんでしょ?僕も部活の打ち上げの帰りなんだ。」

 いや、ホントは単に疲れてた上に肩を思い切り叩かれて嫌になってるだけなんだが。まぁそこはその方が都合がいいだろう。そうして話を合わせることにした。まぁどうせぼっちで帰っていたんだ。帰路が同じ、なんなら互いのマンションは徒歩5分程度。そこまで仲が良いわけではなかったが、一緒に帰ろうと思う。

 「それより聞いた?先週の夏帆さんの一件。」

 ……そりゃ当たり前だ。知ってるに決まってんだろ。俺と夏帆を何年の付き合いだと思ってやがる、こいつ。

 「知らないわけないさ。しっかし……ほんとに理由が分からない。なんで飛び降りなんてさ。」

 「さぁな。真相はキリストのみぞ知る…って感じね。」

 「え?そこは神じゃないのか?」

 いやまぁ、神=キリストとなるのも分からんではないが、一つ言いたいのはこいつの家は熱心な仏教徒であるということ。そこは仏とかブッダとかじゃないのかと小一時間問い詰めたいくらいだ。

 「僕の学校でも聞いたけどさ、教育委員会も動かんらしいよ。」

 「そりゃそうだ。遺体が見つからない以上まだ自殺と断定できん。」

 「え、それじゃ裕翔よ、なんで警察は自殺って公表してくるの?」

 やっぱり馴れ馴れしいなこいつ。名前呼び捨てかよ。

 「神隠し、なんて言おうもんならアイツの親が納得しないだろ。自殺にしとくんだよ。事実アイツのブレスレットは慰留品として残ってたみたいだし。そこにも血痕がついてるから。」

 ……自分で言っていておかしいことに気づいた。なぜ警察は自殺と断定した?ひょっとして、「警察にとって夏帆の自殺が体裁的に不味いものであり、教育委員会にも口封じさせた上で自殺にでっち上げた……とか。いやでもそれなら誘拐とか神隠しにした方が教育委員会も絡んでこないし……」

 と、厨二病を高校まで拗らせてしまった俺は、そんな陰謀論じみたことを考えていた。7月16日の夜10時を越えるあたり。自宅までの帰路での話であった。

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